鼠喰いのひとりごと

DL系フリーゲームや本や映画などの感想を徒然に

妄想代理人

2005-05-30 14:20:37 | 映画(アニメ)

「妄想代理人」
WOWWOWオリジナルアニメ 2004年
DVD 全6巻
原作、総監督: 今敏
声優: 能登麻美子、桃井はるこ、阪口大助、飯塚昭三、関俊彦


***

何かに追い詰められたとき、
「今この瞬間、世界が終わっちゃえばいいのに」
そう思ったことはないですか?

これは、そういうお話です。



あらすじ。

人気キャラクター「マロミ」の産みの親であるデザイナー鷺月子。
彼女は内向的で自分の世界に閉じこもりがちな性格だったが「マロミ」がブレイクしたことで一躍「時のひと」に。
所属事務所からは、マロミを越える新たなキャラクターを早く作ってくれという強い希望も出ており、思うようにデザインが進まない彼女は精神的にも追い詰められることとなる。
そんな中、夜に一人で帰途に着いた月子が何者かに襲われる事件が。
金属バットにローラーブレードを履いた少年に襲われた…その月子の証言が全ての始まりだった。
月子を追い掛け回していたブン屋、優等生であることに行き詰まりを感じていた小学生、二重人格に悩むOL…次々と被害者が増えていく中で、犯人は誰からともなく呼ばれはじめる。
犯人は…「少年バット」



途中でお遊び感覚の表現が入ったり、直接ストーリーには関係の無い話が挟まったりと、
いかにも深夜枠で放映されていた作品らしい仕上がりのように感じましたー。
ことに、後半になると、アニメ製作者側を舞台にした身内ネタ(しかもブラック)のような話もあったりして、その業界裏側を知りたいひとには面白いかもしれません。

前半は、それぞれの「少年バット」の被害者たちが襲われるまでの、精神的に追い詰められた様子を描いており、後半は謎解き部分。
いわゆる「まっとうでない」犯罪に四苦八苦するオジサン刑事はいい味出してます。
それとは逆に、若手刑事はバーチャルな犯罪意識にさほど抵抗がなくて、そこに二人の世代の相違が感じられてみたりー。

ただ、最後から少し前のあたりの数話は、息継ぎ話(っていうか…なんていうの?本筋と関係なく挟まってちょっと間をとる話?)にしてはくどくて長くて(汗)正直「中だるみ」を感じてしまいました。
中でも、団地主婦の話は特に、ストーリーにメリハリが無くて見ていて辛かった。
もうちょっとなんとかならないかな、このへん。

でも、全体としては面白かったっす。
ことに、ラスト2話で色々明らかになる場面では、それまでのダラダラっぷりが嘘のような盛り上がりでした。オジサン刑事が妙に格好いいし♪

また魅力のひとつは「音楽」
このアニメのオープニングは物凄く印象的です。曲も映像も。
やけに爽やかに不気味な歌詞を歌い上げる主題歌に乗せ、
(初めっから、空に見事なキノコの雲♪、とか歌ってますし…/汗)
廃墟や車の飛び交う交差点の真ん中、ビルの屋上、といった物騒な場所に立ち、
ひたすらに楽しげに笑う登場人物たち。
不気味なのに爽やか、というどうにも落ち着かない、居心地の悪い感じがグー!
絶望も落ち込みも全部突き抜けたところに行くと、人間もう笑うしかないらしい、とか思わせられる画像でした(笑)なんか怖い。

このオープニング、放映当時にとても評判良かったらしいです。
歌詞のわかんなさはともかく、曲調はすごくいいですよ。

妄想代理人 オフィシャルサイト

誰も知らない

2005-05-29 02:35:38 | 映画(邦画)

「誰も知らない」 2004年
監督:是枝裕和
出演:柳楽優弥、北浦愛、木村比影、清水萌々子、韓英恵、YOU

***

1988年に実際にあった事件をもとに作られた映画です。
とはいえ、現実の出来事はあまりにも陰惨なものでしたが、映画はむしろ美しい…とか、
悲しい、儚いイメージで作ってありました。

とりあえず、あらすじから。

ある日、アパートに引っ越してきた母親と息子の二人連れが、大家に挨拶に来た。
父親は海外赴任中で、息子と二人暮し、うちの息子にもそろそろ英語でも習わせようかと…
等と語る親子、実は5人家族。
父親はおらず、4人の子供たちは出生届すら出ておらず、学校にも行っていない。
母子家庭で4人の子供、という家庭環境では、借りる家は限られてしまうため、
事実を隠して引っ越してきたのだ。
そのため、長男を除く3人は外へ出ることを固く禁じられ、騒ぐことすらままならない。
狭い家の中で日々過ごす兄弟たちを、買い物に行き、食事を作り世話をするのは長男の役目だった。
ある日、母親は長男に言う。「好きなひとがいるの」
そのひとが自分と結婚してくれたら、みんなでもっと広い家で暮らし、学校にも行ける、と。

