梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

『ぢいさんばあさん』

2010年02月17日 | 芝居
3日間のご無沙汰でした(玉置宏さんも鬼籍に入られましたが)。先輩、仲間と食事をご一緒することが続きまして、更新が滞ってしまいました。
今朝は近所の税務署に確定申告の提出をしてまいりました(e-taxは未経験)。いつも記入に漏れがないかドキドキしながらチェックを受けるのですが、無事にすんでひと安心です…。

さて、本日は『ぢいさんばあさん』のことを書いてみたいと思います。

松嶋屋(仁左衛門さん)の伊織、大和屋(玉三郎)さんのるんというお顔合わせは、記録を見ますと当月で4演めとのことですが、その第1回め、平成6年3月歌舞伎座の上演が、私が初めてこの演目を拝見したときなのでございます。
もう16年前なのですね。中学校1年生でした。
なにしろ後半、老いた二人の再会には本当に感動いたしましたが、最初に伊織が戻って参りまして、「わしの家…わしの桜…!」と、ひとり喜ぶくだりには、思わず知らず泣いてしまいました。私はそのころ3階席か4階一幕見で拝見するのがもっぱらで、その月も歌舞伎座の真上から双眼鏡で観ていたわけですが、その双眼鏡の覗き口に、涙が溜まってきまして…。
周りの人に、泣いてるのがバレたらやだな~なんて思うのですが、なかなか感情は抑制できませんでね…。

二人が抱き合って桜がはらはらと散る中、静かに緞帳が降り、やがて客席が明るくなりました。
そのとき、隣に座っていらした見ず知らずの女性の方が、私の方を向いて、
『本当に、よいお芝居でしたね』って…。
その言葉に、またまたジンときてしまったのでした。

そんな思い出もあるこの演目に、今自分が出させて頂いているということ。
先月の『娘道成寺』と同じく、この仕事を続けてきて本当によかった! と思うのです。
そして、もっともっと腰元役をしっかりせねば! という気持ち!