ファンタジアランドのアイデア

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ゲームは質の高い学習モデルになる潜在性を持つ アイデア広場 その1054

2021-12-11 17:49:19 | 日記


 家庭用やスマホ、そしてパソコン向けを合わせた世界のゲーム産業の規模は、20兆円になろうとしています。これは、動画配信と映画、そしてCDと音楽配信の合計よりも大きな金額になります。ゲームをする人の数は、22億人と世界人口の3割占めるまでになりました。高速通信規格5Gの普及を背景に、世界のゲーム人口が、今後10年で倍増するとの見方が有力です。これから10年で、ゲーム人口は40億人に倍増する可能性もあるのです。ゲームの成長力を取り込もうと、異業種がゲームに触手を伸ばす動きが広がってきました。ゲーム分野のクラウド技術で他社に先行すれば、世界中のソフト会社がクラウドの顧客になることになります。クラウドの大手のマイクロソフトは、ゲーム専用機での実績やそのノウハウを持っています。もちろん、5 G時代のゲームの競争は、クラウドの巨人であるアマゾンも加わる可能性があります。これからのゲームの競争は、データセンターの稼働効率を争う場になるかもしれません。ゲームに特化したプロセッサーの開発も進んでいくことでしょう。そこには、技術の開発とビジネスの拡大という新分野が広がります。
 世界の技術者が、この分野に目を向けています。アメリカでは、大学が前向きになっています。アメリカ250校のトップクラスの大学が、コンピュータサイエンスのコースにゲーム開発に必要なスキルの修得を組み込んでいるのです。若者に大人気のゲームという言葉を前面に押し出すと、志願する学生が急増したといいます。アメリカはゲーム開発に関わる教育システムを整備し、充実させることに力を注ぎました。大学に入学し、関心があれば、ゲーム開発に関わるカリキュラムを専攻できる環境が生まれたのです。アート系のコースを学んでいけば、自然にゲームをつくるためのスキルが身につく仕掛けになっているのです。さらに、ゲーム会社の近くにある大学は、その会社の社員も受け入れて、ゲームのカリキュラムを学習できる環境を整えています。残念ながら、日本ではアメリカのようなゲーム教育システムが存在していません。アマチュアが趣味としてゲームをつくる環境も、アメリカに比べれば貧弱な状態です。
 現在、ゲーム産業が盛んな地域は、カナダのモントリオールになります。このモントリオールには、グーム開発をするうえで密接に関わる企業が200社以上あるのです。ゲーム開発には、映像製作、CGソフト、音響ソフト、アニメーション制作の分野、シナリオライター、品質評価会社、大学、人材コンサルタンなどの多様な人材が必要になります。このような人材を集めるには、人が集まる仕掛けを設けることになります。この地域では、従業員の国籍も問われないので、海外のゲーム開発企業が続々と集結しています。そして、有利な税制を設けています。従業員に1000ドルの給料を支払ったら、ケベック州は最大300ドルを企業に現金で還付するのです。残念なことですが、日本のゲーム専用機は、もうその中身が日本では作られていないのです。プレイステーションのなかに入っている基幹技術は、すべてアメリカ製になっています。このプレイステーションのソフトウェアについても、アメリカとヨーロッパ勢が作成しています。ゲームの開発が、ひとりの人間によって作られるものではなくなっている実情があります。
 華やかなゲーム産業ですが、逆風も吹いてきています。オンラインゲームやコンピューターゲームの負の要素も明らかになってきているのです。文科省の全国学力テストの分析によると、ゲームの時間が長い子どもほど平均正答率が低くなる傾向があります。世界保健機関(WHO)は、ゲーム依存を精神疾患と位置づけました。子ども達のゲーム依存者の増加は、世界的に深刻な問題になりつつあるのです。「ゲーム依存」が若年層を中心に広がっているわけです。厚労省は、2017年度時点でネット依存の疑いがある中高生は全国で推計93万人いると発表しています。この数字は、5年前の調査が51万人でしたから、ほぼ倍増したことになります。負の要素が強調される限り、ゲーム産業の飛躍的な発展は阻害されることになります。小学校の学習指導要領には、「確かな学力」という項目があります。そこには、基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させることが明記されています。例えば、第2学年では, 千の整数について習得することなどです。第3学年では、万の単位について知ることが記されています。図形では、二等辺三角形,正三角形などについて理解し,作図などができるようにすることになっているのです。これらの基礎的・基本的な知識及び技能を活用して、課題を解決する能力が求められているわけです。ゲームをし過ぎる子どもは、これらの基礎的なことが身についていないといわれるのです。
