梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

松風月稽古場便り・3

2009年06月01日 | 芝居
『蝶の道行』『女殺油地獄』が<初日通り舞台稽古>、『幡随院長兵衛』『門出祝寿連獅子』が<総ざらい>でした。

『蝶の道行』の引抜き! 師匠の引抜きをさせて頂くのは初めてでございます。本当に本当に緊張いたしましたが、まずは失敗なく勤められましたものの、諸先輩方の鮮やかなお手さばきが目にあるだけに、自分の未熟さ、いたらなさを痛感いたしました…。『道成寺』『鷺娘』『手習子』と、女形の引抜きは沢山ございますが、立役の引抜きというのは、実は本興行でかかる演目にはそうそうないもので、そんなお役の後見を勉強させて頂ける絶好の機会を、絶対に無駄にできません!
今日の反省点をしっかり克服できるよう、今一度、段取りを整理し、もっともっと落ち着いて、テキパキと、迅速に作業できるよう、しっかりと心がまえをして初日に臨みたいと思っております。今月は試練の月!!

『油地獄』は、先日も申し上げましたように松嶋屋(仁左衛門)さん“一世一代”のお舞台。下座や竹本さん、群衆の動きにいたるまで、こと細かくご指示をなさる松嶋屋さんのお姿に、僭越ながら、並々ならぬ意気込みを感じました。ひとつの舞台を作るということに、携わる人々がどれだけ気を遣わねばならないのか。私は黒衣を着て師匠についているだけの立場ですが、拝見していて大変勉強になり、いろいろなことを気づかされました。

『寿連獅子』は、舞台にての総ざらいでした。初舞台の金太郎さんは、ほぼ本番通りの扮装をなさり、後シテでは獅子の毛振りもお勤めになっていらっしゃいました。4歳とは思えない立派で元気な仔獅子! …昼の部の『油地獄』でも、松嶋屋さん3代の共演(与兵衛・お吉・娘お光)がございますが、芸が受け継がれてゆくその現場にいられるということの有難さと申しましょうか、“その時”しか生まれることのない感慨、思いというものは、私のような立場の者に取りましても、また格別なものがございますね!