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今日の筆洗

2016年05月10日 | Weblog

 米国のコメディー界にはこんな掟(おきて)があるそうだ。<汝(なんじ)、盗むなかれ>。他のコメディアンのネタは絶対に使ってはならぬ。ところが、相反する別の掟も存在するという。<汝、万一盗むことあらば、観客を笑い倒すべし>。高平哲郎さんの『スタンダップ・コメディの勉強』(晶文社)にあった▼このお人はひょっとして核開発と「並進」してコメディーの研究もしているのではないかと疑っている。北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)党委員長である。小欄の勘違いでなければ、「世界の非核化に努力する」と確かに言ったそうなのである▼国際社会の批判を無視し、核とミサイル開発を急ぐ張本人が核兵器の廃絶を訴えたオバマ米大統領のプラハ演説ばりの「非核化努力」発言である。悪い夢かブラックコメディーに他ならぬ▼そうか、あのコメディアンの「掟」に従ってオバマさんのネタを盗んだのかもしれない。「イエス・ウィ・キャン」と言わなかったのが不思議である▼日本の笑いにも詳しそうだ。世界の非核化を主張する一方で「自衛的な核戦力を強化していく」とは、お酒をやめられぬ親父(おやじ)がせがれの飲酒をなじる落語の「親子酒」そのままである▼笑いの才は認めよう。されどコメディアンの掟を理解していない。人のネタを盗むのなら「観客を笑い倒すべし」である。「失笑させるべし」でも「観客の顔を引きつらせる」でもない。

桂枝雀 Shijaku Katsura 親子酒 落語 Rakugo