今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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セレンダウンのミノルタ・レポの巻

2020年07月21日 11時12分05秒 | ブログ

ミノルタ・レポのブラックですね。一般にカバーがアルミなのでへこみや傷が多いですが、この個体は非常にきれいですね。ブラックと言ってもレポ特有の青みがかった黒アルマイトです。で、この個体もお約束のセレンダウンです。

前面からもきれいな個体ですね。

 

 

問題はセレンをどうするか? ソーラーセルを代替とする方法もあるようですが、オーナーさんがジャンクのセコニックを同梱されて来ました。こちらのセレンを使えないか?ということです。やってみないと分からない改造は工数が読めませんし、そもそもうまく行くのか分かりませんからね。もう来ちゃったのでやらないわけにも行きません。で、セコニックからセレンを取り出してみると・・寸法はオリジナルは9.5X30 でセコニックが12X30でした。横は合いましたね。セレンの基板は鉄板で1mmと厚いですが2.5mmほど切り詰めなくてはなりません。果たしてパターン部と取出し線に干渉せずに寸法を合わせられるか?

何とか寸法を合わせました。下が加工したセレン。リード線の引き出し部分もオリジナルと同様に成形してあります。リューターなどで削ると高温にしてしまうので、平ヤスリでシコシコ削りました。1mmのしっかりとした鉄は意外に硬く時間が掛かります。

セレンを組み込みましたが、オリジナルのセレンよりもセコニックのセレンの方が厚みがあるのと集電用電極の取り出し位置の違いなどでショートなど不安定な動作をするので調整に苦労します。同時にファインダーの清掃もしておきます。

では、メーター側と結線して行きます。

 

 

セコニックの方が起電力が高いと予想していましたが、劣化や集光レンズとの相性もあるのか若干メーター指示が低いですので抵抗で調整します。

 

絶縁のため収縮チューブでカバーしておきます。

 

 

カメラ位置や振動などで動作に不具合が出ないか点検します。

 

 

で、その他のオーバーホールも実施します。まず、距離リングが固着していて回りません。シャッターは絞り羽根が動かない。レンズの汚れなどあります。

 

シチズンLプログラムシャッターの特徴的なカム板です。

 

 

流石にセイコー同様、時計メーカーのシャッターは作りが精密です。

 

 

スローガバナーは分離して超音波洗浄後注油をして組み込みます。

 

 

ちょっと長くなりますが、それだけPENに比べて機構が複雑なカメラです。このカメラで良くあるのが「カメラを振るとカラカラと音がする」これは遮光壁を留めていたモルトが劣化をして遊んでいるためです。

 

シャッターとの接続部分のモルトも劣化しています。

 

 

 

新しいモルトに貼り替えて取り付けます。これでカタカタ言わなくなります。

この三角のカムは絞りを制御しています。

 

 

このカメラは巻上げがギリギリして感触が良くありませんね。巻上げ部の偏心カムにグリスが無くなっているのも要因ですので清掃グリス塗布をして組み直します。

 

メーターは元気よく作動しています。

 

 

長くなりましたがこれで完成です。じつは今回使用したセコニックのセレンはこのカメラより2年前に(昭和36年)製造されていたものでした。もちろん個体差もありますが、セレンの塗膜、酸化カドミウムや保護ニスなどの厚みがオリジナルより明らかに厚いのです。それも長期に渡って性能を維持している原因かも知れません。カメラ搭載用のセレンとしては、出来るだけ小さく薄くしたいのが設計者の希望ですので、一概にコストダウンとも言えないのではと思います。今回は作業のお約束の前にカメラが届いてしまいましたので作業をしましたが、じつはこのような改造は全く工数が合いません。なるべくお受けしたくないのが本音です。

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