鼠喰いのひとりごと

DL系フリーゲームや本や映画などの感想を徒然に

「りかさん」

2016-04-10 12:52:01 | 本(小説)
「りかさん」

梨木香歩 新潮社文庫

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梨木さんの本は好きです。
特に好きなのは「家守綺譚」と「村田エフェンディ滞土録」なのだけど、
今回は「りかさん」をチョイス。

前記事「物念世界(フリーDLゲー)」で出てきたような、
お人形が出てくるので、ちょっと思いだしたのさ~
もっとも、こちらの「りかさん」は、物念世界のような「裏」はないのだけど。

内容はざっとこんな感じ。

主人公のようこちゃんが、お婆ちゃんからもらった市松人形の「りかさん」は、
持ち主とお話できる不思議な人形。
「りかさん」の導きで、ようこはいろんな人形達の声を聴き、
その想い出を追体験する…

これだけ見ると、童話のようなファンタジーですけどね~
内容は…というか、根底に流れるものの考え方や、思考は割と大人向けよ?

文章はそれほど難しくなく、短編作りで読みやすい作り。
主人公は幼い女の子ということもあって、中学生~高校生の子なら読めそうかなぁ。
ただ、世代的に…ちょっと昭和っぽい雰囲気の時代色があるのと、
残酷ともとれる描写があることから、本当の子供向けではないかな。
どちらかというと、かつて少女だった、大人の女性向けの物語、かと。


人形…子供のころ大事にしてたぬいぐるみとか着せ替え人形、
多分もう捨てたなあ…くたくたのへろへろだったし。
お気に入りだったウサギのぬいぐるみは、固いプラ繊維のヒゲがついてたけれど、
一緒に寝てたら目に入って痛くて大泣きしたので、
危ないって、親にハサミで切られてしまったっけな。
ま、おかげで安心してぎゅうぎゅう抱っこできるようにはなったんだけど。

とっといたらよかったかなあ。
いや、やっぱり手放して正解なのかな?



他に、大人になった「ようこ」の話として「からくりからくさ」があります。
「りかさん」より難解な話になっていますが、私はこちらも好き。




アンと青春

2016-03-31 19:56:22 | 本(小説)
「アンと青春」 
坂木司 光文社 ハードカバー

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「和菓子のアン」に引き続き、和菓子屋さんに勤める杏子ちゃんのお話です。
「和菓子の~」が好きだったので、続編出てるの見てすぐ買っちゃったよ!
ハードカバーなのに!!(和菓子の、は文庫で買った)

…まあ、ハードカバーは装丁が美しいですからね…いいんですけど…
今回も、蛍光に近い明るいグリーンの表紙に、金箔混じりの白い紙のカバー。
その上にかかる帯はピンク、と。和服の襲を思わせるような綺麗な春カラー。
プリントされているのは内側に明るい緑の餡をくるんだ半透明の餅っぽいの。
上に梅の箔押しされていて、装丁と合わせてある感じ。オシャレだね~

こういう凝った装丁の本は、手に取るだけで嬉しいのだけどね。
いかんせん、重いし場所を取るからな…本好きならだれでも悩むよね。
いずれ床がヤバイって!


うん、とりあえず話を戻して。内容のほうにうつりましょう。
これはですね、主人公のアンちゃんが、すごく魅力的なんですね~
なんていうの…ほら、ちょっと前に巷で流行った、マシュマロ女子ですよ。

正直、太った女の子を主人公に据えた物語って、あんまり無いように思うのですが、
アンちゃんは、美味しいものが大好きで、でも一方で、自分の体形やら顔やらに
強いコンプレックスを持っていて、そのせいで何か自分のすべてに自信がない。

よほど自分の容姿に恵まれた子でない限り、女であれば、誰しもわかるんじゃないかなあ
実際、見た目ってやつは、すごくダイレクトに周囲の扱いを違えてくれます。
一緒の職場で仕事をするとか…長く付き合えば、中身を重視してくれるかもしれませんが、
一生の間に出会う人間の90%くらいは、そこまで深く付き合わないしね。

そんなアンちゃんがデパ地下の和菓子屋さんで、良い人たちに囲まれてバイトをしながら、
お客様たちのちょっとした謎を解く…みたいな。
そのついでに、自分の中のコンプレックスとも、
ちょっとづつ向き合って前向きになっていく…みたいな。

多分、女の子ならだれでも、手に汗握って応援したくなる子。それがアンちゃん。

毎回テーマになる、和菓子の歴史や知識も、一つのみどころです。
うちの近くには、個人の和菓子職人さんのお店があって、
季節の上生の美しいのをたまーに買ったりするんですが、
歴史とかは気にしたことなかったな。
そういうの知って食べると、何かすごく美味しく感じるかも。



…で、今回の続編は…アンちゃんに春の兆しがありまして、
読みつつ、ニヤニヤしてしまう一冊でした。
ただでさえ自分に自信がないもんだから、わかりやすく異性に矢印出されても、
全然理解の外なのが何か…笑える。