 ゲームの負の側面を重視し、中国政府はゲーム規制を強めています。その理由は、子どもへの悪影響になります。中国ではゲームの新作を発売する際、当局の審査を受け、ライセンスを受ける必要があります。ここ数年は、1カ月に一度、ライセンスを交付するのが慣例でした。でも、今年の7月を最後に、ライセンスの交付を停止しているのです。規制はそれだけでなく、未成年者へのネットゲームサービス提供の時間が週末や祝日の1日1時間に限定しています。これは、中国だからできる厳しい規制になります。ゲーム世界最大手のテンセントは、中国当局の規制の網がかからない海外市場の開拓を加速しています。中国による開発ゲームの海外売上高は、2021年7~9月期に49億ドル(約5500億円) に達しています。これをさらに、増やそうとしているわけです。中国政府も、国内には規制を強めているのですが、ゲーム企業の海外展開を支援する姿勢を示しているのです。
 全てのゲームが、悪いと言うわけでもないことも、明らかになりつつあります。確かに、ボタンを押すだけの頭を使わない課金ゲームは、熱心に行っても学力の向上にはつながらないようです。でも、良いゲームには、小学校で獲得した知識や技能を活用しながら、問題を解決していく力を訓練する要素が含まれているのです。これらのゲームには、計画、行動、評価、改善という流れがあり、脳を多面的に使うステージが設定されています。ステージが進むと、考えるだけではクリアできず、試行錯誤を求められる質の高いゲームもあるのです。これらのゲームは、子ども達に考える力を付けます。計画、行動、評価、改善という実践能力は、成長しても必ず生活やビジネスに役立つものになります。蛇足ですが、良いゲームは記憶力向上には、あまり役立たないようです。つまり、学力テストで計られる記憶中心の成績は、良くなくならないということです。でも、論理的に考え、課題を克服していく能力は高められる面があります。一方、これからの子ども達に必要な能力開発には、有力なツールになる可能性があります。それは、「①自律的に活動し②デジタルツールを相互作用的に使い③異質性の高い集団のなかで役割を果たす」というものになります。
 ゆとり教育全盛期は、記憶中心の学習が悪いものとされてきたきらいがあります。でも、記憶中心の教育が悪いのではなく、記憶したものを応用しない教育に問題があったのです。皮肉なことですが、日本がゆとり教育に入ったころから、世界の先進国は記憶中心の教育に入っていきました。そして、日本に追いつく教育制度を構築しつつあります。悪かったのは詰め込みではなく、詰め込みをした後の知識の使い方を教えなかったことに問題があったのです。その延長線上に、ゲームでできるとこととできないところが分かってきたことがあります。良いゲームには論理的に考え、課題を克服していく能力が高められる面を持っています。でも、学力テストで計られる記憶中心の力はつきません。良いゲームを行うことの条件として、一定の記憶力を高める学習が前提になります。インプットの学習は、常に必要ということです。
 ゲームよっては、数についての感覚を豊かにするステージをたくさん提供してくれます。良いゲームは、子どもたちがなかなかできない体験を、疑似体験として経験することも可能です。ゲームが記憶力向上にはあまり役立たないことを押さえた上で、ゲームの思考を深める側面を利用することは理にかなっています。今までは、ゲームの魅力に振り回されてきた子どもたちや大人が多くいたようです。ゲームの実態を、とらえることができなかったからです。今は、ライブログというツールがあります。ライブログは自分自身の行動や思考の結果、状態、体験などを画像や映像、文字情報などで記録したデジタルデータです。ゲームの時間、学習時間、音楽視聴記録などもスマホのアプリで視聴履歴を自動記録できます。ライブログを上手に使うことで、自分の行動を改善するためのツールとして利用することが可能になりました。このデータを活用しながら、ゲームと学習、そして生活行動などをバランスよく行っていくことができる時代になっていようです。