大阪・住吉のご常連さんから、ずっと前に来ていたトリップ35です。ニコイチ用に2台来ていましたが、製造時期によって底部の巻き戻しボタンに設計変更があるため、#54084XXを単独で使います。トリップ35はPEN-EEのお兄さんで、構造は殆ど一緒です。ただし、共通部品はありません。玉数は多いようで、きれいな個体が残っていますね。
でと、今回はO/Hのみではないので完全に分解して行きます。
元々、再分解を考慮していない組立方法なので、樹脂パーツはゴム系接着(接眼枠は熱カシメ併用)のため、溶剤はパーツを侵してしまうので使用できません。特に駒数ガラスの分離は困難を極めます。シャッターボタン座もカシメ加工をされていて、この辺りがPEN-Sなどより厄介なところです。
塗れって言うんですよね。当初はジャーマングレーが候補でしたが、この色は主にドイツ戦車色ですが、戦時中の塗装ということや兵器としての退色もあって、本当の色が分からない。バルナックのグレー仕様などは黒に近い明度のようですから、小さなこのカメラに似合わない。色々検討して、それなら空軍機の上面迷彩色はどうよ。ということで、ドイツ軍のグレーは青味があるグレーのイメージなので、青味を少しずつ追加して調色をしているところ。機体の迷彩色も、種類があって決定版というものはないですね。あくまでもイメージで、軍用ではないので明るいイメージとしたいのです。
クロームとニッケルを剥離したところ。底部にへこみがあるので、修正をしておきます。PEN-F系と違い本体側にもシボ革上下に塗装部分があります(めんどっちぃ)ので、こちらはマスキングで塗装します。
日曜日の午前中までの状態。午後からは都内青山のギャラリーで開催中の「ペンスケッチ展1017」に出向く予定なので、仕上げは後日ということで。
一か所塗れないのです。開閉鍵のカバーは樹脂製になっていて、焼付塗装が出来ません。自然乾燥塗料で塗るしかありませんね。
一見、PEN-Sの時代よりもプレスの精度が上がってシャープに見えたのですけど、意外に上下カバーとも平面性が出ていませんね。ヨレヨレです。梨地でごまかされていたという感じ。まぁ、上手く仕上がらない言い訳半分ですが・・シャッターボタン座や接着パーツを仮付けしてみたところ。因みに、巻き戻しダイヤルとシューはメッキのままコントラストとします。
では、本体を組み立てて行きます。裏蓋の開閉鍵を取り付けて、スプロケット軸、スプール軸、樹脂製のマスクを取り付けます。
シャッターユニットはPEN-EEとうり二つ。時計で言うと、セイコーの自動巻き機構「マジックレバー式」と同様に、シンプルな部品構成で完成されたメカニズムです。当初は問題ないと思っていましたが、赤ペロマークの動きに固着があり、改善させる必要が出て来ました。
レンズもきれいと思いましたが、光線に透かすと、曇りとカビがありますね。
レンズの清掃と、絞りユニットの作動が渋いので改善します。
赤ベロマーク機構。使用過程で歪が起きてスムーズに作動しなくなっていたようです。簡単なメカニズムなので、少しの歪が不具合になります。
組立はユニット化により非常に簡単です。工場での組立工数はかなり低いと思います。
駒数ユニットを取り付けると巻き上げダイヤルが動かない。原因は、ピンセット先の取り付け部分が低いため下の白いギヤと干渉するため。たぶん、調整ワッシャーが入っていたのに気が付かなかったようです。ワッシャを追加して解決しています。
裏蓋の蝶番取付とモルト貼り。
ファインダーの対物と接眼レンズは樹脂製になっています。予備機の31万代はガラス製ですので、どんどんコストダウンを受けているようです。元々、ファインダー前面の保護ガラスも省略されている設計なので、あまりゴシゴシ拭くと傷になります。
開閉鍵カバー。微妙に色が違う・・
シボ革は再使用出来ましたが、オーナーさんのご希望により、バルナック用で貼り替えています。このパターンは似合いますね。なんとか完成しました。先日のペンスケッチ展でも、トリップ35の写りは非常に良いとの評価を聞きました。完成された定番メカで安価に高性能を市場に投入するというようなコンセプトのカメラなのでしょうね。