中学の部活やスポーツ少年団などで活動が、勝利至上主義がエスカレートしているとの風聞が流れています。ある野球の部活動チームでは、とりあえず、バントやゴロの指導を重視しているといいます。これらの技術を身に付けること、こざかしくうまい選手になるようです。レベルが上がれば上がるほど、相手のミスに期待する野球は通用しなくなります。フライを上げることは、必要以上に悪とされる傾向もあるようです。バントやゴロの指導からは、日本を背負うようなスケールの大きい選手は生まれません。指導者の「勝ちたい」気持ちが先走り、細かな技術習得に走る傾向がるようです。指導者の言うことを聞く子を、優遇しがちなチームになっていきます。子ども達は指導者の駒になりきって、ゲームを遂行する光景が見られるようになります。
日本の企業には、運動部で3年間一つのことをやってきた実績を評価する姿勢がありました。レギュラーになれなかった部員にも、それなりの進路が用意されていました。部活動を行ってきた生徒は、コミュニケーション能力があり、人柄が良いと評価されます。運動に打ち込む姿は、日本の企業戦士を髣髴させるものでした。3年間、部活動を行ってきた生徒は、会社で教育すれば、ものになるという考えがあったのです。監督は部員の進学や就職を心配することなく、部員の競技能力を高めることに専心することができました。指導力があれば、競技能力を高めることに専心できる環境が、内外に整備されていたわけです。以前の部活動は、部活動の監督と企業、そして部活動を行う生徒たちの利害が一致していたともいえます
学校の部活動において、強い指導者の下には、強い選手が集まり、良い成績を上げていくシステムができていました。指導者は選手一人ひとりの育成よりも、チームの成績を優先してしまう傾向になります。監督の指導に選手は応え、結果を出すという流れができていたのです。優秀な部活では、プロに挑戦する卵達も存在していました。中学の名門から高校の名門を目指して進学してきます。野球の部活動を行う中で、切磁琢磨している部員は15万人もいます。これらの野球部員が、すべてプロに進めるわけではありません。プロに入る選手は、毎年100人程度です。プロ野球選手の平均引退年齢は29歳です。残りのセカンドライフが、厳しいものになっています。スポーツの成功が、人生の成功にはつながらない事例も多いのです。ちなみに、Jリーガーは、もっと短く25歳といわれています。
切磋琢磨をする中で、いくつかの問題もでてきます。思春期の成長期には、骨の発育に筋肉や腱の発育が追いつかない現象がでてきます。骨の発育に筋肉や腱の発育が追いつかないために、骨端症や裂離骨折を起こすこともあるのです。困ったことに、部活動などで疲れが出てくる練習やゲームの後半で骨折が起こりやすいのです。成長期には長時間の練習や、翌日に疲れを残すほどの強度な練習は、控えるのがよいわけです。一方、この時期は体を鍛えると、老後までの健康が保障される時期でもあるのです。たとえば、高齢者は骨粗しょう症になる方が多くいます。この時期に、強い負荷が加わるスポーツをしている運動部員は、高い骨密度を形成しています。この高い骨密度は、貯金として、老後まで有効になるようです。スポーツを定期的におこなうことで、食事も睡眠も良好な状態に整えられるというわけです。もちろん、カルシウムやタンパク質、ビタミンDなどをバランスよくいろいろな食材から摂取することを忘れてはいけません。思春期の子どもが発するサインを見逃すことなく、成長と運動の加減を見抜く指導者であってほしいわけです。スパルタの指導だけでは、健全な部活指導はできないようです。
社会が必要とする人材は、ネット社会で柔軟に活動できる高いスキルが求められるようになりました。以前の企業戦士では、世界のビジネスに立ち向かうことができない状況が生まれつつあるのです。企業文化の変化は、学校の部活動にも変化をもたらしてきています。最近では、会社で新入社員を初歩から教える余裕もなくなってきています。3年間部活動をしたからといって、良い企業に確実に勤められるわけでもない状況になりました。部活動を積極的にやっても、将来に役立つのだろうかという疑問がでてきたのです。以前の部活動は、大学スポーツとのコネクションもできていました。でも、この関係も、少しずつ変化してきているようです。
日本の部活動と比べられるのが、ヨーロッパ型のクラブ組織です。このクラブ組織は、学校の区分がないため、競技レベルごとで所属チームや所属リーグが決ります。ヨーロッパ型のクラブは指導者に関しては、資格を持ったコーチから指導を受けられます。逆にいえば、資格がなければ、教えられないわけです。これらのコーチの指導からは、楽しみながら質の高い指導を受けることができます。彼らの仕事は、選手のモチベーションを主なテーマとしているのです。ヨーロッパ型のクラブは、同じようなレベル同士で試合ができます。同じレベルですと、毎週のように試合が楽しみになり、練習にも力が入ります。でも、日本の練習と違うのは、多くても週に2~3回、各2時間ほどの練習なのです。この練習量ですから、からだの成長に問題が起きる可能性は低いのです。ヨーロッパ型のクラブは、シーズンオフには、別のスポーツをすることになります。この種目を多く経験する仕組みは、思春期の成長途上にある子ども達の全面発達を促しているとも言えます。
余談ですが、文部科学省は2020年9月1日、教員の長時間労働を是正する改革案をまとめた。改革案には、休日は部活動の指導に携わる必要がないと指摘しています。公立中学校と高校の休日の部活動を、地域に移管する改革案をまとめたのです。文科省は、教員に代わって生徒の指導や大会の引率にあたれる人材確保を地方自治体に促しています。自治体に対して、「人材バンク」や育成制度の整備、民間との連携などに取り組むよう促しているわけです。2023年度以降は「地域活動」として、地域人材が担う仕組みに順次移行するとしています。この改革案に先立ち、各都道府県の教育委員会でも、部活動の制限を推し進める通達を出し始めています。
そこで、課題になることが、生徒の指導や大会の引率にあたれる人材確保になります。日本には、部活動を経験した人材は数多くいます。これは、地域で指導できる人材が豊富にいることを意味しています。でも、その指導法が昔のままなら、子ども達に考えることをさせないスパルタ指導になる可能性が出てきます。現在の子ども達の成長発達を理解できる指導者、そして子ども達に考えながらプレーをさせる指導者に育てる組織も立ち上げて