乙女ゲなんかでは、すごい可愛い子がやけに鈍感だったりして、
純粋どころか一周回って悪女っぽくなってる場合があるんだけど、
アンちゃんの場合は、そうなる理由が納得できるっていうか。
自分に自信がないと、もしかしたら好かれてるかも?って思っても
「そんなこと考える自分がおこがましい」とか「そんなこと考える自分が恥ずかしい」
になっちゃうんだよね。

今作のタイトルは「アンと青春」
もちろん、あの名作からタイトルをもじってつけているのですよね。
あれ、すっごい長いシリーズだったと記憶してますが!
この続きは…期待してもいいのかなあ?w



どちらかというとウジウジ型の乙女立花、この先は積極的になるのでしょうか…
店長と桜井さんに鍛えなおしてもらったほうがいいかもしれないw


ナナシノゲエム「アトミッカ」

2008-07-21 03:13:44 | 本(小説)

プレイ日記5日目~

しつこいけど
ネ タ バ レ 超 満 載 !!
見たくないって人は、今すぐGo back please!

覚悟はよござんすか? よござんすね?
見ちゃったチクショーみたいな苦情は受け付けないよん?

*********

社員一覧と大山の調査でもって、
ユタソフトは社長が死亡。そして、それ以外の社員も、
そのほぼ全員が行方不明となっている…という事実が判明。
ただ、一連の事件が起こる以前に、
社長との折り合いが悪くて解雇された生田潮…。
彼が開発していたゲームが、どうやら呪いのゲームらしい、
というアタリをつけた大山教授は、
彼の家を尋ねれば手がかりが掴めるかも?と…

そこらへんの教授の長ったらしい言葉を要約したしますと。

「生田家へ行ってくれたまえ、ナナコくん」

…えぇ、そう来ると思いましたとも。
どうせまた夜中の廃墟兼幽霊屋敷なんでしょ!

そしてやってきたのは…
血のような夕日を背景に、禍々しく赤く染まる生田家。
夜中ではない…夜中ではないけど!(泣) 
なんかもう見るからにコワイ家なんですけど!!
バックに流れるひぐらしの鳴き声がまた…

そして、予想どおり…玄関は閉ざされ、差し押さえ」シールが。
教授からはまた「今そこ差し押さえくって空き屋だってさ!」
と、神経ピリピリするようなメールが。
そ ん な こ た ぁ 見 れ ば わ か る

玄関は開かないわ、裏口には行けないわ。
普通なら、ここで帰っちゃうところですが、
タフで諦めないオンナ、ナナコ。
開いていた窓から忍び込むことに。

入るなり、正面の壁に真っ赤な男の顔がじわっと現れました。
今回もヤツらはヤル気まんまんですね!
次の部屋に入ると、テレビのあたりが血塗れ。
いかにも、ワケアリ事故物件のニオイがプンプンします。

そしてゲーム配信。

今回は…おや?ちょっといつもと違うかな。
いつものプレイヤーキャラの代わりに、一組の家族が現れました。
そのうちの小さい女の子が、どうやら主人公みたい。
お父さんはいつも仕事でいなくて、母親と二人、
寂しい思いをしているようです。

実はこの時には、もう攻略サイトを見ていたので、
この後、どんなことになるかは既にわかっています。
退路を何度も確認しつつ(←重要)次の部屋へ。
一階の玄関付近は、階段下のモノ入れからガリガリ音がしてみたり、
トイレからは小さなノックの音が帰ってきたり、

はっきり言って、ナナコの度胸にはもう頭が下がります!
モノオキ開けて「…ひっかく音がしたのに誰もいない…」とか、
とりあえずそこは悲鳴だろ!てカンジ。
…その前段階でルグレと散々追いかけっこした身としては、
この程度ぢゃもう驚かない!ってことかぁ?

足音に導かれるように、二階へ上がってどんどん進むと、
一番奥がコドモ部屋。
床に落ちている写真を取り上げると、そこには幸せそうな家族が。
これがイクタ夫妻とその子供ですねん。

途端に背後で異音が!

ふーふふ、 ふーふふ、 ふーふふ、 ふーふーふー…

…鼻歌?!

声のモトを探ると、どうやら押入れ!
開けると、そこには…膝をかかえた人間の足が…

し、死体?! 死体ハッケン?!

いえ…違いました。まだ生きてました。
髪は真っ白だし、目の焦点はあってないし、
かなーりヤバそうな状態ですが、写真の男、イクタです。

そして再びゲーム配信。
…っていうか、こんな状態の男を前にゲームするのかナナコ!
いきなり襲ってきたらとか、身のキケンは感じないのか?!

問題のゲームの内容は…さっきの続きのよーですね。
家庭ホッタラカシの父親に怒りを燃やした娘は、
家を飛び出していってしまいました。
そして…一人残る母親の前に、アヤシイ男が…

暗転・悲鳴

おや? 娘が家に帰ってきたようです…そして…

ここで現実?に戻ると、画面は真っ赤になっています。
場所は…さっきナナコが通ってきた生田家の玄関?
「ママ…ゴメンナサイ…」
とか言ってるのは、あさひ、という女の子。
どうやらこの視点は、この家の娘のもの…
つまり、さっきまでのゲームの出来事は、
そのまま、4年前起こった生田家の悲劇…らしい。

先に行くのは非常に気がすすみませんが、
行かないことにはゲームも進みません(泣)
二階の娘の部屋の前にたどり着くと…

障子戸が、一面、血飛沫でまっかっか!!

