「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

安倍内閣の災害初動対応は相当低いレベルのもの!「バカな大将、敵より怖い!」と心得よ!

2016-04-15 02:03:16 | 災害
久しぶりのブログ更新がこのようなものになってしまったのは複雑なところ。

新年度初回のゼミがあり、終了後に院生・学生諸君との夕食会。
「旅の坊主」を含めて全員で12名。生産的な2時間余を過ごした後、
「さて仕事だ!」と思って研究室に戻りTVを点けたら、熊本で震度7が出た、とのこと。
震源の深さが10km、M6.4(USGSでは深さ23km、M6.0とのこと)ゆえ、
激しい揺れの範囲は比較的狭くて済んでいると思われるのが、せめてもの救い。

震度7とのことだが、計測震度での震度7ゆえ、建物被害が多く出る震度7なのか、
多くは出ない震度7なのか、そこがわからない。
スペクトルが公開されれば判断もつくが、現時点ではキラーパルス成分が弱い地震であったことを願うのみ。
建物被害が多く出る震度7の場合、「2階が1階になる」建物倒壊が2ケタ~百数十棟出ているかもしれない。
TV報道を見る限りではそこまでの被害ではなさそうだが。

全貌が把握できるのは明るくなってからだろうが、それでも、熊本県内の相互支援、
大きく見ても九州地方内部での相互支援でカバーできるレベルの被害であり、
全国規模での動員が必要な災害にはならずに済むであろう、と思う。

そのような防災28年生の初動の印象からすれば、
安倍内閣の災害初動対応は相当低いレベルのものであった、と言わざるを得ない。

以下、一般市民の感覚とはずれることとは思うが、どこがどう問題だったのか、簡単に述べておく。
ここで書くことが、後日すべて「旅の坊主」の間違った判断によるものであった、と、
謝罪せざるを得ない事態になることを願いつつ。

1 レベル感の間違い

震度7の揺れを受けた熊本市益城町の人口は約3万5千人、とのこと。
被害の全貌は明るくなってからでないとわからないとは思うが、
メディアによれば倒壊家屋数は2ケタ前半のオーダーなので
(現場の記者さんが層破壊を正しく理解しているかは大いに疑問だが)、
生き埋め閉じ込めの人数は多く見積もっても100に届くか否か、というレベルであろう。

とすれば、中央政府が非常災害対策本部を設置すべき事態かどうか大いに疑問。
少なくても「国の総力を挙げて」というレベルではない。
選挙向けに「がんばっています」というパフォーマンスをしたい気持ちはわかるが、
プロの端くれとして言わせてもらえば、いわゆる「バカ丸出し」級のレベル感の間違い。

レベル感(注:スケール感・オーダー感・規模感など表現は幾つもあろうが)を間違えているということは、
本質を見誤っているということ。これではお話しにならない。

2 災害対応は現場に任せよ!

震源情報を見れば、国の総力を挙げなくてはならない事態なのか、局地災害なのかは、すぐわかる。
今回の地震は局地災害。局地災害とすれば、周囲からの支援の投入は十二分に可能。
そして、東日本大震災を経験した日本の実働省庁であるからして、
中央政府からの「督戦」抜きでも、現場は十分動く。

この種の局地災害に際して中央政府がとるべき行動は、まずは「現場の邪魔をするな」であろう。
「念のため、現場から上がってくるであろう要望を予見し、それに応えられるような準備はしておくように」
という中央省庁に向けた指示は意味あるものとは思うが。

現場を知らない中央の素人集団が「全力を尽くせ」と言ったところで、
モラルとモラールを下げるのみ、と心得るべきである。
何せ我が国は、現場の人間に「ディスターブしないで下さい」と言わせてしまった、情けない過去を持つ国なのだから。

首相が言うべきは、
「早急に被害状況を把握すること、地方自治体とも緊密に連携をし政府一体となって災害応急対策に全力で取り組むこと、
国民に対し避難や被害等に関する情報提供を随時行うこと」、ではないと思う。

私であれば「現場の皆さんの活躍を信頼し任せている」「中央政府の支援が必要な場合は何なりと言ってもらいたい」
「被災を受けた皆さんへ。支援の手が届くまで、お互いに助け合い補い合って今晩一晩は乗り切って下さい」
と言いたい、否、言わせたい。

3 震度7強

我が国において、官房長官は中央政府のスポークスパーソンの役割を果たしている。
そのスポークスパーソンが、何とも情けない失言をしてしまった。
日本の震度階は10段階で、震度5と震度6については強弱の言葉で補っているが、
震度7の揺れは最大であり(震度8以上は存在しない)、強も弱もない。
これは、気象庁HPをはじめ、防災系の小冊子やHP等様々な場所で示されている「防災の常識」のはずなのだが、
国のスポークスパーソンにはその「防災の常識」が欠けていることを、自ら暴露してしまった。

政治家の発言には原稿があることは百も承知。
優秀な日本の官僚ゆえ、震度7強などということを書くはずがない。
その原稿を、己の中途半端な知識で良かれと思って補ったのであろうが、結果は最悪だった。

こういうド初歩のミスをやらかしてしまうと、これから先は何を言っても、
「この人は素人」「原稿を読み上げているだけ」と、現場の人間に信頼されなくなってしまう。

現場を知らないお偉いさんがわかったようなことを言うと、現場が困る。
緊急事態法制など単なるブラックジョークとして笑い飛ばさなければならないはず。
「バカな大将、敵より怖い!」なのだから。

不幸にして、この地震で犠牲者が出てしまいました。
お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆さまに心よりのお悔みを申し上げます。

防災の常識を高めなくては!

