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ISIS、コバニ市の3分の1を占領 10月8日

2015-11-23 23:36:07 | シリア内戦

 

ISISがコバニを最初に攻撃したのは、9月13日である。9月末までに農村部を占領し、10月1日、市まで1kmに迫った。

10月5日、ISISは画期的な勝利をした。戦略的に重要なミスタヌールの丘を占領し、市内に突入した。

           市内での戦闘

       

10月6日、ISISは市内に100m侵入した。この日、コバニ自治州に集結しているISIS兵は9千人だった。これまでの作戦に比べ、けた外れに多い。   

 ISISは市内を進み、幹線道路48号線に入ろうとした。その時、待ち伏せしていたYPGに襲われ、ISIS兵20人が死亡した。

           

戦闘は一日中続き、ISISは市内に深く侵入した。マクタラ・ジャディーダ地区とカニ・アラブ地区、さらに工業地区を占領した。工業地区は市場の東にある。ISISは市内をかなり進んだが、48号線付近で戦っており、市場に至っていない。(上の地図参照)  

     

しかし10月7日の朝、形勢が逆転した。クルド軍は昨日奪われた地域の多くを奪回した。

このクルドの逆転劇は、米空軍による空爆のおかげである。前の夜、米空軍がISISの陣地を3回空爆し、戦車1両・3台の戦闘車両・対空砲1門を破壊し、小部隊の兵士のほとんどを殺傷した。

10月8日も、米空軍はISISの背後を空爆した。

        

クルド軍はISISを押し返した。また米空軍はモスクの近くに集まっているISISの部隊を空爆した。

ISISが占領したのは工業地区までであるが、ISIS兵がモスクにいたということは、一部の兵は市の中心部にまで入っている。モスクは市の東西の境界から等距離にある。地図によれば、モスクの占領には至っていない。

        

 クルドが押し返したとはいえ、この時期のISISは勢いがあり、市内から追い出すことは不可能に近い。米国の政府高官は、コバニはISISの手に落ちるだろうと語っている。

そうはならなかったが、10月末までにISISはコバニ市の東半分を支配する。クルドは西半分を守り抜くことになる。モスクは両陣営のほぼ中間に位置する。(10月30日の地図参照)

ISISが空爆をうけた8日、ISISに援軍が到着した。ISISは工業地区から西に進み、市場を占領した。(市場の位置は10月30日の地図参照)

ISISはさらに市の中心部へ向かった。ISISは現在のところ、市内の3分の1を占領している。

10月8日の夜、大きなトラックでクルドの警察署に対し自爆攻撃をした。その後、警察署を占領した。

10月9日、米国とヨルダンの空軍が、コバニを爆撃した。標的となったのは、ISISの宿舎、司令部、補給基地と倉庫、5台の装甲車である。クルド軍は7日-9日の集中的な空爆に感謝した。

「この3日間の空爆は非常に効果があった。しかし空爆だけでは勝てない。地上の戦闘員が強くなければならない。我々は弾薬が不足し、重火器を持っていない。これらの必要物資の供給を妨害しているのはトルコだ」。

クルド軍はさらに反撃した。警察署を占拠しているISISを包囲した。この戦闘でISIS兵11人が死んだ。しかしクルド軍は弾薬が底をついた。 

      <ISISは勝利するだろう>

10月30日の地図を見れば、ISISはコバニ市の半分を占領していることがわかる。10月9日には市の3分の1を占領しており、クルド側に悲観論が生まれた。

トルコ在住のコバニ出身者が10月8日に書いた。「コバニが陥落しないことを願っている。しかしもう駄目だ」。

米国の軍関係者は、ISISが勝利するだろうと見ている。

コバニで戦闘が始まってから最初の20日間、米国は何もしなかった。この間に300の村がISISの手に落ちた。米国はコバニは戦略的に重要性が低いと考えていた。

8日ケリー国務長官が述べた。「コバニで多くの住民が難民となっており、悲劇的だが、冷静に判断するなら、ISISの中枢を破壊することが先決だ。ラッカ周辺の司令部と軍事的基盤を破壊することが、最も効果的だ」。

米国の空爆はラッカに集中した。このラッカへ空爆はISISに大きな打撃を与えた。 

米国の戦略的判断は正しかったが、コバニには戦略的な意味が全くないということではない。コバニはトルコとの国境にある都市である。ISISがこの都市を支配するなら、ラッカへの志願兵と武器の送り込みが万全になる。ISISはコバニの両隣りの都市ジェラブルスとテルアビヤドをすでに支配地としている。

     

コバニを獲得することで、ジェラブルスとテルアビヤドは安定する。

これまでクルドはISISに対する防波堤の役割を果たしてきた。コバニでクルドが敗れれば、トルコとの国境地帯のほとんどをISISが支配することになる。ISISはジェラブルスとタラビヤドで満足しているわけではない。実際ISISはハサカ県のセレカニエの周辺を攻撃した。クルドとの前哨戦をやった後、簡単にあきらめた。クルドが手ごわかったからと、この時は優先課題が他にあったからである。国境地帯の制覇というISISの目標は変わっていない。

8日のニューヨーク・タイムズはコバニの避難民の数を18万6千人としている。20万人という報告もある。


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