開けたくなーい! 激しく開けたくない!!

それでもなんとかクリック!
そこにいたのは…顔を返り血で真っ赤に染めた男…
しかも「ひゃっふふふぅ!」とかヘンな声出してるし…

「お母さんみたいにお化粧して、
 真っ赤な口紅を塗ってあげようねぇ…」

…初回はここでボーゼンとして、あっさり捕まってゲエムオーバー。

二回目は、すぐに振り返って超ダッシュ!
そして次の部屋に行って…驚愕!

イヤァァ! 隣にヤツが!

行く部屋行く部屋、とにかく既にヤツがいる!!
「ひゃっふふぅ!」とか「うぇっへへぇ」とか言いながら。
既に人間じゃねぇ…(汗)

こういう時って、咄嗟に、危険と反対方向に逃げたくなるでしょ。
でも、途中の部屋で一部、出口側にヤツがいる場面があって…
そこで逃げる方向を間違えて瞬殺。再度リトライ。
(ヤツの方を向いて、横を抜けないとならないの)

なんとか終わったけど…これ…
し、心臓にすごく悪いよーー


その後、本当の現実に戻って、
生田から娘の絵日記を貰うと、ステージクリア~


ここ、一回クリアして思ったんですが…
生田家で殺人事件がおきてからも、
生田とあさひは少しの間、ここで暮らしてたんだよね?
現場の子供部屋は、ナナコが行ったときはキレイになってたし、
いくらなんでも、血塗れのままの家で暮らさないだろうから…

じゃあ、テレビのとこの血って、一体、誰の?
…それとも、あれは血じゃなく、雨漏りとか?(まさかぁ)

ナナコと同じように、調査に来た人間の血だったら怖すぎる…
(その人はアサヒ視点の世界で逃げ切れなかった…とかさぁ)

「アトミッカ」は今までとは違った種類のコワさがありました…
そして翌日へ…

「グリーンマイル」

2007-09-14 11:20:16 | 本(小説)
「グリーンマイル」全6巻 
スティーブン・キング 著
新潮文庫

映画「グリーンマイル」
公式サイト(日本版はすでに無いので米公式)
****

最初、この本を本屋で見かけたとき「…なんだこの大量の薄い本は?」とひたすら疑問でした。
全6巻…背表紙の厚みは5ミリほど。しかも、一冊一冊がマンガ本なみの価格。
全部で…2600円、くらい?

『これ、一冊に纏めてくれたら、もっと安上がりなのに!!』
という気持ちが強くて、手に取る気にならなかった…というか。
先に映画のほうを見てスジを知り、しかもそっちが今までのキング作品映画化と比べても、
なかなかにデキが良かったので、それほど文章ベースに拘らなかった…というか。
そんな感じで…読んでなかったのですよね。

で、今回それが纏めて古本屋に出ているのを見て、一括購入。
一度読み出したら、どうせ、最後まで一気に読みたくなるに決まっているし。
しかもこんな薄べったい本…私の読む速度では多分、1冊1時間かからない。
とりあえず纏め買いして~…結局その日に全部読んじゃったよ!(笑)

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1935年のコールド・マウンテン州刑務所。
そこには「オールド・スパーキー」と呼ばれる電気椅子が置かれていた。

老人のための施設に入所しているポール・エッジコムは、かつてコールドマウンテン刑務所の
Eブロック看守主任を務めていた。
Eブロック…それは、死刑囚が、最後の短い余生を過ごす場所である。
そこで1935年に起こった出来事…一人の死刑囚にまつわる奇跡と真実について、
ポールは拙い記憶を手繰り寄せながら、記録にとどめていく。

巨大な黒人の凶悪犯罪者、ジョン・コーフィ。
知能もそれほど高くないらしいこの男の罪は、いたいけな双子の少女を強姦し虐殺したことだった。
ポールは、最初からこの黒人がそれほど凶悪な犯罪を犯すようには見えない、と感じていたが、
自分の病気を、コーフィが不思議なちからで直してくれたのを切欠に、さらにその疑いを強める。
====

感想は「映画版は本当に内容・イメージ共、原作に忠実に作ったんだなぁ」と。

超有名な「シャイニング」「キャリー」「ペットセメタリー」「バトルランナー」
「炎の少女チャーリー」「スタンド・バイ・ミー」「クリスティーン」「ミザリー」「IT」
「痩せゆく男」「ドリームキャッチャー」等々!
今まで、キング原作で映画化した作品は山ほどあれど。
一部のものを除いて、その多くは「なんでやねん!」と文句つけたくなるような…
とくにバトルランナーなんかは、原作と読み比べると、その差にガクゼンとしますよ~

