<別府狭>
三種の神器のひとつ「草薙剣」は、
もともと「異民族の武器」でありながらも、
スサノオにより国津神の御魂が宿され、
最終的には天津神が所持する神器となりました。
言うなれば、草薙剣には大陸系の神霊と日本固有の神霊、
そして天津神系の神霊とが混在し、
複雑なエネルギーを放出していたのでしょう。
それに対し「八咫鏡」は、
天照太御神の御魂が宿る天孫族の象徴であり、
純粋に神の依り代として作られた
銅製(もしくは石製)の神器です。
つまり、中山神社の主祭神を「剣(オオナムチ・金山彦神)」
から「鏡(鏡作神・石凝姥命)」へと差し替えることは、
国津神から天津神への権力の移行を示すだけでなく、
「鉄」が日本を席巻する以前の「古い日本」を
取り戻そうとする意図を感じさせるのですね。
恐らく、中山神社・石上布都魂神社・倭大国魂神社に、
鏡・剣・勾玉という神器の形代を一直線に並べることで、
ヤマトへと続く海の玄関口である「播磨灘」に、
国難を防ぐための霊的な結界を張ったのだと思われます。
そして、それらの中心的役割を果たしていたのは、
美作(吉備)周辺でオオナムチを奉斎し、
同時に剣山の南麓で独自の祭祀を行っていた
物部系の一族だったのかもしれません。