「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

講義「災害と人間社会」から

2008-01-22 23:26:22 | 災害
 大学は補講期間。

 ほとんどすべてが国や自治体の依頼とはいえ、出張が多く勢い休講も
多い「旅の坊主」。補講(つまりは日程変更)制度に助けられているが、
ともかく半期15コマ(うち1回は試験)はノルマ。という訳で、今週は補講の
連続。今日は「災害と人間社会」の講義が1コマ。

 「災害と人間社会」
 2000年春、大学教員になって初めて担当した科目がこれだった。今年度で
8シーズン目。1、2年生向けの防災への導入科目であり、学生にいろいろな
ボールを投げているが、はてさてどう思われていることやら。

 過去2週にわたり、「9・11 NY同時多発テロ 衝撃の真実」を見せてきた。
 ニューヨーク市消防本部の新人消防士の成長の物語を取材中のビデオ・
ジャーナリストの兄弟が、偶然にも9・11NY同時多発テロの歴史の証人と
なり、残してくれた極めて貴重な映像資料である。ただ、これを見せて感想を
言わせる(書かせる)だけでは大学の講義としては面白くない。そこで「国際
司法裁判所でテロリスト国家として判決を受けた国はどこか」を調べさせ、
それと絡ませた上で、このDVDの感想を求めたのだが書かせたのだが、
レポートの出来は……。

 ネットでテロリスト(支援)国家を検索してみると、やはり、ブッシュ政権の
言う幾つかの国が出てきてしまうのだろう。まぁ、それはそれとして仕方が
ないことなのだろうが、わざわざ「国際司法裁判所で判決を受けた」と言及
していたことを完全に無視してレポートを書いているのだから、おいおい、では
ある。

 知る人ぞ知る話ではあるが、国際司法裁判所でテロ国家として有罪判決を
受けた唯一の国は、アメリカ合衆国である。(対ニカラグア)

 学生達には、その事実を受けとめた上で、9・11を考えてもらいたいと常々
思っているのだが……。

 これまた知る人ぞ知る話ではあるが……。選挙によって合法的に成立した
政権をアメリカが支援する軍事クーデターで転覆させた事例がある。その日が
よりによって9月11日。同時多発テロの28年前の話であるが。

 「セプテンバー11」という映画がある。DVDの帯に曰く、

 「9・11はなぜ起きたのか?!11カ国、11人の名匠が世界に問う空前
絶後のプロジェクト!」
 「世界中を震撼させたアメリカ同時多発テロ事件をテーマに、世界各国から
11人の監督が結集。11作品に共通するのは『9月11日』に関し、『11分9秒
1フレーム』の長さで作品を完成させること。」

 このDVDに収録されているケン・ローチ監督による亡命チリ人のエピソードを
見せる。講義のテーマは「物事の表面だけを見るな!」

 こんな講義を続けているのだから、変わり者の先生と思われているのだろう
なぁ……。

                                   (1月27日 記す)

三菱総研にて

2008-01-21 23:50:17 | 地域防災
 午後、東京へ。

 大手町にある三菱総合研究所内で、旧知の三菱総研・野口和彦
研究理事から誘われていた研究会に参加する。野口さんとは最近は
消防庁の検討会でご一緒させてもらっている。今日の研究会は「災害
低減戦略フォーラム」の中の社会文化リスクマネジメントに関する専門
委員会。防災や危機管理についても様々なテーマがあるが、特に目標と
すべき価値について、新しいアイディアを出せないか、というもの。野口
さんは「パラダイム・シフト」という言葉を使って説明する。

 研究会の席上、久し振りに坂田俊文先生にお会いする。内閣官房の
研究会でご一緒させてもらったのが何年前だったか。1931年生まれ
なので今年77歳のはずなのだが、そのお年には見えない。ともあれ
お元気そうでなによりであった。そういえば、あの時の研究会の報告書も、
きちんとした形では世に問えていない。コンセプトとしては良いものを
出せたつもりだったが、それも骨子だけだった……。

 「パラダイム・シフト」。
 学生時代、トーマス・クーンを読んでいないと恥ずかしいというような
雰囲気があったことを思い出す。言葉は美しく魅力的だ。でも、本当に
「パラダイム・シフト」が必要なのだろうか。また、それがなければ防災や
安全保障・危機管理を語ることは無理なのだろうか。