でも、小説家スティーブン・キングはやっぱり好きですね。
本当にストーリーテラーと呼ぶに相応しい作家は、現代において、彼だけなのではないでしょうか。
容赦なく「人間」というものをありのままとらえる視点、残酷な描写とスパイスの効いた風刺。
強烈な皮肉と当てこすりは、そのまま「お前はそれを許すのか?」と読者へ向けた問題定義へ。
そして、その裏側に流れる、静かな優しさ。うわっつらだけではない、本当の友情や信頼。
時に作中に垣間見る、諦観にも似た思いやり。
読んだ人間ごとに全く違う感想が出てくるだろう、懐の深さもさすがー。

主人公・ポールを助けてワキを固めるブルータスを初めとした看守たちが、またカッコいいのさー。
そして、それらの善なる人たちと対照的な、戦慄するような悪役たち。
正直、凶悪殺人犯であるエディより、パーシーのほうが余程邪悪に感じるのは何故でしょう?
そして、案外世の中、こういうタイプ多そうだよなー、なんて思ってみたり。

もちろん、キング作品ですから、いろいろ容赦ない残酷描写もあるわけですが
(映画を見た人は、その辺わかってるよね?)それを超えても読んで欲しいなーと。

で、最初に文句ぶーぶー言っていた分冊の経緯は、1巻の最初で書かれているのですが、
それならそれで! もっと装丁に力を入れてくれればいいのに!!
ふつーのペーパーバックと同じカタチであの薄さ・あの分冊はあんまりざんす。
もっと安っぽい、読み捨てっぽい感じの装丁で(こんな要求すんの私だけ?)
その分値段安くしてくれよー。

本編には関係ないけど。 ちょっと好きな話。
キング自身がシャレが通じる方でもあるようで、今回のグリーン・マイルの序文には、
彼の執筆途中の長編「ダーク・タワー」の続編を急かすファンレターについて書かれた一文が。

『…鎖で縛られたテディベアのポラロイド写真を同封したものがあった。
添えられた手紙には、新聞の見出しや雑誌の表紙から切り取った文字をを組み合わせて、
こう記されていた…「いますぐ暗黒の塔の続巻を出版しろ。さもないとこの熊の命はないぞ」』

…このファンレター(?)を送った人間サイコー!


「動物園の鳥」

2007-08-01 06:55:19 | 本(小説)
「動物園の鳥」坂木司
東京創元社 創元クライム・クラブ

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図書館で借りてきたー。
例によって例のごとく、「鳥」の一字でたまたま手に取ったってだけなんだけど(笑)
で、内容はといえば「桜井京介」を彷彿とするタイプのミステリ(?)小説。
そしてなんとシリーズ三作目にして、シリーズ完結編(汗)
(シリーズ前作は『青空の卵』『仔羊の巣』)
シリーズもので初めて読む本が完結編だなんて、私はなんという邪道な真似を…(ガクリ)

====
ひきこもりの探偵・鳥井真一と、それを支える友人、坂木司のもとに、
過去の事件でかかわりを持った木村栄三郎が、友人高田安次郎を伴い、相談事を持ち掛けてきた。
高田がボランティアとして働いている動物園で続けざまに起きる、野良猫の不審な怪我。
それを気にかけ悲しむ、周囲の人間関係から浮いた存在の若い女性ボランティア。
その謎をとくために、二人は動物園へと向かう。
そこで再会したのは、奇しくも、かつて、鳥井の引き篭もる原因を作った存在だった。
====

さて、ミステリ…とはいうものの、別に殺人事件が起こるわけじゃなくて、
日常の中の謎解きを通してみた、人間観察というか、心理分析本に近い感じ。
あ、最初に「桜井京介」と言ったのは、探偵役の鳥井くんと桜井のキャラが近い感じだからであって、
物語のつくりや何かが似てるってわけじゃないっす。
あと…似てるのは多分、作者のイメェジ。
わざわざ男文体であとがきを書く篠田さんと、どっか似た匂いがするのよ。
司という、作者と同じ名前をつけられたキャラは、物語の中では男性ですが…
…えーと、書いてるのは女性…なのかな? 多分?

こう書くと偏見かもしれませんが。
男性は、ここまで人の感じ方考え方をセンチメンタルに分析しないと思います。
んー、いや、心理分析的なものを書く方も、もちろんいますが…視点がなんか違うんだな。
「黄泉がえり」を書いたSF作家の梶尾さんも、男性にしては叙情的な物語を書きますが、
やはり、女性の感性とはどこか違うし。
あと、出てくる女性キャラが妙にみんな強くて凛々しくて媚びないところ?
(…こんなこと書いて、モロに男性だったらどうしよう)

物語は、読みやすくて、それなりに面白かったですよ。
ああでも、物語・人物像がいささか甘めなので、リアリストな人には向かない。
あと、ミステリと思って読んではいけない。多分物足りなく感じると思う。
主人公を取り巻く人たちは皆、妙に冷静で客観的で善良でお利口で、
全員が主人公と鳥井をとても大事に考えていて…
舞台は全て、彼らのために誂えられた優しい揺りかごって感じ。

