「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

地域防災の実践事例2例

2016-01-10 23:49:31 | 地域防災
三連休前の1月8日(金)夜、馴染みにしている富士市内の海鮮料理店「丸天」で、
昨年11月に行った富士市立富士南中学校3年生(8クラス約270名)への出前講座の打ち上げがあった。

参加者は、富士市防災危機管理課から1名、出前講座を手伝ってくれた富士市在住の地域防災指導員の方々が5名、
ホスト役の富士南中学校から学年主任のO先生、お手伝いした学生が9名、
さらにO先生の友人で富士市内で段ボールベッドの開発に携わっているSさん、「旅の坊主」も含めて18名という陣容。

地元中学校に地元の大学生が防災の出前講座を行う。
そのテーマは、2038年とも言われる南海トラフの巨大地震を想定して、それまでの間、
この町をどのようにして災害に強くしていくか、ということ。

プログラムの実施にあたっては、地域の防災リーダーが手伝ってくれている。
そしてそれを支える地元行政。
ささやかではあるが、地域防災の実践事例としてこれ以上の形は望めない、と思っている。

ただ、いつも思うことだが、これをどうやって横展開させるか&継続させるかという課題に、妙案がない。

プログラム作りは概ね標準化出来ている。だが、実施母体については一つ一つが手作りのようなもの。
今回の、富士南中学校での出前講座にしたところで、十年来のお付き合いのあるO先生がいなければ、
「旅の坊主」の力だけでは具体化出来なかった。

今後、どうすれば定例化できるのか。中身としては全国でもトップレベルの取り組み、とは思うものの、
いつもいつもゼロからの出発では、大したもの、とは言えまい。

その翌日の9日(土)は「ふじのくにDIGセミナー」の定例会。
いつものように9時半から16時半まで、地図を使いつつ、地域防災のあれこれについて議論する。

人数は午前の部・午後の部とも7名(1名の入れ替えあり)と、例によって盛況とは言い難い。
だが、わざわざおいで下さり懇親会までお付き合い下さった岐阜大のK先生曰く、「大変レアな事例」とのこと。
当事者としては大したものとは思っていないが、外部から見れば相当なもの、とすれば、
もっと大きく仕掛けてナンボなのだろうし、それに踏み込めていない己の力不足をどうやって補うかを考えるべき、なのだろう。

春からは5年目を迎える「ふじのくにDIGセミナー」である。
6年目以降を意識して少し「模様替え」も考えており、それを意識した5年目にするつもり。
有り難いことに、人数は多いとは言えないが、いろいろな良き刺激を下さる方が手弁当でも参加して下さっている。
これらの方々のお力もお借りしつつ、この人の輪をもう少し大きく深くしていかなくては、と思っている。

今宵の更新原稿は、神戸に向かう車中で書いている。
今年も1月17日がセンター試験と重なるため、あの時を東遊園で迎えることが出来ない。
せめて年一回は「あの方々に顔向けできる活動をしているかどうか」、あの場に佇み自問自答しなくては、と思っている。
この機会になるべく多くの方にお会いしてご無沙汰をお詫びしたいと思っているものの、
お会いできない方、ご容赦下さいませ。


国連安保理の非常任理事国が取るべき対応がこれか???

2016-01-06 23:03:12 | 安全保障・安保法制・外交軍事
本学では今日1月6日水曜日が仕事始め。

2限に1年ゼミ、3限に2年ゼミ、4限は月イチの学部教授会。
その後、研究仲間との新年会のため、東京にピストン。
(今宵は研究室で夜更かしモードになる見込み……。)

さて……。

NKさん(注:防衛研究所時代から筆者は北朝鮮をNKと表記していた)が、
「自称」水爆実験に成功したらしい。
気象庁で地震波を観測したのだから、何かが爆発したことは間違いないのだろうが、
日本としては大騒ぎをするほどのことではあるまいに、というのが、率直なところ。
(以下に述べるように、正しくは、騒いではいけないだろうに、と思うのだ……。)

マクロ経済的に見ても技術水準的に見ても、
NKさんがLDCレベル(下手をするとLLDCレベル)であることは、
多少なりとも国際関係を学んだ者であれば常識のはず。

軍事アナリストとして著名なある方曰く、
「日本は痩せても枯れても関脇か小結かだが、北朝鮮は『褌(ふんどし)担ぎ』のレベル。」

爆発したのが原爆か水爆かは知らないが、
子供が火遊びをして「かまって下さい!」と言っているのに同じこと。

1945年7月16日、アメリカ・ニューメキシコ州ロス・アラモスのトリニティーサイトで
最初の原爆実験が成功した。
ということで、原爆は70年前の技術。

1952年11月1日、中部太平洋・マーシャル諸島のエニウェトク環礁で最初の水爆実験が成功した。
ということで、水爆も63年前の技術。

ミサイルの弾頭に詰めるくらいに小型化に成功した、というのであればともかく、
地上か浅い地下かは知らないが(地震の震源の深さは0キロと聞く)、
爆発のためのメカニズムはどれほど重くても何ら問題ない、という状況であろう。

ということは……。

「○○年遅れですが世界水準に達したのですね。」と、冷ややかな目で見るならばともかく、
安保理非常任理事国が大騒ぎするほどの中身ではないはず。

NPT体制の脅威になるようなものであれば、NKさんの領袖による年頭あいさつの数年前に、
五大国が対応を取っていたはず。
(そして残念ながら、そのような場に我が国は立ち入ることを許されていないのだが。)