そうして、やがて母親は20万円の現金と「しばらく留守にします。子供たちをよろしくね」
と書いたメモを残して姿を消した。

母が戻る日まで、と必死に頑張る長男。
しかし、わずか12歳の子供にその責任は重すぎ、次第に生活は破綻してゆく。


一時期、主人公の柳楽くんが賞をとって話題になりましたが、私はむしろ
YOUが最高にハマり役!と感動しました。
四人の子供を産みながら、それに対して全く責任を持てない母親。
子供たちに愛情が無いわけではない。完全に捨てようと思ったわけでもない。
ただひたすら子供で、無責任で、無知。
きっと映画の中の母親は、相手の男との幸せな生活に溺れて、それを壊したくないあまり
子供たちのことを忘れた…というか、後回しにしたんでしょうね。
いつ言おう?いつ打ち明けよう? 別に今じゃなくてもいいじゃない? まだなんとかなるわ、と。
…実際たくさんいそうだよー。こういう人ー。
いや、だって、自分の幸せって、やっぱりなかなか捨てがたいものだと思うしさ。
子供がいても浮気する心理だって多分そうでしょう?
母親としての責任より、女としての幸せが勝つんだよね。

ま、多少は…作中の母親にも、同情できる部分はありますが…(だって子供四人は大変だよ/汗)
しかし、そもそもその環境で四人の子供を作る、産む、というあたりが既に考えなしな証拠でも
ありますしね。
作らないこともできるのに、なんで作るかなー。産まないこともできるのに、なんで産むかなー。
そして、その無責任さの煽りをモロにくらった形の長男、明。
彼の、普通の子がするような遊びや生活に憧れる様子や、淡い恋心、徐々に荒んでいく気持ち、
その全てがリアルに、また綺麗に描かれています。
そもそも、12歳の少年に大人のような分別を期待するほうが間違っているのだし、
そういう意味では、作中の長男は実によくやったほうだと思う。それを助ける長女もね。

どんどん生活は荒れ、追い詰められていくのに、それでも彼らにはあまり危機感は感じられず、
時には子供らしい楽しみや遊びの合間に笑顔が見えたりして、それがまた不憫です。
私たちから見れば不幸な境遇と言っていいのに、彼らはそれを不幸とすら感じられない。
なぜなら、きっとそれは…幸福な状態を知らないから。
きっと最後まで、植えられた草が無言で枯れていくように、運命に従って黙って衰えてゆくだけ
なのでしょう。

作中、少し意外だったのは、一度は出るかと思った「子供同士の苛め」や「容姿への差別」は
一切なかったということ。
子供は子供らしい無邪気さで彼らを遊び仲間とみなし、また「臭い」という簡単な理由で無視
しますが、そこには陰湿さはありません。
空気のように、また路傍の石のように、時には気に留め、時には無視する。
考えてみれば、苛める、とか差別、とかは、良くも悪くも相手に関心を持ち、
注目していなければ起こらない感情かもしれません。
そして、世間に気にも留められないまま暮らす彼らは、ここでもまた幽霊のように扱われている。
徹底してます。見事に隔絶されてます。
そこらへんも「誰も知らない」というテーマに沿っていて、凄いです。

この物語の実話とは違いますが、以前…多分幼児虐待か何かで事件が起きた時、
死んだ子供の存在を、近所の人間はまるっきり知らなかった、というのがありました。
「いつも姉(だか兄だか)を連れて歩いているのは見てたけど、もう一人いるなんて
知らなかった」と近所のひとのインタビューがあったような。
案外、私たちが「知らない」だけで、こういう事例は思ったより多いのかもしれません。

うちの近所にしたところで、近所づきあいがそれほどない昨今、
どこの家にいくつの子供が何人いるのか、正確に把握できていませんし。
監禁もされてない普通の家でもそれだからな…家から出ないんじゃ尚更…(汗)

こ、怖い考えになってしまった。
とにかく、こういった形で犠牲になる子供たちが、少しでも減ることを祈ります。


誰も知らない 公式サイト

参考実話:「MURDER IN THE FAMILY」「巣鴨子供置き去り事件」の項
注意:↑このサイト「MONSTERS」は猟奇事件の紹介・考察サイトですので、納得の上でご覧くだされ。


絶体絶命都市

2005-05-27 13:54:39 | 商業ゲーム(コンシューマ)