物語の「コーヒーに砂糖おおさじ3杯」的な甘さは、いろんなレビューで叩かれているのだけど。
確かに読んで「こりゃ無いよな」と思う反面…
ひきこもりの人が本当に望んでいるのは、こういう環境なのかなぁ、と思ってしまう。
優しく受け入れてくれるひとたちと、慰めと。
それは、あまりにもご都合主義の楽園とわたしたちの目に映るとしても、
ある種の傷ついた人たちにとっては、そういった無条件の愛情の中で自分の存在を肯定することが、
世の中のいろんなことに立ち向かう力を得るために必要な基盤にもなるわけでー。

うん、まぁ、そんなようなことを考えていました。

しかし、なにしろシリーズ最後の作品を先に読んじゃったからなぁ。
案外、前ニ作を先に読んでれば、これが自然な流れに感じられるのかな。

「ハリー・ポッターと謎のプリンス」

2007-06-29 11:56:28 | 本(小説)
「ハリー・ポッターと謎のプリンス」
J・K・ローリング  静山社 2006年

*****

ごめん! 読んでなかったんだ!
古本で安く出るのを待とうと思っているうちに、つい忘れて。
とりあえず、もうすぐ次の映画の封切りと、海外ではいよいよ最終巻が発売でしょう?
古本でも売り切れるか、値上がりするかもしれないと思って、急いで購入。

だんだん、敵の攻撃がシビアになってくるにつれ、話が悲しくなってくるのよねぇ。
しかし、これをシリーズ続けて読んでると、この作品を書くことで、
作者のローリングさんも、いろいろあって、成長したんじゃないか~なんて思うのです。

普通の生活してたシングルマザーが、一躍世界中の注目の的。
金と権力のニオイに寄ってくるのは、良い人間ばかりではなかったでしょう。
マスコミの力を濫用するリータ・スキーター。
ハリーの人気を、自分たちの権力の強化に使うことしか頭に無い魔法省。
戦う相手は敵ばかりではなく、時に、親しい友人さえも、ハリーとのあまりの立場の違いに、
変に距離を置いてしまう。
同じような苦労したんじゃないのかなぁ。


えっと、あらすじは…出版されて時間もたってるし、
もう、ここまで来るとネタバレ云々っていうのは、そんなに重視されないとは思うけど。
…シリーズもののあらすじって書きづらいんだよね。前巻からの伏線とかあるから。
てなわけで、今回は無しで。
とりあえず、影の主人公はスネイプかな? 

読んで驚いちゃったのは、ジニーちゃんが魔性の女になってたこと(笑)
嫌いな人間には(かなり)手厳しい、赤毛に恥じない激しくも魅力的な女の子。
女性作家の書く女性キャラって、基本的に強いよね。
なよなよっとしたヒロイン好きなのは、男性視点ですよ。やはり。

で、その強い女の子たちが、今回何をしてるかというと…
本命の男の子にあてつけるために、わざわざ一番イヤがる男をパーティに誘うハーマイオニー(笑)
本命ハリーに距離を置いて、他の男の子と付き合うことで、魅力全開になってしまったジニー(笑)
他にも、ロンと一時期ラブラブになって、ハーマイオニーに嫉妬丸出しなラベンダーとか
(彼女はちょっと気の毒かな。ロンにとっては、ただの練習台とか場繋ぎみたいな扱いで)
ハリーの心を、ホレ薬で強引にモノにしようと図るロミルダとか(考え方がタフだよなぁ)
いや、男の子たちはタジタジです。特にロンは遊ばれちゃってる。

笑っちゃったのは、あのハートフルなほかほか家族、ウィーズリー家においても、
『息子の恋人は気に入らない』という法則が当てはまっちゃうところ。
フラーは、異性に人気があるのに同性に嫌われるタイプって奴なんですかね。
ジニーにヌラーとか呼ばれてるのが、ものすごい可笑しい~。

えーと、ハリーの恋はここに来て、やっと成就しましたが、最後の戦いを前にして、
まだまだ油断はできないところ。
一番大きな庇護を失ったことで、自分の判断で行動する「大人」にならざるを得ないハリー。
親の暖かさ、家庭を知らないハリーが、初めて知った「自分の居場所」が魔法学校だったのですから、
今回の出来事は、本当の意味で巣立ちの時期…ということなのでしょうか。

とはいえ、あのダンブルドアが、自分が亡き後のことを考えていなかったとも思えません。
最終話でも、何か、手助けとなるようなものを遺してくれているんじゃないかなーと思ったり。

とりあえず、次回への謎。R.A.B。
今までのローリングさんの傾向では、容易く読み取れる、親切な伏線の張り方はしない人なので、
次巻でその正体が明かされるのを待とうと思います。

そういえば、ダンブルドアの弟って?


