「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

「防災教育のあるべき姿と地震津波防災DIG・土砂災害対策DIG」(その5)

2015-10-03 23:50:51 | 防災教育
この日は予定のない週末で、メールソフトも確認したが(返信も含め)一通のメールを出していなかった。
という訳で、根を詰めた原稿を仕上げた後の、文字通り「寝かせる」時間だった。
原稿のみならず、筆者も終日ベッドの中で、テンションを下げていた、というところ。
好調不調の振れ幅は小さいほうが良いとは聞くが、「旅の坊主」は、やはり、
締め切り効果で何とかつじつまを合わせるタイプの人間、ということ、らしい。

ここ数回分の更新でお披露目をしている防災教育についての拙稿は、
この日(10月3日)の完全オフの後、すっきりした頭で削り直した版のもの。
それゆえ、この時点でのものではないが、引き続き、ご参考まで、ということで、提示させていただく。

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防災教育の体系性(その1):時間軸と空間軸という「2つの軸」
(3)防災教育における「空間の概念」:問われるべきは「この国のかたち」

防災教育における空間の概念は、時間の概念に比べれば、より容易に理解してもらえるだろう。
「避難することが防災ではなく、避難しないで済むまちを作ることが防災」である。
全体状況を俯瞰的に見て現状と問題点を把握し、重要施設の立地の見直しを手始めに、
自然の摂理にかなった土地利用ができているまちへとその姿を変えていくこと、
そのような発想を持ちその担い手となれ、という意識付けである。

地域を俯瞰的に見ることが出来るかどうかを考えるならば、小中学生にはいささか荷が重かろう。
しかし、高等教育レベルでは当然に求められる。
現状分析の防災マップ作りは小中学生レベルでも出来る。
しかし、防災教育における空間軸の議論は、そこを出発点としつつも、
あるべきまちのかたちを追求し、かつその姿へと変化させていく担い手を育てるという意味で、
もう少し高いレベルのものである。

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大学生向け防災教育でも、防災マップ作りを行っている事例があることは百も承知。
しかし、仮にも高等教育を受けているならば、そして、南海トラフ地震の周期性を考えるならば、
発災までの時間をどう活かすかという問題意識は必須のはず。
首都直下については発生する日付はわからない、つまりは間に合わない可能性があることは百も承知の上で、
それでも、基本的な発想は「このまちをどうすればより安全なまちに変えることができるか」であり、
何ら変わるものではない。
ただ、グランドデザインの描き方がド下手だ、ということについては、
知力が追い付いていない、ということの表れではないか、と考えると、
学の世界に生きる者の端くれとしては、己が果たすべき役割を本当に果たしているのか、
そのことを考えさせられてしまうところではある……。
(まぁ、それゆえの、拙稿の披露ではあるのですが……。)

(10月13日 記す)


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