TABI天使日記

天使になったカナダのアジリティ犬と、ママ・パパの日常

Still Life

2015-08-15 16:07:48 | その他
死者たちのほうが、生きている連中よりも心やさしい。

エンディングがパワフルで、私にとって忘れられない映画の一つになると思う。

日本では「おみおくりの作法」というタイトルで上映されたらしい、イギリス映画。
孤独死した人の遠縁を探したり、葬儀を仕切ったりするのが仕事の、ロンドン市の民生係が主人公。びっくりしたのは、日本で言えば無縁仏なのにちゃんと国のお金で葬儀までやってくれるって話。遠縁が見つかった場合は、葬儀に来るための交通費まで国が出すんだ。さすが福祉国家、イギリス。

笑ったのは、孤独死したおばあちゃんのアパートで身の回り品を整理してたら「ママ、素敵な贈り物をありがとう。スージーより」っていうカードが見つかる。娘がいるんだ!と思ったのもつかのま、実はスージーとはおばあちゃんが飼っていた猫の名前と判明。カードは、孤独なおばあちゃんの自作自演だったのだ。彼女の死も、飼い猫スージーが外に出てきたのを近所の人がいぶかったのがきっかけで発見されたのだった。

監督のインタビューを読んだが、彼はこういう仕事をする民生係についての新聞記事を読んで印象に残り、脚本を書いたのだそうだ。実際にロンドンの民生係30名ほどに話しを聞き、仕事に同行もしたらしい。監督は離婚以来、自分も一人暮らしで世間とコンタクトのない生活をしてきたので、孤独死は他人事ではなかった。そういう背景があるから、話がよく練れている。

主人公は真面目で、孤独死した人に思いやりをもってせいいっぱいのお見送りをするのだが、「経費を使いすぎる」と上司に怒られ、クビになっちゃう。「葬儀は生きている遺族のためにやるんだ。孤独死した人の葬儀には誰も来ないんだから、なにもする必要はない」と、上司。確かにそうなんだけどね、葬儀は生きている人が心にケジメをつけるための儀式。だけど、この上司も自分はアウディに乗ってるくせにケチ過ぎるよ。

しかし主人公の普段の食事があまりに質素なので、驚いた。まあイギリスにはウマイものはなんにもないし、一般のイギリス人ってほんとに質素なものしか食べないけどね。あれで病気もせず生きていけるんだから、丈夫なんだ。

終わりのほうは、Stranger Than Fiction を思い出させる。でもハリウッド映画は無理やりハッピーエンドに持っていくけど、こっちはイギリス映画だからやっぱ違う。音楽は、監督の元奥さんが担当していて、これも印象的。


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