ペギー・スー

2007-05-21 13:28:21 | 本(小説)

「ペギー・スー」 セルジュ・ブリュソロ
 角川文庫 平成17年発行
 
****

ハリポタが大ヒットしてからこっち、ぽこぽこと現れ始めた
「少年少女魔法冒険物語」の一つ。
それをどうしてここで紹介するのかっていうと、この物語、おそらく少年少女向け
に書かれたにも関わらず、やることがけっこう残酷なのですね。
なんでも、原作者のブリュソロさん、地元フランスではサスペンスやホラーの名手で、
「フランスのスティーブン・キング」と呼ばれるほどだとか。
(どんな作品で有名なんだ?と検索したけど、日本語検索ではググルでも
ウィキでも出てこなかった…フランス語で検索なんてできないよぅ)
とりあえずー。ホラー魂を持つものがファンタジーやるとこうなるんだなぁ、
というのを、まざまざと感じさせる作品でありました。

=====
第一巻 魔法の瞳を持つ少女

世界でただ一人、『見えざるもの』と呼ばれる悪戯好きなお化け達の姿が見える少女、
ペギー・スー。
彼女が思い切り睨みつければ、見えざるものたちは焼け焦げて力を失う。
ただしその力は無制限ではなく、使ったあと疲労のあまり酷い頭痛が襲うので、
いまだペギーは見えざるものに抵抗できる存在ではない。
まだ彼女がか弱い少女のうちに、なんとか殺してしまおうと色々な悪巧みをする
見えざるもの達のせいで、ペギーは周囲から頭のおかしい女の子と思われ、
家族からも孤立していた。

やがて、見えざるもの達は、彼女の引越し先のある町に罠を仕掛け、
住人たちをそこに閉じ込めてしまう。
彼らを照らす不気味な青い太陽。それは、その光を浴びたものの知能を
飛躍的に増大させるものだった。
「天才」になるべく、自ら進んで青い光を浴びたがる住人たち。
やがて、その光の影響は動物たちにも現れはじめ、人間に不当に支配されていた
ことに不満を持ち、逆に人間を支配下におこうとする動物たちと、
人間たちとの対立が始まる。

=====

あらすじだけ見ても、別に怖そうでもないでしょ。
文章も、ぜんぜんオドロオドロしくなく、それこそハリポタ風の少年少女ものって感じ。
…でもね、食糧難で皆が餓えてる中、催眠暗示にかかった親が自分の子供を
子豚と思い込んで、丸焼きにして食べてしまう、だなんて、
フツー日本のジュブナイルではありえない展開ですわ。
多分作者さんは、多くのホラー中毒患者(?)たちと同様に、
食事中、にこにこ笑いながら水死体の話で盛り上がれるタイプの人かと思われる…
(親近感)

で、その傾向はこの続編にもそのまま引き継がれており、魔法をかけられた子供が、
「悪魔に食べてもらえるような立派な野菜になる」ために首から下を土に埋めていたり、
魔法ではちみつパンに変えられた子供を、他の子供が食べてしまったり、
雲の上で暮らすうちに全身真っ白になってしまった男が、自分の色を取り戻すため、
色つきのものを片っ端から食べてしまう(おそらく人間も!)など、
「人間が人間を食す」タイプの残酷なエピソードがテンコ盛り。

また、登場人物がみんな一癖二癖あって、常に主人公の味方ってわけでもないところも、
大人のシビアな目線の物語だなーと感じます。
利益の方向が一緒なときは味方でも、何か起こればあっという間に離反しちゃう
みたいな。
よくある、主人公に何故かみんなが共感し、その働きを助けるために一致協力する、
って感覚無いの。
みんなまず自分のことを考えてて、ペギーのやることを否定はしないけど、
でも自分は自分、て感じをガッチリ持ってる。
それぞれの登場人物が「自分が主役」な感じ。
考え方に甘さが無い話だなー、と思いましたですヨ。 
現実って本来こういうものかもしれない。

一応作品リスト書いとく?

ペギー・スー  魔法の瞳を持つ少女
        蜃気楼の国へ飛ぶ
        幸福を呼ぶ魔法の蝶
        魔法にかけられた動物園
        黒い城の恐ろしい謎
        宇宙の果ての惑星生物

 ここまでは文庫化してます。私が読んだのもここまで。
 あとは単行本として、 ドラゴンの涙と永遠の魔法 があるようですー。
       

「姉飼」 遠藤徹

2007-04-17 09:42:45 | 本(小説)

「姉飼」 遠藤徹
2003年 角川書店
2006年 角川ホラー文庫

*****

図書館でハードカバーを借りてきたのですが、
超表紙こわーーーー(汗)
これは人前で読めないな…。
電車の中でこの本を熟読できる人がいたら尊敬します。

内容はインパクト勝ち。
最初の「脂祭り」の時点から既にかなりイケナイ匂いがしてましたが、
「姉」の姿や扱い、それに魅せられるもののイっちゃった感じが、なんともハァ。
読んで不快感を覚えるひとも多いと思うけど、いいにしろ悪いにしろ、
とにかく、一度読んだら印象キツくて忘れられない話。

なんというのでしょう。イケナイ匂いとはいっても、別にエロじゃなくってね。
鬼畜というか倒錯というか、人間としてのタブーに触れるというか。
そういう意味で「人にはお見せできない性向」の感じがある物語。

ロックコンサートなんかで大きな音をガンガン聞かされてると、
最初は苦痛に感じても、だんだん慣れて楽しくなっていくように、
「過ぎた刺激による興奮」を呼び覚ますような…
んー、ある意味悪夢のような。そういう世界です。