「絶対絶命都市」
プレイステーション2 2002年

***

以前書きましたサバイバル系ゲームです。


政府が十数年前から手がけていたプロジェクト、人工島の建設。
最新技術を惜しむことなくつぎ込み、画期的な新工法を駆使して作られたその島は、
その安全性・信頼性を実証するため、首都を移転し「首都島」と呼ばれるようになった。

数年後、その首都島に配属になった新聞記者である主人公は、
首都島への移動の最中大地震に巻き込まれ、意識を失う。
そして気がついたとき、彼は、空港島と首都島を繋ぐ長い連絡橋の上に一人取り残されていた。


このゲームの画面や、災害の様子…阪神大震災の後、やたらと地震対策や、
首都で同じ規模の地震が起きたらどうなるか、といったシミュレート番組が流行りましたが、
それと同じ流れを汲んでいるように感じます。
最近大きな地震が続いたこともありますし、きっとこれ、地震の被災者の方はできないのでは
ないでしょうかね?
少なくとも、神戸では売らないほうがいいのじゃないかと思いますが…。

だってこれ、コントローラーの振動機能も手伝って、やたらとリアルっすよ…。
崩れて廃墟となってしまった都会の光景は、あまりにも荒んでおり、
人影が全くないのも、なんだかコワイ。
後半はちょっと別要素が絡んできて、現実離れしてきますが、
前半は本当に…ドキドキものです。

また、主人公の服装が、ストーリーを進めるごとに、
どんどんビリビリのボロボロになってくるのもリアルでした。

さて、ストーリーに関してですが、いちおう、エンディングは7つ。
うち、4つがまずまず正常な(?)エンディングです。
ヒロイン役は二人。途中でストーリーの分岐ポイントがあり、
どちらを選ぶかで一緒に行動するヒロインが決まります。
私自身は、そのうち2回、両方のヒロインのラブラブ度高いほうをクリアしました。

不満だったのは、回数を重ねても、まったく同じゲームの流れでつまらない、ということ。
分岐部分はもちろん違いますが、共通箇所は橋の落ちる場所、ビルの崩れるタイミング、
全て何度やっても変わりません。
私の一回目クリア時間は7時間。2回目は分岐部分は初プレイであったにもかかわらず、
4時間でクリア。そのくらい、一回目のシナリオをそのままなぞる部分が多いのです。
主人公の辿るルートもほぼ一本道。せめて、選択肢や選ぶルートによって変化があったら、
もっと繰り返してプレイする気になるのにな。

そして、何より気力を削いだのは…ラストが。
(以下激しくネタバレのため反転)

あれだけ努力させといて、結局助からないなんて、そんな殺生な!!
これって、助かるエンディングとか密かに隠されてたりしませんか?
御存知のかたは是非教えてくださると嬉しいです(汗)


あと…防具というよりコスプレ要素の強い装備品や、
集めたからといって何の特典も無いコンパス集めは必要あるのかな?
「お遊び」があるなら、それに対する「ご褒美」も欲しいところ。
コンパスみんな集めたらグッドエンディング! とかあったら、シャカリキになっちゃうのに。

追記:
ネタバレ部に、若干誤解がありました。
つまりはヒロインのラブラブ度をあげなければ問題無い事態であったようです(汗)
…もう一回やってみよ。次はきっと3時間くらいでクリアできるような気がする(笑)

絶体絶命都市 公式サイト

ちなみに2も(笑) これもう出てるのかな…
絶対絶命都市2 公式サイト

絶対絶命!サバイバル中

2005-05-25 02:50:09 | 雑事

プレステ2ソフト「絶体絶命都市」
若干キズ有り品で安かったので、衝動買いしてしまいました。

どういうゲームかというと、
大地震で崩壊した人工島の、都市脱出までのサバイバル!です。
地震とともに足場が落ちる橋、上空から崩れ落ちてくる高速道路、
目の前に倒壊してくる巨大なビル群と、とにかくリアルで怖いー。

え? 死体ですか?
死体は今のところあまり出ていませんね。
大地震の後、というわりには、もうみんな避難してしまった後、という設定なので、
残っているのは瓦礫の山ばかりで、殆ど無人。
だから、こういうテーマの作品の割には、画面はそれほど陰惨じゃありません。

たまたま買ったわりには面白くて、レビューも早く書きたいのですが、
只今詰まっております(涙)

何度やっても、木が倒れてくる場面で逃げ切れないー。
怪我した上司を背負っているので、足が遅いのよぅー(涙)

いいかげん、このオッサン放り投げて逃げろー!と言いたくなってくる…

ミスト3 エグザイル

2005-05-23 11:28:28 | 商業ゲーム(コンシューマ)