 中学や高校への出前講座を重ねる度に気づくことがある。防災に
携わっている者の間では常識であっても、現場の先生方の常識とは
なっていないことが幾つもあること。本質から目を逸らし、本質的では
ないことに血道をあげる。そんな姿を幾つも見てきた。最先端の捜索
救助技術の開発を否定するつもりはないが、地震防災の王道が耐震
補強であることを考えれば、そして「あんな場所に家を構えるなんて……」
という事例が後を絶たない(というよりも、家を構える際に昔の地形や
地質・地盤はほとんど考慮されない)ことを考えれば、力を入れるべき
方向性は別のところにあるのではないか。そう思わざるを得ない。

 「災害は貧乏人により辛く」「金持ち死なない」という現実を百も知り
つつ、またあきらめの念の存在を十分意識しつつも、「まだ何かやれる
ことがあるのではないか」と考えることが、私たちに求められていること
だと思う。とすると……。

 議論自体は大変刺激的であったが、どこか違和感が否めない研究会で
だった。あと1回あるという。何か自分にできることはあるだろうか……。

 終了後、新宿・G事務所へ。
 G事務所(ちなみに正式名称ではない)。これから先、5年10年の
単位でモノを考えるならば、何か新しいことをやってくれそうな、そんな
サムライの集まる場所。まだ、G事務所のO野さん、O田さんの能力を
引き出せていないなぁと思うと、ちょっと悔しい。

 新富士駅に車を置いてきてあることもあり、二人のOさんと、遅れて
合流したいつものK君の3人に、素面ながらお付き合いさせていただく。
ともかく、少し時間の使い方を変えれば、かなりのことが変わる。その
ノウハウをしっかりと教えてもらわなくては。

 「ムーンライトながら」も考えない訳ではなかったが、今日は最終の
こだまで富士の仮寓へ。

                                  (1月27日 記す)

センター入試2日目

2008-01-20 23:00:59 | Weblog
 朝風呂をあび、眠気を飛ばして大学へ。朝はお茶一杯。
 いつの間にか、朝食抜きの生活が当たり前になってしまっている。
良くないことは十分知りつつ……。

 今日の仕事はタイムキーパー。主任監督者の発言は規定通りか、
正規の試験時間がきちんと確保できたか等々を確認する役。試験
監督業務の詳細について書いては差しさわりもあろうが、ともかく
気疲れすると書いても罰は当たるまい。無論、受験生本人とその
親御さんの努力・心労に比べれば、ものの数ではないが。

 「何も足さない・何も引かない」とは本学K先生の言葉だが、
言い得て妙。大学入試センターの定めた規定通り行なうということ。
まぁ、50万人を超える受験生に同一の条件で試験を受けさせようと
いうのだから、そうならざるを得ないことは十分理解できる。グチャ
グチャ言った所で何も始まらないのだから、歯車の一つと割り切り、
ともかくミスがないように努めるのみであった。

 幸いにも、担当試験室も本学全体も、大きなトラブルもなく
2日間を終えることが出来た。何せ、ミスを起こせば一発で全国区。
まずは何より。ただまぁ、受験生からの苦情の申し入れがないとは
限らないので、あと一週間くらいは様子見の感はあるが。

 終了後、O学部長と、来年度の学務についていろいろと話す。
学部長一人に何でもかんでも押し付けて……、という訳には、まぁ
いかない訳で、この春からは教務絡みの仕事が「ちょっと」増える
ようになるか、と。

 今日も近くのスーパーで惣菜など買い込み、今日は打ち上げても
よいよね、ということで、一人静かに焼酎の緑茶割り。

リスニング試験無事終了

2008-01-19 23:31:47 | Weblog
 昨夜も遅く、ギリギリまで寝ている。シャワーで眠気を
飛ばして大学へ。8時20分の全体ミーティングから19時
近くまで、休憩時間こそあれ、試験監督&関連業務。

 「(今週ならぬ)本日の山場ー」(でわかる人は少ない
だろうなぁ……)は、やはり何と言っても英語のリスニング。
試験中に何かトラブルが発生したら最初に対応しなくては
ならない役回りであったが、幸いにも受験生から手は挙がらず。
大きく胸をなでおろす。

