浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ホルヘ・ボレ&イッセルシュテットによるリスト洋琴協奏曲第壱番

2012年09月29日 | 洋琴弾き
ホルヘ・ボレはライブで本領を発揮するタイプの洋琴弾きだと云はれてゐるが、イッセルシュテットとの協演による珍しいライブ録音を聴こうと思ひ棚から取り出してきた。CD盤では、先ずアンコールとして演奏されたブラームスの洪牙利舞曲第壱番から始まるが、急緩の繋ぎ目を連続的に繋いで演奏する変わった表現に驚かされるのだ。最終音の前にイッセルシュテットが指揮台を蹴る足音も入っていて臨場感がある。

ボレのリストの協奏曲第壱番はロチェスター響との録音があったが、イッセルシュテットのテンポはもっとゆっくりとしていて重厚感を感じる。冒頭のボレの独奏が此の重厚感を引き継いでゆったりと弾いてゐるところから、此のテンポ設定は此の日のボレの意向なのかとも思ふ。クラリネットとの掛け合いの洋琴独奏部もゆったりと瞑想的である。ボレの洋琴の弱音もさることながら、提琴も実に美しい。此の協演の管絃團は北独逸放送響なのでコンサートマスターはフルトヴェングラーとの録音が残されてゐるエーリッヒ・レーンかも知れない。

此のCDには第壱楽章しか入っていないが、当然、全曲の録音が保存されてゐるはずだ。此のやうな名演奏は市販すべきだと思ふ。きっとボレのファンの方はロチェスター響との録音とは異なる印象を持たれるはずだ。ボレのライブ録音は1972年のソロコンサートの海賊盤が強烈な印象とともに記憶にあるが、此の演奏では聴衆を前にしたライブならではの語りかけるやうな繊細な表現も聴くことができる。

此のCD盤では、続きにシュポアの弦楽四重奏と管絃團の為の協奏曲がおさめられてゐて、これがまた大変美しい作品で独奏はエーリッヒ・レーンとアナウンスされてゐる。興味の尽きないCDなのだが、全曲が収録されてゐないのが残念だ。1965年の米國ツアーの際のカーネギーホールでの実況録音である。

盤は、NDR制作のCD FRE-2081-2。


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