「ミスト3 エグザイル」
Xbox版 2002年
プレステ2版 2003年
キッズステーションでは廉価版アリ。

***

最初に「MIST」シリーズと出合ったのは、セガサターンが発売されて間もないころでした。
もともと海外ゲーム一般が苦手だった私には、もう難しいのなんのって。
だって海外からのゲームって、どれもやたらと不親切じゃないですか。
アイコンの説明もなく、アイテムの解説もなく、ヘルプ機能、操作チュートリアルもまるで無し!一体何をどうすりゃええねん!という感じ(汗)
そして「ミスト」シリーズはある意味、それを突き詰めた作品でした。

気がつけば、主人公は見知らぬ世界に一人で放り出され、何がどうなっているか聞こうにも人っこ一人いやしない(笑)
殆ど廃墟に近い島を歩き回り、見知らぬ機械をひたすら触り、一見脈絡の無い日記を読みつつ、孤独にストーリーを進めていくのです。
こんなんですから、コツがわからないと途端に詰まります。きっと、スタート地点から先に進めずに何このゲームーと投げる人も多いんじゃないかと。
でも、その分、解けた時は爽快なのですね!
あと、魅力は画面の美しさ。いかにも、自分がその世界に今いるかのように感じさせる、リアルな風景と存在感があり、きっと、ミストシリーズが好きな人の何割かは、異世界に旅に出るような気持ちでプレイしているんじゃないかな。


というわけでエグザイル。

本を書くことによって「世界」を作り出す技術を持つ「ドニ」の民。
その一族の一人、アトラスの書いた本を図書室でみつけ、偶然「ミスト」へ迷いこむことで事件に巻き込まれた主人公(プレイヤー)。
一作目ミストでは、グレた息子たちとの諍い、二作目リヴンでは父親ゲーンとの確執と、常にアトラスのお家騒動の被害に遭うかたちの彼が今回巻き込まれるのは、どういうわけかアトラスに恨みを抱く男「サーヴェドロ」の復讐劇。

彼はある日いきなりアトラスの暮らす世界「トマーナ」に現れ、アトラスの描いた新しい希望の世界「レリーシャンの書」を奪って逃走。
数々の罠を仕掛けた「ジェナーニン」の世界へと主人公をおびきよせる。
そこは、かつてアトラスが二人の息子の訓練用に作り出した、いわば「練習用の箱庭」だった。

さて、プレイヤーは、数々の仕掛けを解き、ジェナーニンから繋がる三つの世界を巡りながら、サーヴェドロを追い詰め再び「レリーシャンの書」を取り返すことができるのか?



ゲームのボリュームは、攻略情報を見てしまえば、一日あれば解けてしまう程度。
見ていなければ…プレイヤーにもよるでしょうが、けっこう時間かかりますよー。
一作目ミストの時は、攻略本無しで挑んで十日間くらいかかりましたしー。

日本のアドベンチャーゲームは生ぬるい!とお思いのかたは、一度チャレンジしてみてくださいませ。

ちなみに、2005年3月にパソコン版にて「ミスト4 リヴェレーション」が発売されました。
家庭用ゲーム機にも、早く移植してくれないかなー。

ミスト3 エグザイル

青の炎

2005-05-20 11:39:25 | 本(小説)

「青の炎」 貴志祐介
角川文庫 2002年

***

追い詰められる恐怖感を見事に映像化した「黒い家」に引き続き、主人公に嵐の二宮和也、
ヒロインに松浦亜弥を起用して映画化。幅広い年齢層にアピールし、話題になった作品。
私は映画を先に見ていて、原作は貴志祐介かー、と気になってはいたのですが、
今回やっと読みました! 黄泉がえりのときと同じパターンです。


ストーリーは、爽やか系青少年の殺人計画。

酒びたりですぐに暴力を振るい、家族を脅かす「元・義理の父」。
何故か再び家に入り込み、追い出すこともできないその男から母と妹を守るため、
少年は完全犯罪の計画を練りはじめる。
最初は、ただの空想で終わるはずだったそれ、日常の些細な出来事の中で、
どんどん信憑性を帯び始め、「戻れない一線」に向かって運命は急激に傾き、そして…。
計画の綻び、些細な誤算、そして破綻。
きっかけはただ、大切なものを「守りたい」と思う純粋な気持ち。
しかしそれは、次第に少年を次なる犯罪へと駆り立ててゆく。



原作付き映画の場合、2時間足らずの時間の中に原作の全てを表現しきれずに
「うわっつら」だけになってしまうものも少なくありません。
で、原作を読んだあと、こっちのほうが断然いいじゃない、と思ったり。

