浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

チェリビダッケ指揮SDR響のシューベルト交響曲「グレート」

2012年07月07日 | 指揮者
昨日に続いて中学生時代からため込んだ膨大な量のエアチェックテープをデジタル化して聴いてゐる。今日は当時のNHKが総力を挙げて紹介した幻の指揮者チェリビダッケを取り出した。

SP時代の録音も好きだが、僕は戦前に独逸・墺太利を中心に活躍した演奏家のライブ音源にも強い関心を持ってゐたため、ベーム、クーベリックやチェリビダッケのエアチェックなどは逃さなかった。其の為、7吋オープンリールのテープコレクションは優に600本を超える始末だ。しかもSPレコヲドを聴きなれた耳にはステレオである必要は全く無いので、殆どが4トラックのデッキで1トラックのみに録音をしてゐたのだ。つまりLチャンネルとRチャンネルには別の演奏会の音源が収まってゐるといふことになる。だから600本と言っても其の数字どおりではなく、レコヲドに換算すると5000枚分になる。一生かかっても聴けるかどうか不安になる量だ。其の中から取り出す栄えある1本といふ訳だ。

今日聴いてゐるのは、現在、一般に入手できるミュンヘン・フィルハーモニーや瑞典放送響との演奏ではなく、シュツットガルト放送響との1976年4月2日のライブ録音である。此の演奏がCD化されてゐるのかどうかは知らないが、大変な名演奏だと思ふ。ホルンのとちりやチェリビダッケの奇声の連発などがありCD化は許可されなかったのかも知れない。

テンポの変化などフルトヴェングラーを思わせる第壱樂章や凄まじい燃焼度の終樂章、やや速い目のテンポ設定の第弐樂章など、どの部分を聴いてもチェリビダッケといふ指揮者がいかに個性的な演奏をしてゐたのか、あらためて実感した。フレーズの最終音の扱いやアンサンブルの精緻さなど、フルトヴェングラーとは全く異なる個性も聴くことができ、いつまでもフルトヴェングラーの面影を追って聴くことが愚かなことだと思ひながら愉しませてもらった。

これはチェリビダッケ66歳の演奏である。晩年はやや遅い目のテンポ設定に驚かされることが多く、会場で生で聴いたら此の意味が分かるのだらうか、ともどかしく思ふ演奏も多かったが、66歳のチェリビダッケは違う。熱っぽさと丁寧さがうまく調和したやうな円熟期の最高の演奏だと思ふ。

盤は、私家版CD 765-0056OR。


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