今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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なんでPEN-Fばかり?

2010年12月03日 19時16分44秒 | ブログ

Dscf143655 申し合わせたようにPEN-F修理のご依頼が数台入って来ましたので、私のグレーFは後回しにしますよ。しかし、FTはどこへ行ったやら? 入って来たPEN-Fを検証するとFTより古いせいもありますけど重症なものが多いですね。また、どの個体も初期型で過去に修理歴があり、入手して間もないのも共通点です。現在、市場に流通しているFの現状でしょうか? この個体#1739XXは最初期ではないので多少はマシですが、女性のオーナーさん曰く「ちゃんとした(有名な)中古屋さんからネット購入した」とのこと。と言うことは委託品ではないわけですよね。フィルム2本目の撮影中故障をして完全にフリーズで来ましたが、底蓋を開けて緊急脱出を試みるも反応なし。ピンセット先のレリーズスライダーが変ですね。故意に曲げられています。上は製作中のグレーFですが、これが正解。(中期からはFTと同じような部品に変更されます)内部を分解してみると・・シャッターユニットのテンションシャフト付近の組み方が間違っておりタイミングが合いません。その帳尻合わせで故意に曲げたのでしょうか? 難しいことを考える人の思考は分かりません。私はオリジナル通りに忠実に組むだけです。では、進捗により、このページを加筆して行きますので続けてご覧ください。ブログの書き方に慣れないんですよねぇ・・

Dscf145164 すべて分解してみると・・シボ革を強力な接着剤で貼ってありますが、これが厚すぎますね。すでに工場での接着分だけシボ革は厚くなっていますので、極力薄く貼るように心がけなければなりません。これは剥離が大変だぞ。それは良いとして、何か白いものが付着いていますね。これは一部の分解マニアさんたちが使用している潤滑剤だそうです。お使いになるのはご自由ですが、治りませんよ。これを洗浄するのが意外に大変で中々落ちてくれません。

Dscf1453351 気を取り直してスプロケット、スプール軸から組立てて行きます。駒数板を組んで作動を確認すると40付近で引っかかる。点検すると、下ギヤのギヤ歯の1枚が損傷しています。画像の↑部分が分かりますね。これは稀にある不具合です。今回は修正をして様子を見ますが、このギヤの材質は真鍮でも硬い材料で、簡単には曲がりません。組立て後、運針に問題があればギヤを交換することになります。たぶん使用中にも不具合が有ったはずですが、フィルム2本目では気が付かなかったのでしょう。

Dscf145537 いろいろ見ていくと、ちょっと騙されちゃいましたね。要するにこの個体は寄せ集めで組まれているのです。元はアマチュアさんの遊んだ個体で、それを中古屋さんの修理屋さんで寄せ集めて仕上げたものでしょう。裏蓋なども25万台頃のものに交換されているようです。で、故障の根本的な原因は、ピンセット先のスローガバナーの取り付けダボ。これのカシメが不良で抜けてくるため、左に見えるハンマーが回転した時、ガバナーレバーを乗り越えてしまうもの。ダボはそもそもカシメしろが殆どなく、不良品だよなぁ。本来は地板交換ですが、そうも出来ないので修正して再使用します。しかし、PEN-F初期はカシメ不良が多い。

Dscf1464931 リターンミラーユニットですが、ピンセット先のバネが変でしょ。これは、二重巻上げをしてねじ切ってしまったバネを先端を曲げて再使用しているのです。本当はダメなんだけどなぁ。この時点では気が付かなかったのですが、そもそも、このユニットはこの個体のものではなくてもう少し後のユニットなのです。↓の部分にくぼみがありますね。これは、テンションシャフト(上の方を見よ)が変更された後に対応するユニットです。

Dscf1466831 Bがこの個体。最初にテンションシャフトが曲げられていましたね。あれは、規格の合わないミラーユニットを使ったためにテンションシャフトが長すぎたため曲げたものです。Aは変更前のユニットで組まれた個体。Cは変更後のユニットで組まれた個体。今回組んでいる個体はACのユニットで組まれたもの。しかし、PEN-Fは本当にいろいろな事情を抱えて生き延びて来たのですね。正直なところ、推理ゲームをやっているようでは、通常のO/H費用では合わないですよね。

Dscf146238 スローガバナーの取り付けダボを修正してユニットを組立ててあります。ブレーキのOリングは交換してあります。

Dscf1469451 またまた騙されちゃいました。完成してシャッターのテストをしているとミラーユニットのトルクが出ない。点検すると・・Aは純正のバネ。Bがセットされていたバネ。外径も異なりますし、バネが硬すぎでねじりバネとしての柔軟性が足りません。このバネは特殊材質で複製は困難です。道理で分離に苦労したわけです。「似たようなバネで代用出来るのでは?」とお思いかも知れませんが、このカメラはバネが命なんです。これは純正品と交換しませんと性能が確保できません。女性オーナーさんからはご心配のメールが入っていますが、この個体のように自然故障機ではなく、いろいろ手が入ってしまった個体の修復は想像以上に労力を必要とします。

Dscf147199 と言うことで、レンズの清掃を終えて何とか完成しています。外観はそこそこきれいに見えますのでオークションやネット販売では本当の状態を知るのは全く無理なお話です。今回のように、ユニットに不具合を抱えていたり、規格の合わない部品に交換されていたりでは入手してから苦労することになります。結局、スローガバナーも交換されていたんだろうなぁと思います。購入に当っては実物を良く見てと言いたいところですが、私が見ても、今回のようなことは見抜けるはずがありません。要は運ということになりますかね。とにかく、PEN-Fには問題を抱えている個体が多いですから充分ご注意になってください。


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