2015-05-31 23:54:10 | 災害
一昨日、昨日と、幸いにも人的被害は軽微だったものの、全国ニュースとなるような災害が発生した。
冷っとさせられたのは、口永良部島の、島の中心的な地区からもっとも離れた場所にある区長が、
住民が全員無事だという情報を伝えるべく、火砕流の危険のある場所を駆け抜けていったというもの。
(NHK総合TVでの放送を、「旅の坊主」もチェックしていた次第。)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150531/k10010098611000.html

気持ちはわからないではないが、議論の余地なく無謀の一言。
幸いにも、この方の移動のタイミングを外して噴火活動がなされたからよかったようなものの、
下手をすれば、文字通り「死なずに済んだはずだったのに……」、となってしまった。

「人数チェックの報告なんぞ、後でも出来る!」

しかもこの場合、全員揃っていた。良い情報は後回しに出来る。
島外に避難が完了した後の報告でもまったく問題ないものだった。
たとえ人数が揃っていなかったとしても、危険を冒してまで報告する必要があったかどうか、
大いに疑問とするところ。

使命感や責任感を否定するものではないが、今後の火山防災を考える上で、
「決して繰り返してはならない教訓」として、伝えていくべきだろう、と思った。

昨日の小笠原列島周辺での地震について、地震の規模と震源の深さが訂正された。
この種の訂正は当然ある訳で、驚くには値しない。
ただ、この訂正も含めて、防災の常識のレベルを高めることの必要性を改めて感じている。

最初に出る震源情報は、100%正しいとは限らないのです。でも目安には十分。
ついでに言えば、この震源の深さであれば津波は起こるか起きないか、は、ピンと来てほしい。

東京の超高層ビルで、エレベーターが停止した、という話がニュースネタとなっているが、
これは、いわゆるニュースバリューのあるものなのだろうか?
震度3や震度4でエレベーターが止まってもらっては困る、という気持ちはわからないではないが、
たとえ十分な制震装置が装備されていたとしても、揺れるものは揺れる。
それゆえ「念のための安全を考えて、点検するまでは動かしません」というのは、
施設管理者側の配慮として当然のことと思う。
もちろん、利用者側としても「当然の配慮がなされたのだな」と思えばよいだけの話。
よしんば、他のエレベーターも含めて運転を一旦停止し、階段を下ることになったとしても、
「運動不足解消だ」くらいのつもりでいれば、イラつくこともあるまい。

震度5強や震度5弱のレベルでは、鉄道の線路に物理的な被害が出るとも考えにくい。
もっとも、最大震度6弱で東名高速の盛土を持って行かれた事例もあった訳で、
物理的被害は完全にゼロだ、との保証は出来ないが、それでもまぁ、深刻な事態が起こるとは思えない。
(2009年8月11日に発生した駿河湾沖での地震。最寄ICでの計測震度は5強~6弱。
当該場所は盛土であり、例外的なものだとは思う。)

ということは、安全確認のために数時間を要することはあろうが、
物理的な破壊とその修復が必要な事態はまず起きない訳であり、
そのことをピンと来たならば、腹のくくり方はいくらでもある、と思う。

いずれ、地域安全学会等で、昨日の対応についての報告などもなされるだろうが、
メディアからの個別具体的な被害情報がなかったとしても、震源情報だけでもかなりのことがわかる。
ここで述べているレベル程度まで、日本の防災の常識を高めていくためにはどうすればよいのか。
改めてそんなことを考えている。

小笠原でのマグニチュード8.5、最大震度5強の地震発生に

2015-05-30 23:39:46 | 災害
久しぶりに土曜日夜、NHK総合TVで「超絶 凄技!」を見ていた時のことだった。
(この時間帯で見るのは初めてだったのだが……。)
小笠原で震度5強の揺れがあったとのことで、全国中継に切り替わった。
震源の規模を示すマグニチュードは8.5、震源の深さは590km(いずれも速報値)、とのこと。

昨日に引き続き、実災害の発生について、ブログで書くことになるとは思わなかった。
それはそれとして、素人さんとは一味違うものを書けるだろうか……。

で、考えてみた。
過去の経験(の蓄積)から、特に考えずともこれらの数字から読み取っているもの、
イメージしているものは何か。
そして、一般の人であれ、その数字を読み解けるようになれば、何がイメージできるようになるのか。

