またまた「遅れて来たPENマニア」さんから。豪華にPEN-Wが2台ですよ。うらやましいですね。奥の1台は平均的な劣化ぐあいの個体で、特に問題はありません。ややこしいのは手前の個体。オーナーさんはリペイント物とおっしゃる。手前味噌ながら、多くの個体を見た経験とリペイントの経験から、私が見れば真贋はすぐに分かると思っていたのですよ。しかし、悩ましい個体です。一見、標準的な個体に比較して塗膜がきれいで厚みがある。妙に光沢があるが、研磨剤で磨いものか、それともシリコンでも塗ってあるようなツルツルした肌です。
ファインダーブロックは完全に補修(リペイントとは言わない)塗装をしてありますね。塗装の手は入っているということです。
塗膜が何となく厚い感じで、観察すると、巻き戻しダイヤルネジ部に引っかき傷の上から塗装を重ねたように見える部分があります。それも三層になっています。工場ではこれはないのでは?・・
駒数ガラスは一度分離をして再接着をされているように見えます。しかし、単純にガラスのみ交換するケースもある。接着剤の状態から、再接着としても、かなり古い作業である。
吊環の留めナットも緩み止めの接着をしてありますが(オリジナル仕様) 観察すると、ナットの表面に汚れがある。一度分離して再接着をしたものか? しかし、ナットにはスパナで回した傷がない。う~ん、ミステリーだ。
右下付近に繊維くずが内包されています。私の基準では塗り直しの対象ですが、じつはオリンパスの良品基準は意外にラフで、この程度の塗装ホコリ、ブツは良品として出荷されているものがあります。裏蓋の底部のリベットも分解された形跡はない。しかし、背(シボ革部)との接合部分に、マスキング痕と思われる筋と塗装の吹き汚れがある・・シンナーには侵されないので、リペイントとしても焼付がウレタンですが、私にも判断が出来ない。どちらかというとオリジナルではないかとの気持ちが強いです。さて、どうしたものか・・
一晩考えましたが、多少の疑問点はあるが、リペイント経験の私が見て、完全に破たんしたところはないとのことから、オリジナル塗装と判定します。確かに、塗膜の荒れがない、ぽってりとした塗装の個体も存在するのは過去に確認しています。で、取りあえず疑問のない後ろの個体からオーバーホールをして行きます。2台なので簡単にUPしますね。ストロボのターミナル接片の半田付けはカバーを分離した時に剥離する場合が多いです。
殆どの個体は、このような塗膜の劣化が認められます。以前の所有者は「天野」さんらしい。テープを剥離してほしいとのご希望ですが、これは透明(保護)テープは剥がされており、接着糊と印刷が残っているだけでした。当時の場合は、鉄筆で名前を彫るか、せめてダイモでしょう。
すべて洗浄の上組み立てています。やっと作動状態であったシャッターは快調。接片の半田付けもやり直しておきました。
先にレンズを分離して清掃をしておいたファインダーブロックをトップカバーに取り付けます。アルミ製のカバーの古い接着剤は、ほとんどの方はそのままにしてありますが、密着性が悪くなるので、完全に落としてから、形状を正しく修正しておきます。
1台目は完成で、2台目の疑惑のPEN-W。まず、ファインダーから先に修復しておきましょう。あらら、マスキングテープにセロテープを使っちゃったのね。それちょっとまずくね。
後ろは完成した1台目。良好な仕上がりです。で、まず補修で塗ってある自然乾燥塗料を剥離しました。トップ面に剥げがあったと見えて(キズがあります)その部分のみ塗装を剥離してありました。焼付塗装に備えて、内部のレンズ、ミラーは全て分離してあります。
オリジナルより若干艶は出気味です。トップカバーの塗装が、妙に艶があるのと、使用過程での塗膜の磨滅を考慮してのバランス。これから、レンズ・ミラーの再接着をしますが、光枠など、微調整が必要な作業ですので、小さいですが、塗装から完成まで非常に工数が掛かります。
