コンパクト系の収集では定評のある大阪のご常連さんがやっと手に入れたPEN-W #112892です。塗装の劣化もほどほどで基本的には良い個体のようですが・・
良く、PEN-Wの選び方を尋ねられますが、シャッターリングと距離リングを見てください。このメッキは非常にチープなメッキで恐らくクロームの直メッキです。黒アルマイトの距離リング共々、人間の指の塩分で腐食をし易いので、この部分が痛んでいる個体は保存状態も悪い(レンズも良くない)ということです。この個体はアメリカからイーベイで入手のようですが、m表示ですので国内から流失した個体かもしれません。
裏蓋の巻き戻しボタン部分が異常に塗装が劣化をしていてタッチアップをされているようです。
過去の修理歴が記入されていますが、この部分には工場での製造データが記入されているところです。その大切なデータを消してまで自分の自己満足的な記入をする気持ちが理解できません。再び自分のところに修理で戻ってくることなど殆どない(経験上)のです。
過去の分解で駒数カニ目ネジが傷ついているので交換して欲しいとのご希望。また、駒数盤の「0」が赤化で指示針の先端部も塗装をされています。
巻上げダイヤルカバーも痛んでいて角の磨滅とネジ孔折れがあります。
ダイカスト本体も洗浄してスプロケット軸とスプール軸を取り付けます。
この個体は分解歴がありましたが、意外にもシャッターは未分解でした。では何をしたの? 駒数針の改造をしただけ? どちらにしても、未分解のシャッターがほぼ正常に動いていたのは驚異的です。
シャッターリング(カム板)を取り付けますが、良く見ると彫刻線の先端に赤の色入れがされていますね。オリジナルでは無いはず。
問題のシュー下ですが、消される前は赤鉛筆でこのように記載されていたはずです。戸籍ですから復元しておきます。
⇧の方で巻き戻しダイヤル下のネジが2本共取り付けられていませんでしたね。事情が分かりました。このカメラは慢性的に本体とトップカバーのネジ孔位置が合わず、側面のネジ孔部に調整用のワッシャーが接着されているのですが↗ 多くの個体でワッシャーが脱落しています。(この個体も)すると、巻き戻し側のネジ孔が合わなくなるのですが、前回の作業者はネジを無理にねじ込もうとしてネジ孔を壊していたのです。
こちら側のネジ山を壊しています。で、面倒なのでネジを捨てちゃったということ。作業者はアメリカ人なのかなぁ? タップで修正します。
駒数カニ目ネジは当方の新品と交換して欲しいとのご希望でしたので交換しますが、すると、駒数針が気になります。
尖がりの長さも異なりますので、別に作った▲部分を半田付けしたようです。無駄な努力のような・・ご希望はありませんがオーナーさんのお気持ちを察して交換することにします。
このように巻き戻し側のネジも留まっていて、駒数針と駒数ネジも交換してあります。これでオリジナルに戻りました。
これで作業完了と思いましたら忘れていました。前面の彫刻色入れが銀色になっています。ローライ35なら銀色ですが、PEN-Wは白です。よって白に入れ替えご希望でした。しかし、PEN-Wの塗膜は劣化していて、通常は使えるシンナーで塗装が溶けてしまうので作業は非常に困難です。前回のPEN-Wでも苦労したよね。
何とか入れ替えて完成です。アメリカに在ったせいかレンズの状態は良い方でした。1964年12月製。
トミーのリペイント (tomys800.sakura.ne.jp)