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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」47

2014年02月04日 | 物語「水辺ノ夢」
「今日は夕方まで一日出かけるから」

朝食を食べ終えた圭は杏子に告げる。

「……そう、分かった」

光の事でもめて、気まずいまま数日が過ぎている。
覚悟を決めなくては、と圭は思う。

「杏子」
「なぁに?」
「帰ったら、聞いて欲しいことがあるんだ」

食器を下げていた杏子は立ち止まって振り返る。

「え?何を」
「帰って来たら言うよ」

杏子は頷く。

「分かった。いってらっしゃい
 気をつけてね」

「うん。行ってきます」

簡単な荷物を背負い、圭は家を出る。

村の広場には西一族の若者が集まり始めている。
狩りの準備が始まっている。
圭はその輪の中心に広司がいるのを見つける。

謹慎を終えたのだ。

広場に現れた圭を彼らは不思議そうに見つめる。
何をしに来たのだろうか、と。
その中でいち早く状況を察した広司が圭の前に立つ。

「そういう事か」
「……何が?」
「とんだおもりを押し付けれたもんだ」

怒鳴るように、広司は言う。

「分かっているのか。狩りは遊びじゃない
 足手まといが一人いるだけでも危険性は上がる。
 そこを自覚しているのは認めてたんだけどな」

自分ひとりが参加することで、皆の足を引っ張る事。
大きな獲物を仕留められる実力が無い事。どちらも圭は自覚している。

けれど

もう圭はそこに賭けるしかない。

「おい、そろそろ集まれ」

今日の狩りの進行役が、皆に集合を掛ける。
広司は舌打ちをしながらそちらに向かう。

「いいか、余計なことは何もするな」

「分かっている」

圭は広司に続いて駆け出す。



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