「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

首都直下の地震をイメージさせる災害図上訓練DIGの方法論について(その3)

2017-09-19 23:44:08 | 首都直下地震対策
2 震度6強の揺れが何をもたらすかをしっかりイメージしよう&イメージさせよう

メカニズムがわからない以上、本来は地震の規模も予測がつかない、であるはず。
ではあるがまぁ、1855年の安政江戸地震を念頭に置き、M7級つまり震度6強はある、
と考えておくべきだろう。
周波数成分も細部はわからないが、東日本大震災のように、
いわゆる「キラーパルス成分」(注:木造家屋と共振し倒壊を起こしやすい周波数。1~2秒と言われている。)
が小さくて済むとは期待しないほうがよいだろう。

という訳で、やはり、首都直下地震の被害様相をイメージする上で最も有用な参考資料は、
やはり22年半前の阪神淡路大震災になるだろう。

今回も、阪神淡路大震災の被災様相のイメージ作りには、
在神戸のUHF局「サンテレビ」による15分モノの記録映像のお世話になった。

この映像、入手したのは比較的最近の話なのだが、この映像は素晴らしい。
モノを考えるための数多くのヒントがこの中に盛り込まれている。
知っている限りでは、この映像が最も説得力&イメージを喚起する力を持っているのではないか、
と思っている。

激震地はこうなる。しかし、首都圏全体がこうなる訳では決してない。
どこが激震地になるかはわからないが、でも、周辺には社会的機能を維持できている場所が必ずある。
そこにいたら、しっかりと支援の手を差し伸べられるような、そんな腹積もりは持っておいて欲しい。

この辺りが、地図を囲む・囲ませるに当たり、参加者に発するべき「防災の物語」なのだろう、
と思っている。

首都直下の地震をイメージさせる災害図上訓練DIGの方法論について(その2の続き)

2017-09-18 23:42:15 | 首都直下地震対策
1 この地震の特徴は良くわからない、と断言すること。
と同時に、わかっていることからすれば、首都圏全域が全滅するという状況はあり得ないということ。
つまりは支援に回り得る側(回ってもらわなくてはならない側)もある、ということ。
ただし、どこが激震地であり、どこが支援に回る側になるかは、起こってみなければわからないが。

首都直下の地震をイメージさせるDIGが語るべき「防災の物語」3本柱の1として
上記のことを述べた訳だが、もう少し続きがある。

先に、首都直下地震の全体像理解(マクロ理解)のためには、
1/5万の縮尺の地図×A0版横置き×田の字型の4枚で示すと良い、と述べた。

この縮尺であれば地図上の1cmが2kmになり、紙地図を見慣れているプロであれば距離のイメージがしやすい。
また、元気な人であれば地図上の10cmを1時間で歩くことが出来る、というイメージを、見ている人に持たせることも出来る。
さらに、先に触れた「激震地orその周辺」については、
A4横置き×縦2枚×横3枚、の6枚をテープでとめたものを用意し、これを、任意の場所に置いた時、
○○は紙の下に隠れる(≒震度6強ないし震度7の激震地)が、その周囲にある△△は社会機能を維持出来るだろう、
というマクロ理解を得ることが出来るだろう。

首都直下地震については、十数パターンの震度分布が示されているが、これらとて根拠があっての話ではない。
であれば、

「どこに断層があるかはわからない。わからない分、いろいろなパターンを考えておこう。
サイコロの出方によっては激震地になるかもしれないし、支援側になるかもしれないが、
首都圏全域が全滅という事態はあり得ない。
激震地周辺の震度6弱以下の地域が、しっかりと激震地を支えない限り、
この地震についての有効な支援活動は覚束ない。」

という、全体的な理解を示しておくことが求められているのではないか。

さて、私はこのように考えているのだが、
「小村さん、あんたの理解は間違っている!」とは言われたくないが(そこまでひどいものではないだろう)、
「小村さん、あんたの理解は浅い!」と突っ込んでくれる人、どこかにいませんか?

