「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

防災教育の体系性を考える

2015-04-29 23:56:40 | 防災教育
東日本大震災現地調査も今日で5日目。終日「やませ」の中の行動となる。

名前は知っていたが、実際にやませの中を動くのは初めての経験。
昨日は30度近く今日は10度そこそこ。自然のなす業ゆえ、文句も言えない。
「多分必要ないだろう」と思いつつも車に積んできたダウンジャケットが役立つとは……。

岩手県田野畑村の海沿い、羅賀にあるホテル羅賀荘を発って、まずは一つ南の平井賀へ。
海岸の状況を写真とビデオにおさめた後、三陸鉄道のカンパネルラ田野畑駅にてコーヒー。
コーヒーのお供は、昨日久慈の書店で買ったばかりの
源明輝『さんてつに乗ろう!三陸鉄道乗り鉄・撮り鉄・旅鉄ガイド』。

もちろん防災の本ではないが、

三陸へ行こう/乗る、撮る、観る、食べる/ローカル鉄道の旅がおもしろい
復活の「奇跡の鉄道」/さんてつ!

こういうフレーズが泣かせる。

まだ三鉄ファンクラブに入会しておらず、陰ながら応援しているだけの「旅の坊主」であるが、
さんてつを応援する方法として、こういう本もあるのか、と、
「眉間にしわを寄せて難しいことを言っている」「旅の坊主」には出来ないこと、と、
この『さんてつに乗ろう!』を斜め読みしつつ感じている。

コーヒーを飲みつつ方針を固め、昨日素通りした久慈=田野畑間を改めて確認することとして、
まず久慈に直行し、その後、小袖、久喜、野田村中心部、普代大水門、普代太田名部防潮堤、
島越、田老・小堀内、宮古・鍬ケ崎と南下、最終的には宮古のルートインへ投宿となる。

半ばは気ままな一人旅でもあるのだが、現場には「モノを考えよ!」とのプレッシャーがある。
ICレコーダー片手に、アイディアの断片を吹き込みつつ、車を走らせる。

「あまちゃん」で一躍有名になった小袖は、高台に、
漁村センター(公民館のようなもの)と保育園が隣り合って建っている。
こういう「高台に暮らす漁業」こそ、あるべき姿、と思う。
そう思うならば……。

一昨日夕方、昨年夏にお手伝いした「防災まちづくり・くにづくり教育」のプロジェクトについて、
次のステップに向けた具体的な話が飛び込んできた。
その件で、昨日は担当者と電話で話したのだが(プラドにはハンズフリーのセットをつけてある)
やはり、防災教育の体系性について、議論となった。

現時点では「多分、こういうことなのだろう」という段階だが
(これでほぼ間違いあるまい、という手応えはあるのだが、まだまだこなれていない)、

○小学生段階:自分を守れるようになること
(災害対応=戦闘レベル/今のための防災教育/個人レベル/例:避難)

○中学生段階:小学生段階+他人も守れるようになることand/or助けられるようになること
(災害対応=戦闘レベル/今のための防災教育/互助レベル/例:初期消火)

○高校生段階:小学生段階+中学生段階+将来の自分が被災者にならないこと
(予防=戦略レベル/将来のための防災教育/個人レベル/例:リスクの有無大小を見抜く目とそれを購い得る経済力を着けること)

○大学生レベル:その以前の全段階+将来の地域を被災地にしないこと
(予防=戦略レベル/将来のための防災教育/集団への働きかけ/例:立地と構造・都市計画・土地利用の見直しを担える者になる)

「釜石の奇跡」の舞台となった鵜住居は明後日訪問するつもりだが、これは避難が奏功した事例。
これは、小学生対象の防災教育としては○だろうが、中学生以上を対象とするレベルではなかろう。
京大におられた尾池先生は2038年という数字を出しておられたが、
避難を教えて事足れりは小学生までではないか。
将来の大人には、避難しなくて済む地域を一緒に作っていこうではないか、
そのために必要なことを教えられるような、防災教育こそ、取り組みたいと思う。

先に触れた『さんてつに乗ろう!』のあとがきで、源明さんは、
田野畑村や吉浜集落を例に出して「高台に暮らす農業」の考え方を紹介しているが、
そこには「避難しなくても済む環境を作ろうとした」先人の知恵と努力があり、
それを担える者を育てることが、高等教育レベルの防災教育だろう。

このテーマ、もっとしっかり書き込まなくてはならないが、それは改めて。
(はてさて、一体幾つ宿題が残っていることやら……。)


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