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カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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44万台のPEN-FT(B)の巻

2022年11月19日 10時00分00秒 | ブログ

みなさんも、そろそろFTに飽きて来ましたでしょうか? この個体はシリアル#4406XXからは最後期の生産と思われますが、1970年3月製と一つ前に続けてやりました34万台より生産は古いのです。この頃のシリアル№についてはミステリーがありますね。で、未分解かと思いましたがシボ革の接着が弱いので分解機と思いました。

しかし、シボ革を剥がしてみると通常のケトンで溶かしながら貼るグッドイヤー糊ではなく、元々両面テープと同様な糊(硬化しない)で貼られていることが分かりました。私もシボ革貼りの作業は当時のカメラ生産で経験していますが、これが意外に熟練が必要なのです。(一度貼り合わせると位置を直せない)70年代になると、そのような熟練作業から簡単に作業が出来る両面テープ貼りに移行していく過渡期ですので、このような仕様もあったものかと思います。画像のように楊枝で絡めとるとネバネバです。

ファインダーのモルトは不完全に貼り替えられていましたので、やはり分解機でした。

 

 

のバネカケの取付位置が180°違っています。これですとMシンクロ接点を叩けません。まぁ、今は問題ありませんけど・・あと、配線の通し方が違います。

 

シャッターユニットを分解して行くと・・。これは稀にある不具合です。テンションシャフトの軸受け部分のメッキが剥離しています。このメッキ不良は定期的に出て来ます。本来は交換した方が良いですけどね。

 

完成したシャッターユニットを本体に搭載してテストをして行くと、稀にシャッター幕が停止位置で止まらない症状があります。「ケイシツメ」が回転する右の「ケイシヘン」を確実に止められないようです。別の部品と交換して改善していますが、あまり不具合になることが少ない部品ですので、テンションシャフトと同様、最後期型であっても品質が安定しているとは言えないのかも知れませんね。

オリジナルの接眼枠は割れを接着剤で補修してありますので、オーナーさんのご希望でリプロ新品と交換しました。

 

ハーフミラーは見にくい腐食は無く再使用は可能でしたが、こちらもご希望で新品と交換します。

 

テストでレンズを取付けようとするとレンズが入らない。マウント裏のバネを止めるネジがゆるゆるの状態です。ここが緩むのは珍しいです。

 

問題のリターンミラーを点検しましたが・・これは再接着をされていますね。端にゴム系接着剤がはみ出していて、ミラーホルダー前縁の艶消し塗装が剥がれています。将来剥離の可能性もありますね。無限を確認すると若干ズレがありましたので調整をしておきます。

 

40万台のシリアル№はミステリーですが、この個体#4406XXは1970年3月製で露出メーターの製造は昭和45年2月13日です。少し前に作業をした#3510XXの製造は同じ1970年3月製で露出メーターの製造は昭和45年1月16日となっています。この事から両機は同じ時期に製造されたものとみて間違いはないと思います。なら、44万台と35万台のシリアル№は何を区別するためだったのでしょう?  で、メカの組立終了。後期型なのに露出計の感度低下が大きかったです。このような個体に入っている調整抵抗は、一般的な抵抗値より小さいものが入っていることが多いと思います。元々の感度に余裕がない素子だったのかも知れません。私の経験でもCdsの特性にはバラツキがあることを知っています。この個体は後期型の割には、通常は不具合とならない個所に問題が多く発生していましたね。あとは、調整作業をしてトップカバーを締めますのでこの状態で終了とします。

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