梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

梅之旅日記西の巻・15

2008年09月15日 | 芝居
山口県周南市【周南市文化会館】での2回公演でした。
前回とうってかわって、自分たち名題下と衣裳さんが一緒の部屋で、師匠方の楽屋とも近く、仕事がとってもしやすかったです。

加賀屋(魁春)さん2演目となる『葛の葉』。
早変わりも見どころの一つですが、<女房葛の葉><葛の葉姫>の2役をお勤めになるなかでの、衣裳の移りかわりも面白いです。
まず最初は女房葛の葉、無地の<栗梅(くりうめ)の着付。これは『寺子屋』の戸浪や『吃又』のお徳でもみられる、時代世話狂言の女房役の定番のコスチュームですね。
続いて葛の葉姫、役名にちなんで葛の花の縫い取りをした、緋繻子の着付。普通お姫様といいますと、『十種香』の八重垣姫のように、緋綸子の生地になることが多いのですが、繻子を使うのは、より古風さを出すためなのだそうです。ぼってりとした綸子で豪華さを出すよりも、伝奇的な内容の芝居ですから、シンプルながらも<味>のある雰囲気が作られています。
奥座敷の場では、女房葛の葉は<辛子色>の着付になります。菊の花と露芝の柄も入りますが、この着付の色は、実は狐の毛の色を暗示しているのだとか。
「恋しくば」の曲書きの後、童子を保名に託した葛の葉は、<藤鼠(ふじねず)>の着付に。さらにこれを引き抜いて、白の<毛縫い>(女版『四の切』忠信ですね)になります。このやり方は加賀屋さん独自です。

衣裳に限らずこの『葛の葉』というお芝居は、演者によっていろいろと違いがございます。またおいおいご紹介できたらと存じます。

(9月16日 記)