「首都直下の地震をイメージさせる災害図上訓練DIGの方法論について」(その2)

2017-09-17 23:52:14 | 首都直下地震対策
このテーマを扱うプログラムには(少なくても)3本の柱が必要だ、と思う。
まずは1つ目の柱から。

1 この地震の特徴は良くわからない、と断言すること。
と同時に、わかっていることからすれば、首都圏全域が全滅するという状況はあり得ないということ。
つまりは支援に回り得る側(回ってもらわなくてはならない側)もある、ということ。
ただし、どこが激震地であり、どこが支援に回る側になるかは、起こってみなければわからない。

地震発生のメカニズムにも複数の説があるくらいだから、
規模も発生時期も当然のことながらわからない。
ただ、いつ起こっても不思議ではない、とは言われている。
「地震大国日本」ゆえ、それはそうだろう、と「旅の坊主」も思っている。
規模もわからないと述べたが、M7級はある、と覚悟しておくべきだろう。

地震学者ではない「旅の坊主」には、
松田式(注:断層の長さとマグニチュードの関係を示す経験式)を十分に使いこなす能力はない。
ただ、耳学問をさせてもらったこの関係式、モノを考えるのに大きなヒントにはなる、とは思っている。

この点については、直接お会いしたことはないが、アウトリーチ活動を積極的に展開していると聞く
慶応義塾大の大木聖子先生であれば、何とかうまく説明してくれるのではないか?と期待している。
あるいは、面識もある名古屋大の山岡耕春先生に直接お願いしたほうが早いかもしれない。
ともあれ、立っていられない激しさの揺れの継続時間から、
震源となる断層の長さ(そして地震の規模)を、ある程度の精度で、ではあるが、
直後で、かつ震源に関するメディアからの情報がなくても、
体感情報だけでも、ある程度の予想は出来るはず、程度はわかっているつもり。

断層の周囲に「つぶれたハンバーガー状(パテが断層)」あるいは
「細長いホットドッグ状(ソーセージが断層)」に震度分布が拡がることになる。
地震学者がM8に近いモデルを提示していないことからして、メカニズムは良くわからないが、
地震の規模はM7の前半程度は覚悟しておくべき、と彼ら彼女らも言っている、ということだろう。

とすれば、断層の長さは概ね30km~40km、つまりは、
そこを中心とする「バンズ」分は震度6強(ないし震度7)の揺れを覚悟しなくてはならないが、
その外側は震度6弱以下で済む。
ということは、基本的な社会機能はギリギリ維持できるということを意味する。

この震度6弱の範囲に住む人々が「私達は被災者なのだから!」などと言い始めた日には、救える者も救えなくなる。
もちろん、ほとんどの者にとって震度6弱の揺れは初めての経験だろう。
だから、自分の経験を絶対視してしまう危険性は大変高い。
それゆえ、知識ベースとして、「周りで家がバタバタ倒れているような状況でなければ、
もっと酷い場所があるかもしれないと思ってくれ!」ということを、
徹底的に教え込まなくてはならない、と強く思った。

うーん……。書き始めると、すぐに文字数が多くなってしまう。
この文章のくどさからして、「旅の坊主」自身、まだ良く理解していない、ということなのだろうが……。
それでも、この種の説明にぶつかったことがないのはなぜ?私はよほど不勉強か?

続きは次回以降で。

首都直下の地震をイメージさせる災害図上訓練DIGの方法論について(その1)

2017-09-16 23:55:08 | 首都直下地震対策
15日(金)夜、東京・御茶ノ水の損保会館にて、
損保協会主催による防災リーダー講座 in TOKYO(東京防災講座)の一環として、
首都直下の地震をイメージさせるDIGを行った。

首都直下の地震(南関東直下の地震?名称は問題ではない)対策という課題、
重要性は百も承知の上で、どこからどう手をつけたものやら、手を出しかねているところがあった。
幸いにも8月中に2回、東京消防庁災害時支援ボランティアのコーディネーター
(注:相応の研修は受けているという意味)フォローアップ研修の講師を務める機会をいただき、
「多分、この辺りではないか」というDIGをぶつけてみることが出来た。

今回は、この2回を経験を踏まえ、首都直下の地震(とそれへの対策)をイメージさせるための
DIGパッケージのいわば概成形のお披露目、となった次第。

与えられた時間は2時間30分。
通常は6時間を要するDIGだけに、かなりの努力はしたものの、やる側としても相当の駆け足であり、
参加者に消化不良感&もやもや感を抱かせたままで終わってしまった感は否めない。
その不完全燃焼感が次に繋がればよいのだが。

