「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

防災学とは何だろうか(その2)

2014-12-26 23:55:20 | 防災学
12月26日。この日は2004年にインド洋大津波が発生した日。

スマトラ島の北西端バンダアチェに入ったのは翌2005年2月下旬のことだったが、
文字通り言葉を失ったことを覚えている。
それから6年3ヶ月後、東北地方の太平洋沿岸が同じような状況になるとは、
その時は思ってもいなかったが……。

それにしても、あれから10年も経ってしまったとは、まったく思えないような、
時間の流れの速さであった……。

たまたま見ていたNHKの21時のニュース。
今年の最後の放送だった、ということもあるのかもしれないが、
また、こちらが防災の目で見ていたからもしれないが、
本当に防災についてのプログラムが多かった。
広島での土砂災害、山梨の豪雪災害、三陸鉄道再開、
そしてインド洋大津波のバンダアチェやタイ・プーケットからの映像……。

現象としての災害は、東日本大震災以降の、受け取る側の感度向上もあろうが、
今日を生きる我々にとって、不幸なことだが、より身近なものになってきている。

そして被害の大半は、ちょっとした知識があれば避けられたもの。
私達防災学に携わっている者は、私達の中では常識だが、世の常識にはなっていないもの、
あるいは、世にはびこっている間違った常識を修正するため何ができるのか、
もっと効率的な方法に取り組まなくてはならないのだろう、と、改めて思う。

自然には勝てないし、勝てると思ってもいけない。
それは21世紀の日本においても、基本的なスタンスとして持ち続けなければならないだろう。

リスクをゼロにすることも出来ない。
原理的には、しかるべき額を投入できれば、実質的にはリスクをほぼゼロにすることは可能。
しかし、そのような財政投入が出来ないがゆえに、実質的なリスクゼロ生活は厳しい。
という訳で、先日の四日市での話ではないが「リスクとの共生を学ぶ」のが
防災学の基本的な目的となる。言葉をかえれば、自然との共生とも言える。

日本で防災学を考える際、幾つかの不幸があったと思っている。
その一つは、自然を理解することと、その自然と共生する方法を理解することは、違うということを、
しっかり使い分けられなかったこと。

地震や津波のメカニズムを理解しても、地震や津波のリスクと共生する方法を理解したことには、
実はならないのだ。少なくても、両者の間には、かなりのギャップがあり、
独力でそのギャップを理解し、かつ、それを乗り越えられる者は、かなりの少数派にならざるを得ない。

そして、前者については多くの教科書のページが割かれていても、
後者についてはほとんど知られておらず、また、教えられてもいない。
やられているのは、防災訓練という名の避難訓練。

こういうような、そもそも論まで立ち戻った上で、
防災学とは何か、リスクとの共生を学ぶとはどういうことか、
誰かが、説いていかなくてはいけなかったのだろう……。

これから先、「旅の坊主」は何をなすべきか。
これから先の10年なり20年なりを考える、そんな冬休みになりつつある。


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