でも「青の炎」は今原作を読んでみたあとでも、映画への失望感は感じませんでした。
ん、まぁ…正直、映画の方は見る前からあんまり期待してなかったせいもあるかな。
キャストがキャストだったから(笑)ただのアイドル映画になってるんじゃないかなって。
思ったよりいいじゃない?ってプラス補正が入った分、原作との差も感じなかったのかも(笑)

「倒叙推理小説」という言葉を、この小説で初めて知りました。
まず、犯人の側から語られる物語。
犯人がいかにそれを計画し、実行に移し、その犯罪を為しえたかを小説の前半部で描き、
そして、後半、警察や探偵が捜査をはじめ、些細な手がかりや齟齬からそれを暴いていく。
普通、まず事件が起こってしまった部分から始まるミステリーとは逆の手順で語られるので、
「倒叙」と呼ばれるらしいです。

考えてみれば、事件は起こってしまったあとでなく、それ以前に動機が生まれた時点が
発端であるとも考えられるわけでー、そう考えれば、倒叙はすごく納得のいく書き方
なのかもしれない。
普通のミステリーは「いかにして」人を殺したか、が一番の見所ですが、
倒叙推理だと「何故」人を殺したか、が重要視されるぶん、ドラマ性が強いような気がします。

で、この「青の炎」の魅力は、一番に主人公。
動機がね、欲じゃないんですね。
ある意味、彼とその家族は、暴力と圧制に長年虐げられてきた犠牲者なわけです。
やっとそこから抜け出して、平和な生活を営んでいたところに再び現れた義父が、
彼の目にどう映ったか…
「過去の悪夢」「またあの日々が始まるのか」そんな絶望が、きっとあったでしょう。

でも、今は彼も成長し、もうただ殴られることに怯えるだけの幼児ではない。
男である自分が、母や妹を守らなければ、という思いと、
それでも自分はまだ法的にはなんの力もない子供なのだ、という無力感。悔しさ。
そして、きっと自分ならできるかもしれない、という若い奢りと無鉄砲さ。
それらすべてが、彼をどんどん走らせていきます。自分の走るその道の向こうが、
どこに続いているのかをまだ知らぬまま。

読んでるうちに、主人公の怒りややるせなさ、哀しみ、そんなものがヒシヒシと感じられて、
多分、読む人たちの半分くらいは「こんな男は殺されて当然だ。やっちゃえやっちゃえ」
という気分になるはず(笑)

でも、その代償はあまりにも大きくて。

なんていうかねー、読んだあと、この世って無常だ! 神も仏もあるもんか!と思いますね。
殺人に成功したあとの主人公の気持ちの変化とか、見ていて痛々しくってね。
17歳が「子供」とはさすがに私は思わないのだけど(私の甥は私よりオトナな考え方するしね)
やはり、まだ庇護されているべき対象が、その肩に見合わない重荷を負っている姿は、辛い。
動機が動機だけに、彼は他のものを守るために全ての罪を背負った…
いわゆる「殉教者」っぽくも見えてしまうわけですよ。
(あ、殉教者…は教えに殉ずるという意味だから、ちょっと違うかな?
でも、他に適切な言葉を知りません。すいません)

で、作中の母親しかり、弁護士しかり、刑事しかりを通して、私たち大人は、
自分達の不甲斐なさで彼に罪を犯させてしまったことに後悔の念を覚えてしまう。
読んでいても、不思議と最後まで、殺された側への同情は浮かびませんでしたね。
むしろ「お前がそもそも悪いんだよ!」と怒りを覚えるくらい(笑)

とはいえ、現実であっても、フィクションであっても殺人は殺人。
罪に問われるのは仕方がありません。
結局、主人公の彼は、最後には追い詰められてしまいます。
しかし、最初の動機が動機ですから…「家族を守りたい」がゆえにする、彼の最後の選択は…
この先はもう、涙なくしては語れない(涙)



…映画版に少し触れますと、主人公役の二宮くん、上手でしたね。
あれが彼の地なのかわかりませんが、思春期独特のむっつり感(?)とか、とても自然。
原作では、主人公はむしろ才気走った、年齢に見合わない思考を持った少年のように
思えましたが、映画版のほうが、あー高校生だな、って感じでした。

そして「あやや」ですが。
…思ったより…ずっと良かった(笑)
いや、だって不安だったもん。ここが一番。
彼女のアイドルアイドルした感じが前に押し出されて、グラビアみたいな無意味なカットが
一杯あったらどうしようかと(笑)
でも、ちゃんと、役どころに見合った…むしろ、押さえ気味な演技と出演で、好印象。
映画にあややが出てる、ではなく、ちゃんと「演じてる」って感じがありました。
これは、ジャニーズと一緒に出演したのが良かったのかな? 彼を彼女が食わないように、
また彼女を彼が食わないように、というバランスの良さがよかったのかもしれない。