ともあれ、それでも「このテーマでDIGをやるならこうだ!」という十分な手応えがあったことは嬉しい。
これからは、これで行ける!
これから先、このテーマに取り組むに当たり、恐れることはなくなった。

今回のDIGで特筆すべきは、住宅地図メーカー「ゼンリン」特製の、
首都直下の地震対策用に特化した地図を作ってもらえたこと。

マクロな全体状況把握用は5万図で版面はA0版×4枚(横長の田の字型)。
ミクロな地域密着型災害対策検討用は1/1500で版面はA0版。

しっかりと写真を撮ることを忘れていたため、この場で示すことが出来ないのが大変申し訳ないが、
多分、このマクロとミクロ、この縮尺の2つの地図を同時に使いつつ、
被災イメージや支援イメージ作りを行う、というのが、首都直下地震対策の基本になると思った。

この課題、先行の取り組みは幾つもあるはずなのだが、あまりパッとするものを聞いたことがない。
今回のパターンがどこまで知名度を得られるかはこれからの努力次第だが、
この地図の出来は、モノを考える&考えさせる材料として、大変素晴らしいと思う。
作成に携わったゼンリンさんとスポンサーである損保協会さんには、ただただ感謝の一言。

(その2につづく)


後期授業開始の朝に……。

2017-09-15 23:57:17 | 安全保障・安保法制・外交軍事
今日9月15日は、本学(常葉大学社会環境学部)の後期講義の開始日。

1、2限「防災実習」という、人前で話す訓練をひたすらさせる科目、
3限は「災害医療システム」という、大規模災害時の医療救護活動を支える
社会のシステムのあり方を考えてもらう、という科目。

かつ、今日の夕方、東京・御茶ノ水で2時間半、
損保協会の主催による全4回の防災セミナーで首都直下の地震を想定したDIG。

日本で地域防災を考える上では極めて重要な課題ではあるのだが、
あまりに難しく、取り組みを避けていたのがこのテーマ。
ではあるが、東京消防庁の関連イベントで、このテーマを2回考える機会をいただき。
今夕のセミナーは滞りなく、というよりも、大変多くの手応えを得て終えることが出来た。

で、本当は、これらのことについてしっかり語りたいし、一両日中には情報発信をしたいと思っているが、
今朝方、北朝鮮が弾道ミサイルを発射してくれたもので、そのことに触れない訳にはいかないだろう。

北朝鮮単独で考えれば、核兵器がなければ
(決して品の良い表現ではないのだが)「ふんどし担ぎ」のレベルの国。
マクロ経済から見ればよくわかる。

ただ、かつてより北朝鮮の後ろ盾となっていたソ連(現ロシア)と中国の事情、
特に「緩衝地域は不可欠と」いう地政学な条件からして、
(表向きはともかく)中露が北朝鮮に核ミサイルの開発中止を求める必然性はない。
何せ、彼らからすれば、アメリカも日本も潜在的な敵国、なのであり、
中露に向けてミサイルを発射する可能性はゼロなのだから。

(その意味では、グアムを含むアメリカに向けて発射する可能性も、
そうは高くないのだろう、と思いたいところではある……。)

20年以上前であれば、「外科的手術(重要施設のピンポイント爆)の可能性もあったかもれないが、
今となっては、時、すでに遅し、である。ということは……。

日本にとっては甚だ考えたくない状況であろうと、目をつぶらず、どう対応すればよいのか。
本気で考える必要がある、ということ、なのだと思う。

残念ながら日本という国が「極めてきつい口調で」何と言おうとも、
相手は核兵器&核ミサイルの開発を取りやめることはないだろう。
(何せ、中露にとっては、北朝鮮の核ミサイルが自国に向けて飛んでくることはないのだから。)

日本に対して敵対的感情を持っている近隣の国が、核兵器搭載可能なミサイルを持つに至る。
そのような国と、どのように付き合えばよいか?

この問題を考える上でのキーワードが一つある。
「ネガティブ・ケイパビリティ―」

考えたくない状況であろうと「◎◎すればそれだけでOK!」などという安直な答えを求めず、
「もやもや感」は山ほどある中途半端な状況に耐えつつ「不都合な真実」と向き合うこと。

今日現在の日本に求められているのは、騒ぐことではない、と思うのだが……。