 事務職員の片付けを手伝っているうちに21時を過ぎる。
大体片付いたのを確認して失礼する。22時まで開いている
近くのスーパーで惣菜類を買い込み、富士の仮寓へ。本日の
夕食は寿司8貫、生牡蠣&レモンに味噌煮込みうどん。味噌
煮込みうどんに入れた舞茸2パックとアスパラ6本で、少しは
野菜の補給になっただろうか……。

 何だかんだで、この日も床についたのは2時過ぎてだった。

                          (1月20日 記す)

静岡大学への出向&地域見守り隊プロジェクト

2008-01-18 23:54:29 | Weblog
 この日の朝も旅の朝。

 体の負担を考えて取った静岡駅前のホテルから出発。年に何回か
ある静岡大学への出講日。10時20分から1時間半、市民防災に
ついて話をする。工学部等のある浜松キャンパスにも学生がいて、
彼らにとっては遠隔講義となる。

 驚くべきか、悲しむべきか。考えさせられることが一つ。

 防災にせよ危機管理にせよ、自らの抱えているリスクを知ることが
対策を考えることの出発点となる。孫子曰く「敵を知り己を知らば、
百戦危うからず」。

 静岡県は、01年6月、東海地震についての第三次被害想定調査
報告を発表している。通称「三想定」。市町村別、町丁目・大字別に
「この場所ではだいたい○○くらいの揺れが起きる」ということが
HP上で確認できるのがポイント。「旅の坊主」としては、三想定を
語らずして静岡の地震防災and/or東海地震を語るなかれ、と言いたい
ところなのだが……。

 なるほどこの日の受講生は、防災を専門に学んでいる学生では
ない。一般教養に類する科目とはいえ、仮にも静岡の大学で(たとえ
1科目であろうとも)地震防災を学んでいる学生。というので「これを
見たことがありますか?」と聞いてみたが、その結果に愕然とする。

 静岡・浜松両キャンパス合わせて150名ほどの学生が受講して
いたと思うが、三想定を知っていた学生はものの見事にゼロ。これは
これは……。

 静大では来年度から、地震防災を柱に据えた新規プロジェクトを
立ち上げるのだという。この現状で大丈夫だろうか……。

 講義コーディネーターの理学部・里村先生と昼食を共にした後、
富士に戻る。14時半くらいから、地元大渕の「富士市福祉キャン
パス(知的障害児施設・ふじやま学園&障害福祉サービス事務所・
くすの木学園)」で、「ふじ児童見守り隊」のプロジェクトについての
意見交換会&今後に向けてのアイディア出し。

 場をセットして下さったのは、コミュニティ・シンクタンク富士の
太田さん。

 総務省の助成事業で、IT技術と地域ネットワークを組み合せ、
児童・生徒や障害者・高齢者を地域で見守る仕組みづくりについての
実験が全国10ヶ所で進行中という。「ふじ児童見守り隊」のプロジェクト
は、東海地方で唯一でNPOを主体としたものとしても唯一なのだとか。

 プロジェクトの話を聞くのは初めてだったが、①防犯ブザーを鳴らし
たら、警備員が駆け付けるシステムではなく、地域の人が駆け付けて
くれるような仕組みを作ろう、②児童・生徒の連れ去りや、高齢者や
知的障害者がいなくなってしまった場合でも、地域の人がすぐに対応
出来るような仕組みを作ろう、という2点で、大変興味深い取り組み
だった。

 「大渕の福祉・医療・教育を考える会」のコアメンバーであり、知的
障害者施設・静岡県立富士見学園の明石園長も同席して下さっている。
明石園長との以前からのお付き合いもあり、お手伝いすることになる。
 (うーん、ここでも自分の首を絞めているようにも思うが……。)

 明石園長とは久し振りにお会いすることでもあり、積る話もあるが、
それをやってしまうと……ということで、考える会の次回の例会に出る
ことを約束し、早々に失礼して大学へ。

 当然のことながら大学は、翌日からのセンター試験の準備で大わらわ。
まぁ、任せられるところはお任せしよう、というところで、こちらも
早々に失礼して翌日に備えることにする。
 (といっても、床についたのはいつものような時間になってしまった……。)

                                    (1月20日 記す)