「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

『津浪と村』熟読玩味中

2017-03-16 13:32:10 | 防災学
海外で活躍する知人友人と旧交を温めると共に、新年度に向けた己の立ち位置を確認すべく、
短期間だがプノンペンとシェムリアップを訪ねる旅に出ている。
その旅の荷物の中に、今回も山口弥一郎『津浪と村』(石井正己・川島秀一編、三弥井書店、2011年)がある。

ご存じのない方のために簡単に説明しておくと、田中館秀三に地理学、柳田国男に民俗学を学び、
半世紀以上にわたって三陸海岸の津波研究を行ってきた方。
津波の記憶が薄れないように、三陸海岸を「津波常習地」と呼んで、
人命をまもるための研究と実践に生涯をかけた人、とある。

(『津浪と村』はもともとは昭和18年1943年の刊行。
上記の説明は、同書巻頭の、編者石井正己氏による、『津浪と村』を復刊するのか、の一節を元にした。)


平成と共に社会人生活が始まり、同時に防災研究に取り組み始めたので、防災28年生にはなる。
しかし、その間、読むべき資料&会って話を聞くべき人の多さに比べ、どれほどのことが出来たのか、
と、そのインプット・アウトプットの比の悪さが、どうしても気になってしまう。

旅の間、ふと気になり、東日本大震災7回忌時点でキーワード検索をかけて見たところ、2564冊のヒットがあった。
積読レベルで十分というものも少なからずあるだろうが、
当方も大学教員の端くれ、しっかり熟読玩味し、常時頭の中をメッセージが巡っているような著作をどれだけ持てているか、
この点が問われている、といつも思っている。

話が横にそれた。

手元に『東日本大震災詳細津波地図』こそないが、ホテルのネット環境がすぐれており、
地理院地図もgoogle mapもストレスなく使うことが出来る。
で、何度となく目は通していたものの、熟読玩味とはとても言えない読みしか出来ていなかった『津浪と村』に、
大変遅まきながら、書き込みもしっかりしつつ取り組んでいる。

本で取り上げられているかなりの場所は、現地踏破の旅の中で複数回訪問している。
それゆえ、多少の土地勘はあるし、PCの中に残っている写真という手掛かりもある。
それにしても読むのにかなりの時間を要している。
本を読む「体力」が落ちた、という実感はないので、この本が持つ力ゆえ、ではあろうが。

新入生諸君は、大学入学までの間、本を読む習慣をどこまで身につけてきた上で、今に至っているのだろうか。
『津浪と村』は、新入生にはちょっとハードルが高いかもしれない。
ではあるが、3年生になり、本気で学ぼうと思っている学生(ゼミ生と呼ぶべきだな)には、
やはり必読書にしなくてはならないだろう、と思っている。

同僚の研究室でもみかけるこの『津浪と村』。
我が同僚諸兄は、また、我が防災仲間達は、この本をどのように読み込んでいるのだろう。


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