今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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カクカクカクのPEN-FT(B)の巻

2022年11月16日 16時37分48秒 | ブログ

広島のご常連さんからFT3台が来ていましたがブラック1台にして頂きました。この個体#2541XX(1968年11月製)はシャッターの調子は悪くはないと思いますが・・

 

巻き上げの感触が「カクカクカク」という感じで最悪です。

 

 

また、電池をセットしても露出計が動きません。25万台なら動くと思うけどなぁ・・

 

 

25万台で露出計が動かないのはこんな原因だよなぁ、と予想はしていましたが、それにしても大量の電池液漏れを起こしています。裏蓋まで染みているのは見たことが無いかも?

 

裏蓋を開けてみると・・内部にも影響がありますね。塗装面にも染みているので塗料が侵されていて洗浄で剥がれる可能性もあります。

 

圧板のメッキも侵されています。

 

 

電池室から基板に来ているリード線も腐食をして断線しています。電池液はリード線の芯線を登って来るのです。これは全てやり直さなければなりません。

 

このような酷い電池液漏れの場合は、ガスが露出計のCds、基板、メーターを侵していることがあって不動になることが多いです。簡易的に導通テストをしてみると・・特性感度は別にして取りあえず動きます。まぁ、一安心と。予想以上の電池液漏れによるダメージを受けた個体ですが、これから修復して行きます。通常のオーバーホールは他と一緒ですから割愛します。

電池室のターミナルに新しいリード線を半田付けして取り付けます。

 

 

この個体には絶縁座(パッキン)が入っていませんでした。露出計が動かないので電池室を分解してみたものの・・パッキンを入れずに戻したのでしょう。初期型の場合は材質が紙に近いため、電池の液漏れにさらさられると崩れて無くなってしまうことはありますが、25万台ですから材質は樹脂になっているはずですから紛失でしょう。パッキンを入れずに組むとショートをしてしまうので、ストックから取り付けます。

完成したシャッターユニットを取付け、ロア・スプロケットギヤで巻上げ側と連結します。

 

巻き上げは快調となりました。

 

 

25万台付近まではボトムキャップがダイカスト本体に接着されていますが、この接着が剥離している個体が意外にあります。今回はダイカストの洗浄中に外れましたので再接着をしておきます。以後は金属のキャップではなく、樹脂の〇型抜きに変更されますが、それに伴ってダイカストの型も変更されています。

25万台ではハーフミラーはこの程度が普通の劣化具合です。新品と交換します。

 

 

磨き出した圧板を裏蓋に戻します。

 

 

と、ここでまた問題。露出計の調整をしていると赤マークが出て来ません。メーターを分解してみると、セルの赤マークの接着が外れていました。もちろん再接着です。

 

メカの組立終了。

 

 

最近、自分のお受けする作業は性能維持のオーバーホールなのかレストアなのか分からない時があります。今回の個体のように、電池の液漏れで放置をされていた個体を再び現役に戻そうとすると、いろいろなところに不具合が出て来るものです。お返しした後でも例のリターンミラーの剥がれなど、問題が発生するかもしれません。あとは付属のレンズの清掃をしますけど割愛します。

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1 コメント

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Unknown (ただのメガネ)
2022-11-19 10:41:30
オーバーホールなのかレストアなのか…確かに部品と技術をお持ちだからこそ出来る、修理屋さんの範囲を超えているようなことも多いですね。
自分はネットオークションで入手した物や古道具屋でホコリまみれになっていた物の整備でお世話になりましたが、「使いたい」という思いに答えてくださり、製造から何十年も経った物を安心して使える状態に仕上げてくださるのは本当に有難いことだと思っています。
凹みやシリアルナンバーの刻印の色抜けまで黙ってきちんと直してくださったり、こんな修理屋さんはそうそうないと思います。
それがご親族が使われていた物だったりしたら、「思い」は強いでしょうから、それに答えるということは大変なことだと思います。
頼まれていないけど儲けにはならないけど気に入らないところは直すという姿勢は、自分のお師匠さん(バイク屋の店長)と同じ姿勢を感じています。
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