なつかしい匂い

犬と散歩をしていて、なんとなくなつかしい匂いに遭遇。

雨の匂いだ。
昨日に続き今日も、小雨。ずっと降っているわけじゃないが、空気は湿っている。
昨年こちらに越してから、こんなふうに雨が続くのは初めて。いつもカラカラ
に乾燥した空気のため静電気に悩まされるのに、今日はしっとりしている。

この湿った空気とどんよりした灰色の空、去年まで住んでいたカナダの街を
思い出させる。春先の２、３ヶ月間は、こんな風にグレーの寒い日ばかりだった。
自殺者数が増えるのも、真冬に次いでそういう季節が多かった。なんていやな
気候だろう、お日様がなつかしい、と空をあおいではため息をついていた。
カナダを観光で訪れる人たちは夏のいい季節（または真冬にスキーとか）しか
見ないので、「カナダはいいところですね」なんて言う。いいところかどうかは
年間を通して気候の変化を体験しないとわからないものだ。

だがそんなうっとおしい雨の匂いも、今ではなぜかなつかしいと感じる。
人間というのは勝手なものである。