「子どもは火遊びをしてはいけないよ。」
「花火を扱うのは、もう少し大人になってからにしようね。」

我が国としては、そういうコメントをすべきだったと思うのだ。

騒いではいけないものに騒ぐとどうなるか。
我が国にとってもNKさんにとっても、そして世界にとっても、プラスにはなるまい。

日本の指導者層に戦略眼がないことを、
なんで、わざわざ、公言する必要があるのかなぁ……。

理解されやすいが欺瞞的な説明と、理解されがたいが構造的な真因と。

2016-01-05 23:47:00 | 防災学
大晦日から三が日までの4日間、例年通り実家(住民票上の住所でもある)で過ごす。

今年も、紅白歌合戦と行く年来る年の後「年の始めはさだまさし」を見て、「風に立つライオン」を聞く。
医療人に限らず、国際協力に携わった経験を持つ者であれば、涙なくして聞けない名曲。
昨年の年始には、同名の小説について触れた記憶がある。今年も、そんな年の始まりとなった。

4日、仮寓のある富士市の戸田書店富士店に行く。今年最初のリアル書店での買い物。
丸善やジュンク堂、紀伊国屋や三省堂といった大御所に比べれば、
売り場面積も少なく品揃えにも限度がある戸田書店富士店だが、それなりのものはあった。

今年最初のリアル書店での買い物は以下の3冊。

・松元崇『持たざる国への道:あの戦争と大日本帝国の破綻』(中公文庫)
・飯島周『カレル・チャペック:小さな国の大きな作家』(平凡社新書)
・瀧野隆浩『沈黙の自衛隊:知られざる苦悩と変化の60年』(ポプラ新書)

(買うのは良いが単に「積読」を増やすのみでは、との声もあろうが、それはそれとして。)

松元崇なる人物。このような人物がいることを知らなかったとは、ひたすら不明を恥じるのみ。
天才的な頭脳の持ち主はいるのだなぁ、と、思わざるを得ない。
国公試上級と司法試験に同時に合格し、大蔵キャリアとしては主計官、主計局総務課長を歴任、
最後は内閣府事務次官まで上り詰めるが、その激務の間にこの本の原型を書かれた、というのだから、
ものすごい御仁である。
(わずか11歳違い。一体、己は何をしているのやら、と言わなくてはなるまい……。)

今日の更新のタイトルは、日本近代史がご専門の加藤陽子女史による、松元氏の著書への解説から拝借したもの。
(加藤先生は「旅の坊主」とわずか3歳の違い。この差は何だろう……。)

リアル書店の良いところは、立ち読みでも「はじめに」「おわりに」「解説」程度や読める、ということ。
で、加藤先生による解説に、このような表現があったからこそ、買うことを決めたと言って良い。

「理解されやすいが欺瞞的な説明に飛びつき、理解されがたいが構造的な真因に耳を貸さなかった国民と、
国民に正直でなかった国家の関係はいかなる顛末を迎えたのだろうか。
(中略)
国民に正直でなかった国家は、その国家自らが死活的に重要な場面でいざ合理的な判断を下そうという段になった時、
もはやそれを許さない国民の反対にたじろぐことになる。」
(同書解説、301頁)

松元氏曰く。
「(本来戦う必要のなかった米国との大戦争に突入し国土を焼野原とされて敗戦を迎えたという)歴史を繰り返さないためには、
経済合理性を大切にすることと、
それを可能にする常識的な議論が行える土壌を創り上げ、守っていくことが必要だというのが筆者の考えである。
何よりも我が国に欠けているのは、何が正しいかが明らかでない事態において、
より正しい結論に達するために忌憚ないディベートを行う習慣であり、
そういった場合にコモン・センスを大切にする姿勢であろう。」(14頁)

さて、「旅の坊主」の危機管理・防災論議は、
加藤先生がおっしゃられるような「理解されがたいが構造的な真因」に迫るものであろうか。
また、松元氏が述べておられるように、コモン・センスを大切にしているだろうか。

大きく外れてはいないだろう、とは思っているものの、何せ、文章にまとめたものが少なすぎる。

例年に増して、その大きな課題への取り組みが、今年は求められている、と思っている。
そんなことを再確認した、今年最初のリアル書店での買い物だった。

あけましておめでとうございます。

2016-01-04 23:25:33 | 日常の一コマ
あけましておめでとうございます。
いささか遅まきながらですが、新年のご挨拶を申し上げます。

昨年10月の中旬だったでしょうか、ちょっとガス欠気味&緊張感が切れてしまい、
1年以上続いていた拙ブログの連続更新が途絶えてしまいました。

昨年12月、数年ぶりに再会した友人から、
「最近、ブログ更新していないの?」「辛口のコメント、期待しているよ」と言われ、
やっぱりこれは、再開しないと、というように思うようになったものの、
日常に追われ、いつの間にか新しい年を迎えてしまった、そのような状況です。

年の初めは新しいことに取り組むには相応しいようで、
このタイミングに、(何度目かの)再開をしようではないか、と思いを立てました。
とはいえ、連日更新を行える状況には戻れそうにありませんので、
週2回くらいのペースで、その分、しっかりと続けられれば、
そのようなことを思っている、東日本大震災5年目を迎えようという年の始めです。

次回の更新からは、いつもの「である調」に戻り、危機管理・防災ネタで、
いろいろとお話しをさせていただければ、と思っています。

改めて、どうぞよろしく、お願いいたします。