表題作が強すぎるためか、一緒に掲載されているほかの作品の印象は薄い感じ。
いまいち、かな。

この本が出版されて4年くらいたってるわけですがー、
その間、他にどんな物語を書いたのか気になって調べてみました。

「弁頭屋」人間の頭を弁当の容器として売っている店の話。
「くくしがるば」寝耳に水でご懐妊? なんやら異次元的な話らしい…
「ケミカル・メタモルフォーシス」沈黙の春の解説本。ほかにもちょっと。 
「プラスチックの文化史」 環境ホルモンの話とか? 
あと音楽関係と資格関係の本が検索されましたが…同姓同名かな…

弁頭屋は、いかにも姉飼の作者らしい物語のようです。読んでみなくちゃ。
ケミカル・メタモルフォーシスは…
「沈黙の春」は、昔、目を通したんですよ…最初の30ページくらいはね(笑)
最初のほうは面白かったんだけど、だんだん飽きてきちゃってさー。
でも、書いてる趣旨は(多分)伝わってるから結果オーライ(←?)
海外ものって、訳にもよるけど読みづらいのよ。
基本的に改行しないからページぎっちぎちの真っ黒だし。

で、それを読みやすく解説(あえて誤読)した…? ってことなのかなぁ。
内容についてあんまりわかりやすいレビューが見つからないのよ。
自分で読めってことかい?
(うちの近くの図書館、品薄なんだよねぇ)

「姉飼」系の話と、現実の問題を、皮肉を交えた視点でブラックに
解説していく系の本? て感じかな…
読んでみないとわかんないけど、ちょっと見、執筆傾向が異色なひとですねぇ。

少しそのへんの本を探してみようと思います。
面白かったらまたなんか書きますね。

「水霊」 原作

2006-12-20 13:58:57 | 本(小説)

「水霊」 田中啓文
角川ホラー文庫 1998年

****

原作読みましたっすよぅ!!
リングらせんからこっち、バーっと流行ったホラーブームも
さすがに下火とあって、あの黒い背表紙の角川ホラー文庫も、
揃えて置く本屋が少なくなりました。
この本も、近くの本屋に無くて、すぐに手に入らなかったですー。
もー、人気ホラー焼直し臭い粗悪な映像作品ばっかり作ってるから、
ホラー業界全部がこういうことになるのさ。
ホラー小説の中には、もっと良いものも深いものも、
吹っ切れて馬鹿っぽいのも結構あるんだから、
もっと真剣にやってほしいよ…ぶつぶつ。

で、読んだ感じ。
これは思わず笑っちゃうほど別モノだぁ!!

舞台となる場所は違うわ、主人公は違うわ、ラストは違うわ。
一体、製作者は、この原作のどこを映像化したかったんだか
わからないくらい、原型留めてませんがな…
…これで原作付き映画だとぉ?!(怒)

100歩譲って、これは原作とは別視点の人間から見た一連の事件の
あらまし…とも、考えられなくもないですが…全然生きてナーイ(汗)
仮にも原作を読んで、それを映像化しようと思ったのなら、
この作り方は無いと思う。作者への敬意を欠いている。

実際…原作つきの映画やドラマでは、こういうのは珍しくもないんだけど。原作があったとしても、映像は監督やディレクターの作品でもあるわけだし。
でも、その結果すごくいいモノに仕上がるのは、
どれほど内容を変えていても、どこかに原作の意図をきちんと
「わかってる」感じのものが多いよ。
「こうすればウケるさー」って感じで作ったものは、おもしろくない。
ヤりまくりの裏ビデオと同じで、見終わったら後に何も残んない。

ていうか、原作の田中さん怒ってんじゃないですかね。
それとも、ここまで変えたからには、田中さん自身も
映画脚本に関わったのかなぁ。
(でも、それならもう少し歴史色や郷土色が出てても
おかしくないと思う)
んー、もしかして、カドカワがホラーブームよもう一度!と
無理に巻き返しを図りましたか?
初版から8年経って映画化する理由も無いよね~ 
でも、それなら予算をケチっちゃダメだな~(笑)

さて、その原作ですが。
九州・宮崎を舞台にして、すでに滅びた村と神社の遺跡に
イザナギ・イザナミ神話を絡め、霊媒体質の可憐な少女あり、
神降しあり、半ゾンビあり、さらに「パラサイト・イヴ」系の
サイエンスホラーまで併せ持つ、骨太の作品でありました。
ラスト近くで明かされる、「黄泉醜女」の正体にはもうビックリ!
ただ、民俗学的な薀蓄がけっこう多いので、
興味ない人にはそのへんダルいかもしれませぬ。
うん、でも、読んで損はなかったな。内容濃ゆいー。

映画のほうは、もうレンタル返しちゃって手元に無いんで、
もう見直しできないんだけど。
これ…もっとマトモに映像化してれば、もうちょっと話題に
なったかもしれないのに…リングやらせん、呪怨みたいな、
一般人にどわーっとウケる感じじゃないけど、
ジミにいつまでも根深いファンに語られてたかもしれないのに…

ちょっと残念だなー。

親切なクムジャさん

2006-11-24 23:22:33 | 本(小説)


