<国立民族学博物館>
地霊(ゲニウス・ロキ)とは、
大地に宿る霊的な存在であり、
「土地の精霊の親玉」とでも呼ぶべき土着霊です。
細かくいえば、国津神が現れる遥か以前から、
その場所に宿っていた古い精霊であり、
国津神がその地に鎮まってからは、
神に仕える眷属神としての
役目を果たしてきたのでしょう。
よって、純粋な「神」とは一線を画す部分もあるのですが、
ややこしくなるのでこのまま話を進めることとして、
実は「鹿」という動物には、「地霊(ちれい)」
を表すという説が存在していたのでした。
それらの話を元に考えると、佐用都比売神社の
「鹿の腹を裂いて血を取る」という伝承は、
「地霊の力を奪う」あるいは「地霊の力を味方につける」
という意味にも受け取れますね。
恐らく、賛用都比売命の田植えの逸話は、
賛用都比売命が地霊の許しを得た上で、
その土地の支配権を譲られたことを
表しているのかもしれません。
ちなみに、東北地方などで盛んに行われる
「鹿踊り(ししおどり)」という舞は、
主に「地霊鎮め」を目的として行われると聞きます。
そして、その大元には「供犠的性質」つまり
生け贄の記憶が引き継がれており、
死者の供養のために舞われることも多いのだそうです。