いろんな意味で、いろんな年齢層のひとに読んでもらいたい、見てもらいたい物語でした。
その結果、感じることはそれぞれだろうけど、答えを出すことではなく、
考えることそのものが大切だと思える。そんな話です。

青の炎 映画版サイト

ホラー文庫

2005-05-19 20:02:50 | 雑事

ここのところ、ホラー文庫を買っては読み漁っている。
本日のーめにうはー、幽霊マンション監禁風味ー。
それからー、理性的な猟奇殺人鬼ー。様々な素材をーお好みの調理法でー。

角川ホラーの「リング」以来、やたらとホラー小説とホラー作家さんが増えたのは
嬉しい限り。
昔はホラー系だけの文庫なかったし。
大体、ストーリーもエロとの抱き合わせが多かったような気がするな。

さて、最近やたら増殖している、この背表紙まっくろの本の山。
一体どこに収納しましょうか…。
本棚はもう無理だし、大体、うちの本棚は居間にあるので、
来客がきたときに「たたり」だの「殺人…」だの「人肉…」だのが
オモテにばばんと並んでいるとちょっと困る(汗)

やはり、量が量ですから、普通のひとはまず引くでしょうし。
かといって、厳重に隠してあるのもね、それもどうなのっていう(笑)

ホラー嗜好の皆々様、本やらビデオやらを対外的にはどう扱ってらっしゃいますか?

生きる権利と死ぬ権利?

2005-05-18 19:06:18 | 雑事

最近、ニュースになっている延命治療中止。

一応日本では、本当に治る見込みのない場合、本人が望めば延命治療の中止を行うことができる…
ということになっていますが、もちろん本人が突然の事故で脳死状態になった場合、それは不可能です。
その場合、かわって親族が「あの人なら、きっとこう言うに違いない」と推定し、
中止してもよいということになっています。
(しかし、なかなかこのへんは曖昧ですね)

今回、記事を読んでも、何が罪に問われたのか、最初サッパリわからなかったのですが、
あちこち拾い読みしてみた感じ、

・病院に搬送され、わずか1時間後には、医師は既に延命治療中止を提案した。
(それは確かに早すぎるかも)
・その時点では心臓は動いており、脳波計などの機器を使った脳死判定も行われていなかった。
(ただし、医師は自発呼吸停止・瞳孔の拡大で脳死を判定したとされている)
・提案・決定は全て親族と担当医師との間で行われ、他の医師、院長などは関与していない。
(でもこの親族の同意については”要件を満たしていない”扱いらしい。何で?)

ってところなのかな?

しかし、今回のニュース関連の記事は、読んでて物凄く歯切れが悪い。
何が罪に問われて殺人罪なのか、きちんと書いていないのですよ。
まるで、医師があくまで勝手に呼吸器をはずして患者を死なせたような扱いをしているのに、
事件のあらましでは「提案し、親族はそれを受け入れ」とか書いてあったりするし。

で、その「親族の意思」も曖昧なんですね。
医師は、とりあえず治療中止を提案している。そして、親族は、それを一度は了承している。
しかし、判決結果から見ると、親族の「明確な」治療中止依頼は、されていないことになっている。
(それについては「家族への病状の説明は不十分だった」と書いてある記事がありました)

…あの医者に強く勧められてたら、なんとなくそんな気になっちゃったんです…
…お医者さんが言うのなら、それが正しいような気がして…
なんだか、そんな言葉が文脈から聞こえてきそうな気が…(汗)
いや、多分気のせいですね、きっと。

今回の医師のやりかたは、多分に問題があったのかもしれませんが、
これじゃ、結局「延命治療中止」にはどこの病院も怖くて踏み切れなくなるんじゃないでしょうかねー。
いくら脳死状態だといったところで、親族の意向が正確に「本人の意思の推定」であると
証明する方法はないのですから。
その気になればいくらだって難癖はつけられる。
それを避けるには、意識の無い患者はとりあえず「生かしておく」しかないんじゃないかと(汗

***

延命治療中止。
もしわたしがもう絶対意識が戻らないだろう状態になったとしたら、
さっさと殺して構わないわ、と思います。
もう助からない人間に、お金や時間をかけることはありません。

でも、もしダンナやコドモがそうなったとしたら…きっと、私には、それはできない。
たとえ生きたまま身体が腐ろうと、身体から筋肉が落ちてミイラのようになろうと、
それでも生きていて欲しい、と思う…んだろうなぁ。

