浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

メンゲルベルクのベートーヴェン第弐交響樂

2010年08月30日 | 指揮者
メンゲルベルクのベートーヴェンの交響曲は第五番を聴いたのが最初だった。フォンタナの廉価盤LPで裏面には未完成交響樂が入ってゐた。中学校の帰り道に長崎屋のLPコーナーで買ったのを憶えてゐる。

ぽっちゃりとしたおばちゃんが少し割り引いてくれたのも中学生としては大いに助かった。ぺらぺらのジャケットにホルンの絵が大きく描かれてゐた。その録音の特殊な響きに、何か戦前独特の美意識を感じ取った僕は、その後、フルトヴェングラーのベートーヴェンに打ちのめされてからは、ますますどっぷりとその世界に引きずり込まれていくのだった。

その後、メンゲルベルクを聴くことはあったが、恣意的な楽譜への「いじり」に対する奇異の目(耳)で聴いてゐることが多かった。真の意味でメンゲルベルクの演奏様式を素晴らしく思ふやうになるのは、それから数年後、チャイコフスキーや浪漫派の小品を録音したSP盤を聴いてからのことである。

そして現在、再びメンゲルベルクのベートーヴェンを聴いて、そのきびきびとした表現に驚いてゐる。昔のイメージはどうなってゐるのだ。メンゲルベルクの第弐交響曲は3種類あるが、1943年のライブは今回が初めてなので、ひょっとすると表現が少し変化したのかも知れない。僕が聴き親しんだのは1940年のライブの方だったのだらう。それとも、アルチュウハイマーによって物忘れが酷くなってゐるのかも知れない。

終楽章では前のめりに走ってゐる部分が何箇所かあるが、ふんわりと一瞬テンポを落とす場面もある。いずれもがアンサンブルを乱さずに行われるため、テンポの意図的な揺り動かしであることが分かる。それとティンパニーの独特な響きもメンゲルベルクの演奏をかなり特徴付けてゐるやうに思ふ。

此の齢になってやうやくメンゲルベルクを再認識してゐる次第である。メンゲルベルクのライブ音源がどんどん発掘されることを心待ちにしてゐる。

盤は、仏蘭西TahraによるCD TAH391-3。


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