梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

寄せては返す人の波

2010年02月11日 | 芝居
歌舞伎座の<名題下部屋>は、30余畳のスペースがございますが、ここで過ごす人数は、公演ごとの座組によりまして変動いたします。
2010年最初の初春興行では35人だったんですが、当月は67人! ほぼ倍です。
よくまあ収まっているものだと思いますが、今月は、いちばん人を使う演目が『籠釣瓶』、しかも序幕の「道中」しかないので助かっているのです。

私が楽屋入りをしますのが、昼の部序幕『爪王』開幕30分前。この頃はまだ10人くらいしかおりません。
それが、次の『俊寛』が開く少し前になると20人くらいになり(船頭役で多数出演しますので)、幹部俳優さんが大勢お出になる『口上』を前になるともう少し増えてくる。
それが『ぢいさんばあさん』が始まる頃になると再び少なくなり、夜の部序幕『壺阪霊験記』でグッと減ってしまいます(なにせ主演者以外お役がない演目ですからね)。
それが『高坏』の頃になるといよいよ『籠釣瓶』の準備がはじまり、とたんに混みだします!
振袖新造詰袖新造、太鼓持に若い者、それぞれが化粧をし、衣装を着、鬘をかぶり…。
役者のみならず、衣装さん床山さんも加わりますから楽屋の熱気も最高潮です。
サァ『籠釣瓶』が開きますと、「道中」がすんでしまえば、師匠が出ているお弟子さんが残るばかり、私が勤めを終える「縁切り」が幕になる頃には再び10人くらいの静かな楽屋となっております。

静かなほうが落ち着けるのか。
賑やかなほうが楽しめるのか。

楽屋はあくまで“職場”ですが、1日の大部分を過ごしますからね、気持ちよく生活したいものです!