地震のメカニズムについては、地震学者による解説を待つこととしたい。
ただ、耳学問のレベルではあるが、あの場所(小笠原海溝周辺)でのマグニチュード8.5であれば、
太平洋プレートがフィリピン海プレートに潜り込んでいる場所(の延長上)であろう。
プレート境界での発生か、プレート内部での発生か、あるいはそれ以外かは、「旅の坊主」の知識ではわからない。
また、それらがどのような影響をもたらすのかも、わからない。

ただ、マグニチュード8.5は極めて大きな地震ではあるが、深さ500km近い場所で発生した地震ゆえ、
実害は少ないであろう、との見立ては成り立つ。

発災直後に、内閣危機管理監と防衛省出身の内閣官房副長官補が、官邸情報センターに入ったとの報道もあった。
大きな実害が出ているとは思っていないだろうし、つまりは、判断を求められる事態は起きないだろう、と思っていることと思うが、
で、多分、そのような見込みで問題ないと思うが、
それも、中央省庁の責任者が果たすべき一つの役割(機能)と言うことも出来るだろう。

個人的には、5強で情報センター入りは、しきい値が低すぎるとは思っている。
ファースト・レスポンダーでも地元市町村でもない、中央省庁も含めてが動かなくてはならないのは、
震度6強以上でよいのでは、と思っているが、まぁ、それはそれとして。

一部に例外(この場合は脆弱な場所と言うべきか?)はあるだろうが、
幸いにも、震度5強ないしそれ以下の揺れであれば、実害はほとんど出さずに済むレベルまで、
日本社会の耐震性は上がってきている

ただ、これを一つの「自己を振り返る」良き機会として、
今回はこのレベルで済んだが、これが震度6強だったら、震度7だったらどうなるのか、と、
自分の周囲を見直す機会としてもらえれば、ということ、なのだろう。

本当にたまたまの偶然なのだが、
今日午後、本学社会環境学部の1年生は、静岡県地震防災センターを訪問していた。
施設見学と地震防災啓発ビデオの視聴、
そして「旅の坊主」にとっても古くからの仲間である、地震防災アドバイザーGさんの講話、というプログラム。

1年生諸君は、Gさんの講話を聴いて、そして、今日のM8.5、震度5強の地震に、
何を思ったことだろう……。

口永良部島の噴火に

2015-05-29 23:56:24 | 災害
口永良部島が噴火した、とのこと。

メディアからの情報のみで、状況を十分把握している訳ではないが、
平素からの島外避難の準備が奏功したというのは、何よりであった。
(もちろん、奏功した要因に、避難を要する人数が少なかったということを忘れてはならないが。)

今回は仕事で出席することが出来ないが、今日・明日と、伊豆大島で地域安全学会が開催中。
伊豆大島も全島避難を体験した火山島。学会の懇親会は、全島避難論議で盛り上がっていることと思う。

火山学者でも地球物理学者でも、理学者ですらない「旅の坊主」としては、発言を慎むべきかもしれないが、
マクロな理解で言えば、東日本大震災でのエネルギー開放による間接的な影響はあったのだろう。

地震大国であるのみならず、火山大国でもある日本・日本列島である。
普段は恵みをもたらすが、時たま荒れ狂う自然とどのように付き合っていくのか。
これは、いわばこの島国の上に住む者にとって、永遠のテーマとも言うべきもの。
ただ、そのことをあまりに忘れていたのでは?

相手が自然ゆえ、帰島の見込みなど、今後のことは神のみぞ知る、となる。
そう長くないうちに帰島できることを祈るのみ、である。

うーん……。何も言っていないのに等しい。
これでは、防災・危機管理のプロのブログには値しないなぁ……。

風に立つライオン

2015-01-01 22:50:29 | 災害
新年 あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
(災害の少ない年でありますよう、皆さまと共に願っています。)

今年、最初に聞いた歌が、さだまさしさんの「風に立つライオン」でした。

2010年9月、あの震災の半年前、四半世紀来の念願が叶い、
JICA専門家として中米にコミュニティ防災の行脚に旅立つ際、
己の心情を託した曲でありました。

志を立て、長期に途上国で生活したことのある方であれば
(「旅の坊主」の1年なんぞ、長期じゃないだろうに、と、お叱りを受けそうですが)
あの歌に託する思い、わかってもらえるのではないか、とも思っています。

まさかの東日本大震災からもうじき4年になります。
その前に、阪神淡路大震災から20年の記念の日があります。
3.11の後には、地下鉄サリン事件から20年目の日もやって来ます。
そんな中、己は、風に向かって立ち続けているのでしょうか。

「風に立つライオン」は、あの時の思いに戻れ、との、天の声なのかもしれません。

まだまだ迷いの最中の「旅の坊主」でありますが、
本年もよろしくお付き合いのほど、お願い申し上げます。



小村 隆史 拝

追伸
今日2015年1月1日で、ブログ開設から3500日、なのだそうです。
でも、まともに更新していなかった時期が続いていたからなぁ……。
3ヶ月余の連続更新がもう少し続くよう、がんばります。