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今日の筆洗

2016年05月16日 | Weblog

 <一年で最も素敵(すてき)な時期>。アンディ・ウィリアムスがそう陽気に歌い上げる流行歌があった。その時期がいつかといえばクリスマスである。米国の方にはその頃だろうが、日本人にとって、<最も素敵な時期>といえば、新緑、薫風のいま時分も有力候補だろう▼ある調査(二〇〇八年)によると「日本人の好きな季節」は四月と五月がトップになっていた。すがすがしい空気。明るい日差し。過ごしやすい若葉の季節はやはり人気が高い▼「一年中で一番気分のよい季節であろう。だが、季節の好みも好き好きである」と書いているのは文芸評論家の山本健吉さん。なんでも俳人、作家の久保田万太郎に「私は五月はきらいです」といわれたことを紹介している▼久保田がなぜ五月を憎んだか、その理由は分からないが、「美しき五月」が苦手という方もいる。深刻な話になるのだが、自ら死を選ぶ人が最も増えるのも、やはり五月と聞く▼四月からの新生活の疲れが出てくる時期でもある。心地よい空気や輝く緑や人々の陽気な笑い声が、沈む人の心にはかえって濃い陰影をつくるのかもしれぬ▼月曜日である。気の重い方もいるか。良いおまじないがある。<悲しめるもののために みどりかがやく くるしみ生きむとするもののために ああ みどりは輝く>(室生犀星「五月」)。まぶしき新緑はわれわれの味方である。