こういう問題は、感じ方も考え方もひとそれぞれで、本当に難しい。
逝く側も残される側も、少しでも納得のいく最後をむかえられるように、
「延命」に関するルールが、今のように曖昧なものでなく、
もっときちんとしたものに整備されることを願っています。


ジョゼと虎と魚たち

2005-05-16 23:19:48 | 映画(邦画)

「ジョゼと虎と魚たち」 2004年
監督:犬童一心
出演:妻夫木聡、池脇千鶴、上野樹里、新井浩文

***

えーと、やんちゃな男の子とオンナの映画。
大学生とか専門学校生とか、進学しなかった私には実感としてわからないのだけど、
すっかり身体はオトナなのに、どこか幼くて中途半端な年齢…なんていうのか、言葉は悪いけど、社会に出るまでの執行猶予?(笑)みたいな感じが興味深かった。
大学生活って本当にあんな感じなの?


恒夫は雀荘でバイトする大学生。
そこで噂される「乳母車を押した老婆」は、その荷物の中に「お宝」を隠し持っているらしい、と評判だった。
そして、ある日の早朝、店長の愛犬の散歩に出た恒夫は、坂道を転がってくる乳母車と、それを追いかけてくる噂の老婆を目撃する。
「中を見て」力尽きて坂の途中で座り込んだ老婆に、そう頼まれて覗いた恒夫の前に現れたのは、お宝でも麻薬でも子供のミイラでもなく、一人の少女だった。
足の不自由なその少女は、その存在を恥として隠そうとする老婆のもと、家からほとんど出されず隠されて育っていた。
拾ってきたたくさんの本を読み、上手に料理をし、不思議な言葉を口走り、愛読書のヒロインの名から、自分を「ジョゼ」だと名乗る、変わった少女。
恒夫は徐々に、彼女に惹かれてゆく。


まず、妻夫木聡演じる「恒夫」が、とても等身大な男の子のように思いました。
刹那的で、アタマで考えるよりも、こっちが楽しい気持ちいい、っていう感性のままに流されていく感じ。それは食欲だったり、性欲だったり、プライドだった…っていうか何も考えて無いね?!アンタ?っていう(笑)
ここまで軽いと、正直あまり好きなタイプではありませんが、多かれ少なかれ、男性なら彼の心理は随分わかる、ん、じゃ…ないのかなぁ。
たとえば、女の子のほうが好き好きって縋ってくるときに、フッ…て勝利の笑みというか、余裕の笑みを浮かべるんですよ! つか、なんか見ててムカツク(笑)

そして池脇千鶴演じるジョゼ。
ずっとお婆さんと暮らしていただけあって、喋り方がやけにババくさい。
閉じこもっているせいなのか天然なのか、話すことも一風変わっていて、
何故恒夫が彼女にここまで惹かれていったのか、物凄く不思議。

最初、ジョゼは恒夫のことを、とても用心していたように思います。
自分のことを、好きになるやつなどいるわけがない。
だから期待してはダメだ、好きになってはダメだ、自分は「壊れ物」なのだから、と。
彼女が名乗る「ジョゼ」の出てくる、サガンの「一年ののち」の一説を、作品中で彼女が朗読する場面があるのですが、その内容こそが、彼女の思いと、その後の二人を暗示していたりして…

最初から、希望を持つことを諦めてしまった人間は悲しい。
そして、そういう臆病な人間に希望を持たせることは、最後まで責任を持てないのならとても残酷なことでもあるかもしれない。
もっと人生経験があって、物事を考える人間ならそれに気付きもするでしょうが、「考えない男」恒夫は最後の最後までそれに気付かず、自分の気持ちを相手に向けるので夢中というか精一杯。
それを、どこか希望と諦めの混ざった表情で見つめるジョゼが印象的でした。

恒夫をジョゼに取られる形になった香苗ちゃんの言葉は、ちょっとショックだったな。
福祉関係の仕事目指そうと思ってるの、なんて言ってた彼女が
「障害者のくせに、私の彼氏取るなんて生意気」って言っちゃうんだよね(汗)
いや、障害があるからって、特別に考えすぎたり、庇いすぎるのは違うとは思う。
でも、その言葉は「香苗」にとっての本当の、真実の気持ちだっていうのが感じられて、
だから余計にイタかった。
見た人はみんなここで、多かれ少なかれ衝撃を受けた筈(笑)

とにかく、登場人物がみんな、それぞれ弱さや愚かさを持っていて、悩みつつも進んでいく物語。
最初見たとき、なんかそれほど好きな話じゃないなぁと思ったのですが、
DVD特典のコメンタリーを見ているうちに、ああ、このシーンはこうなのかーと
しみじみするところもあって、今はそれなりに気に入っています。