「親切なクムジャさん」 大石圭
角川ホラー文庫 2005年

映画版:公式 
***

ちょっと判断に迷って、映画を見るまでレビューを保留してました。
もともと韓流は苦手なので、韓国映画はホラーしか見ないもんだからー。

文庫のノベライズは呪怨・オールドボーイ・四人の食卓でもお馴染み大石圭さん。
当初私は、映画のノベライズていうモノを一段低く見ていたんですよね。
だってねぇ。今まで見たものって、ただ映画をなぞっただけの、そこそこ文章を書ければ誰でもできるっしょ、ってモノが多かったんだもの。
本そのものも大体薄っぺらくて、口絵ページに映画の一シーンの画像が使われてて。
ビデオやDVDが普及した今となっては、わざわざこんなのを買ってまで、お気に入りの映画の物語を手元におきたいとは思わないよね。

そういう意味で、大石さんのノベライズはちょっと面白い。
語りの視点が違ったり、映画では描かれていない部分について詳しかったり、何より『映画とラストが違う』なんてノベライズ、いまだかつて聞いたことないっすよ(笑)

*****

幼い男の子を誘拐し、殺した罪で女子刑務所に服役していた、イ・クムジャ。
刑務所内で、彼女は『親切なクムジャさん』と呼ばれ、慕われていた。
しかし、彼女はその天使のような顔の向こうで、自分の子供を奪い、無実の罪で陥れた男への復讐計画を練っていたのだ。
刑務所内で知り合い、彼女を恩人と慕う人間たちを操り、男へ近づいていくクムジャ。
そして、ついに復讐を果たそうというとき、クムジャは、男の持つ携帯電話に目をとめる。
そこには、かつて殺した男の子の宝物だったビー玉と…その後に殺した4人の子供たちの『記念品』が飾りつけられていた。
クムジャは、子供たちの遺族を集め、その男の処遇を決めてもらうことにする。

*****

読んだ感じは…サツバツとしてますね。色々と。そういうの、別に嫌いじゃないけど。
オールドボーイと同じ「弱肉強食」で「容赦ない」匂いがする物語。
そして後味は最高に悪い。
とりあえずクムジャさんは絶対敵にまわしたくない女No1だ!(笑)

小説を読んで思ったのは、この登場人物たちの思い込みの強さは、ノベライズの大石さんのカラーなのか? それとも原作の雰囲気なのか?ってこと。
そこが知りたいがために、映画を借りてきたわけです。

そして…見た結果…んー。
前半の、復讐のためにクムジャが他の囚人と関わっていく部分は、ノベライズのほうが良かった。
後半の、遺族による惨殺復讐シーンは、映画のほうがいろいろ考えさせられた。
…ラスト部分は、個人的にはノベライズが好み。
そうそう、映画では途中で、銃の練習のために犬を射殺する場面があるんですが、ノベライズ版では、クムジャは犬を殺せなかった。そのへんは、すごく「弱者の味方」の大石さんらしいと思った。

13号の時もおもったけれど…『復讐』って位置づけが難しいね。
どうしても被害者の目線で見れば『こんなやつ死んで当然だやっちまえ!』って気分になるわけだけど。
結局、それだって、ヤクザ屋さんのオトシマエと変わらない…
つまりはハムラビ法典の『目には目を』をいいように解釈したのとも変わらないわけでしょう。
(ハムラビ法典での目には目を…は本来、復讐的な意味ではなく、むしろ、それ以上の罰を要求しない抑制の意味があるのだ…と何かで見た覚えが。キリスト教の右の頬を打たれたら…に相当するような、人に誤解を招きやすい文脈だわ(汗))
子供の喧嘩で『だって○○ちゃんがやったから!』というのともどこが違うかと言われれば…どうなんだろうな。

あれこれ考えると、法としてはやはり復讐を認めるわけにはいかないんだろうけど、当事者の気持ちを考えると理解できてしまうから…
私だって、自分の子供がこんな風に殺されたら、同じように…いやそれ以上の復讐の鬼になるかもしれない。
『ただ殺すなんてナマヌルイ。子供以上の恐怖と苦しみを与えてやるッ!』て気持ちになるだろな…

映画で見たとき、遺族それぞれが犯人に拷問を加えた後の表情がね、なんかリアルだった。
放心したような、怒っているような、悲しんでるような。
復讐してもどうにもならないなんてことは、百も承知でそれでも収まらない人たちに、「彼を殺しても子供は戻ってこない」なんてセリフはとても無力で、無意味なんだよね。

しかし、罪と罰についてのこの認識が民族性によるものだとすると…いろいろ納得のいく部分はありました。ええ。
罪と等価の罰を与えるために、私刑をも辞さない姿勢は、潔いとも言える、かも、しれない。
でもなぁ、映画版は、クムジャ生き残るんだよね。あれだけ罪と等価の罰について滔々と語ったくせに。
自分が子供を護るためにとった行動が、その後4人の子供の命を奪ったと知ったうえで。
罪を認めて生きていくのと、アッサリ死ぬのと、どっちが楽かと言われれば迷うけど…。

なかなか心荒む話ですので、暴力に免疫の無いひとはやめたほうがいいかなぁ。
多分、私のブログを読んでるタイプの人は大丈夫だと思うけど…