すみませんね。今日は家の用事とホームページのお引越し作業やらで組立作業はしていないのです。で、この個体、分解して行くと、至るところにホワイトグリスが大量に塗ってあります。注油が必要のないところまで。。メーカーはどこのポイントに注油(グリス)をしているのかを熟知して余計な注油は避けるべきです。(と私は考えています)原因不明の各部のテカリはこれが原因なのかも知れません。
接着をしておいたファインダーが出来ましたね。ただし、光枠はまだ接着をしません。ファインダーがトップカバー側に付いているため、オリジナルでも光枠の倒れているものが多い(と言うか殆ど)ですが、本体とドッキングをした段階で光枠の倒れがないように調整をして接着をします。
では、シャッターです。すでに分解を受けていますが、製造年月の捺印が消されているのです。これで戸籍の手掛りを失ってしまうのです。この個体は#1157XXですが、私の資料では#141711(昭和40.1)#115245(40.1) #114810(40.1) #116018(40.2) #116067(40.5)などがありますので、たぶん(40.1)であろうと推測しますが、必ず整数順とはなっていないので断定はできません。
分解された方はホワイトグリスがお好きなようで、内部の可動部分にもグリスが塗布されています。メインスプリングが強化するように矯正されており、画像のスプリングも曲げられていますね。あと、ピンセット部分に本来あるべきシンクロ接点用のスプリングがありません。単純に付け忘れたのか? いえ、私はそうは思いません。どれもシャッターの作動を強化するための処置でしょう。負荷になるスプリングは除いてしまえ。
このスプリングです。落ちにくいグリスを超音波洗浄をして、オリジナル仕様で組み立ててあります。
12時位置のチャージレバー先端の黒塗装が剥げていましたので、タッチアップをして完成。
レンズを残して、本体とトップカバー側が完成しました。しかし、組み立てていると指がツルツル滑ってしまう。タミヤ辺りのフッソ系グリスでも使ったのではないかと思います。洗剤で洗浄しても落ちないのです。
内部の塗装面もツルツルしていますが、これはそれだけではなく、研磨剤で磨かれているようです。せっかく、防眩塗装としてあるのに。。
まぁ、豪華な画像だこと。塗装の疑惑やグリスなどで手間の掛かった個体でした。しかし、カメラが悪いわけではないし。。とにかく、ツルツル滑るので、カメラのホールドには注意をしてください。落とさないように・・
で、ホームページの方ですけど、OCNが撤退のため、お引越しをしました。とは言っても、殆ど更新はしていませんので意味はないかも知れませんが・・。そのうちリニューアルしたいと思っています。お気に入りに登録して頂いていらっしゃる方は変更をお願いいたします。
製造捺印は調べてみると40.1は多いです。PEN-Sとの増産でロットが大きかったのでしょう。実際のカメラ完成は同じ1966年の1月か2月です。コパルからの納入が1月の末頃であれば、組立に使用された月が翌月になることがあるからです。特にお盆休みや正月休みの頃が多いように思います。今回の2台は同じロットの製品と考えてよろしいでしょうね。
1台目の個体#1176XXはシャッター捺印(40.3)で製品完成は1965-3となっています。こちらの方が製造№が遅いのに製造は早いということになりますね。
突然のコメント失礼致します。
つい最近PEN FTと出会うチャンスがあり、どうせならしっかり整備して使いたい!と思い、調べた結果、こちらにたどり着きました。初めはあまり興味無かったのですが、触るに連れて愛着がわきました。
修理の依頼は可能でしょうか?どうぞよろしくお願いします。
そうでしたか、それは良い出会いでしたね。
PEN-FTの修理はお受けしています。システムが分かりづらくて申し訳ありません。表示されているホームページのトップ画面にお問い合わせ用のメールアドレスがありますので、そちらから状況をお知らせ頂けると幸いです。よろしくお願いいたします。
tomytmzk@titan.ocn.ne.jp