最後のジョゼの、凛々しく強い後姿や表情があるから、ちょっと救われる。
つか恒夫、あんまり子供すぎて腹立つけどね(笑)

ジョゼと虎と魚たち

かぶと生活。

2005-05-16 18:28:06 | 雑事

さて、GW中にホームセンターの無料サービスで貰ったカブトムシの幼虫ですが。
色々サイト検索などした結果、只今2リットルペットボトルで育成中。
今日チラっと見ましたら、たまたまボトル側面に身体の一部が見えていまして、
なんとか生存中の模様(汗)

それにしても、いろんなサイトをめぐるにつけ、近所のホームセンターでの飼育道具の杜撰さが目に付きます。
カブトムシとクワガタでは、同じ甲虫でも、幼虫時代は飼育方法が天と地ほども違うというのに、全然区別されていなぁい!

まず、昆虫マットと呼ばれる、土というかオガクズ系のものですが、
朽木に直接タマゴを産み、それを食べて大きくなるクワガタと、主に広葉樹の腐葉土(針葉樹だと死ぬそうです)を食べて大きくなるカブトでは、同じものでは困る筈。
しかし、ホームセンターで抱き合わせで売られてたのは「クヌギ」のチップの細かいもの。
これ、クワガタならばっちり。そして、確かにカブト幼虫でも大分大きくなったものなら代用が効くそうですが…小さな幼虫であれば、醗酵してない(腐って柔らかくなってない)クヌギマットでは全滅もありうるそうで…。

また、カブトをちゃんと成虫にしようと思ったら、深さ10センチ以上の硬い黒土層。その上にさらに10センチ以上の腐葉土層があったほうが良いのだそう。
あわせて最低でも20センチ以上。本気で大量飼育している方が使っていたのは、なんと衣装ケースだったり。(確かに深さは完璧だ…)
そして、ホームセンターで抱き合わせで売られていたのは深さ15センチほどのプラケース…。

いや、そりゃあね、ちゃんと飼おうって人は、知ってるだろうし調べるでしょうよ。
でも、一緒にこんなん売られていたらさ、興味も無いし知らないひとは「これで完璧!」とか思うんじゃないのー(汗)
んで、殺しちゃってから、あらら、死んじゃったねー、残念だねーで終わるの。
そりゃ虫の命なんて、別にそんなご大層なものじゃないけどさ。


ううー。こんなん書くと、優しいとか誤解されるかもしれないけど、
私にはそもそも、生き物の飼育にはトラウマがあるのですよ。

うちの親、決して人間的に問題のあるひとではありませんでしたが、
動物や虫の飼育に関しては、かなり大雑把で関心もなかった。
…いやいや、動物嫌いじゃありません。むしろ好き。
でも、その動物の性質や本能を考えて、正しく飼育する、ということには全然関心がなかった…のね(汗)
…それはどういう状況かって…。

金魚を飼う時、カルキも抜かずに突然水道水(冷水)に放して即死亡。
さらに家を開けるとき、数日分の餌を一気にやって、水質汚染で死亡。
寒くても大丈夫だ!と屋外に置いて、凍結して死亡。

はつかねずみを飼った時「ネズミが水を飲んでいるところは見たことが無い」
→「ゆえにネズミは水を飲まない」と恐ろしい論理の飛躍により、
水を与えず、食べ物は生米のみ。一ヶ月後に死亡。

鳥を飼った時、羽根を切ると良くなつく、という言葉を真に受け、切断。
それは当時どこでもやっていたことですが、実は鳥の寿命を縮める行為…。
この鳥、後に、飛べないためによちよちと床を歩いていて「事故」で死亡。

他にもいろいろ…いろいろね…フフ(涙)

まだ子供だった私。オヤの言葉を疑いもしません。
一生懸命、言われたとおりにしたのに死んじゃったーと涙にくれる。

いや、ある程度年齢がいって、モノがわかるようになってからは、呆然としましたね。
いろいろと。
ちゃんとやってて死ぬならまだしも!自分が一生懸命正しいと思ってやってたことは、
実はその生物の命を縮める行為でしかなかった、と思い知らされたわけですからね~

それからワタクシ、動物を飼う際は一切オヤの意見に耳を貸さず!(笑)
とにかく専門書等で調べるようになったのでございます。
ある意味、教育的には良かったのかもしれませんが…幼心は傷ついたぞ~(笑)

まあ、こんなことをエラソーに書いていたとしても、
うちのカブト幼虫だっていつ死んでるかわかんないんですけどね(汗)
でも調べて努力したもん!一応!(笑)



参考までに。カブト・クワガタサイト。虫満載ですから、嫌いな人はやめたほうがいいかも。
カブトムシVSクワガタムシ