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寡黙堂ひとりごと

詩吟と漢詩・漢文が趣味です。火曜日と木曜日が詩吟の日です花も酒も好きな無口な男です。

唐宋八家文 韓愈 後十九日復上宰相書(二ノ一)

2013-06-01 08:41:14 | 唐宋八家文
後十九日復上宰相書
二月十六日。前郷貢進士韓愈、謹再拝言相公閤下。向上書及所著文、後待命凡十有九日。不得命、恐懼不敢逃遁、不知所爲。乃復敢自納於不測之誅、以求畢其説、而請命於左右。
 愈聞之。蹈水火者之求免於人也、不惟
其父兄子弟慈愛、然後呼而望之也。將有介於其側者、雖其所憎怨、苟不至乎欲其死者、則將大其聲疾呼而望其仁之也。
 彼介於其側者、聞其聲而見其事、不惟其父兄子弟之慈愛、然後往而全之也。雖有所憎怨、苟不至乎欲其死者、則將狂奔盡氣、濡手足焦毛髪、救之而不辭也。若是者何哉。其勢誠急、而其情誠可悲也。

後十九日復(ふた)たび宰相に上(たてまつ)る書 (二ノ一)
二月十六日。前(さき)の郷貢(きょうこう)の進士韓愈、謹んで再拝し相公閤下(こうか)に言(もう)す。向(さき)に書及び著すところの文を上り、後命を待つこと凡そ十有九日なり。命を得ず、恐懼するも敢えて逃遁(とうとん)せず、為すところを知らず。乃ち復た敢えて自ら不測の誅を納(い)れ、以ってその説を畢(お)えんことを求めて、命を左右に請う。
 愈これを聞けり。「水火を踏む者の免れんことを人に求むるや、惟だその父兄子弟の慈愛にして、然る後に呼びてこれを望むのみならざるなり。将(は)たその側(かたわら)に介する者有らば、その憎怨(ぞうえん)するところと雖も、苟(いやしく)もその死を欲するに至らざる者あらば、則ち将(まさ)にその声を大にして疾呼(しつこ)し、そのこれに仁あらんことを望まんとするなり。
 彼(か)のその側に介する者も、その声を聞きてその事を見れば、惟その父兄子弟の慈愛にして、然る後に往きてこれを全うするのみならざるなり。憎怨するところ有りと雖も、苟くもその死を欲するに至らざる者ならば、則ち将に狂奔(きょうほん)して気を尽し、手足を濡らし、毛髪を焦がし、これを救いて辞せざらんとするなり」と。是(かく)の若(ごと)きは何ぞや。その勢い誠に急にして、その情誠に悲しむべければなり。

郷貢 州県長官が選抜した進士。 逃遁 逃げること。 憎怨 憎み怨む。 疾呼 激しく呼び立てること。 

二月十六日。前の郷貢の進士韓愈、謹んで再拝し、宰相閣下に申し上げます。さきに書面と自作の文章をさしあげましてから、ご返事を待つこと十九日になります。ご返事がいただけませんので、無礼者めとお叱りを畏れながら逃げ出すこともできずこうして復た敢えてお咎めを覚悟の上で自分の考えを申し上げて左右の方たちのご返事を待つことに致します。
私はこのように聞いております。「水に溺れ火に焼かれている人が助けを求める場合、肉親を呼んで救助を求めるでしょうか、もし側に人が居れば、たとえ日ごろ憎み怨んでいる者でも、死ねばよいとまで思われていなければ、大声を上げて叫び、助けてくれることを願うものであります。側にいる人も、その声を聞き差し迫った事態を見れば、父兄子弟の情を持つ人に限らず駆けつけて助けようとするでしょう。死ねばよいと思っていない相手なら、懸命に走り寄って、手足を濡らし毛髪を焦して救い出さずにおかないものです」と。
これはなぜでしょうか。事態が切迫していて相手があまりにも可愛想だからであります。

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Unknown (Hicks)
2013-06-01 17:41:58
いちばん好きな「唐宋八家文韓愈後十九日復上宰相書二ノ一」
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