鼠喰いのひとりごと

DL系フリーゲームや本や映画などの感想を徒然に

誕生

2005-06-30 22:33:20 | 雑事
私は実のところ、半分以上…8割くらいは、結果を期待していなかった。

え? 何のことかって? カブトの幼虫のことですよ~。

動きが全くなくなったのが、5月の25日前後。
順当に行けば、その後一月ほどで羽化の見込み…とはいえ、それから一月強たって、今朝わたしが飼育用ペットボトルに霧吹きしながら考えていたのは、この中で多分死んでいるだろう幼虫を、いつごろ取りだせばいいか、ということだけだった。
どのくらい待って見切りをつければいいだろうか? 一週間? 二週間? 子鬼にはどう説明しようか?

しかし、本日夜9時半!
子鬼を寝かしつけたあと、散らかったリビングを片付けている時。
ガサ…とビニール袋の音が。

最初、山積みになった本か何かが、放り出されたビニールに干渉したのだろうと
(そういうことが良くある、散らかった我が家…/汗)気にもとめなかったのですが、
ガサガサいう音は何故か続きました。
そして、何事かと確かめてみると…音源は、カブト幼虫の入ったゴミ箱だ!!

ここで説明。
我が家では、上を切り取ったペットボトル(2リットル)に土を詰め、それで幼虫を飼っていたのですが、そのままで置いておくと、万が一羽化した時、部屋中をカブトムシが飛び回るという事態に陥るため、そのペットボトルごとビニールを敷いたゴミ箱に封じ、上は鉢底ネットで蓋をする、という方法を取っていました。
なんでゴミ箱って…だって、ペットボトルが入って、なおかつ高さに余裕がある容器って無かったんだもん…(汗)
ペットボトルにはスレスレまで土が入ってるため、その上に蓋をすることはできなかったのですよぅ。かといって、上部に余裕が無いと、羽化したカブトが可哀想だしね。


羽化…した? してる? まさか? ホントに??
確かめようとして、ここで思いとどまりました。
開けて部屋中ビンビン飛び回ったら、絶対捕まえられない!!

まず、ゴミ箱上部を覆う鉢底ネットの半分に重い通販カタログを載せておき、寝室に走りました。そして、かねてから用意してあったプラケースを持ってきて、やはり用意済みだった昆虫マットを急いでぶちまけ、水を入れてがすがすと手でかき回し(湿気が必要なので…)次に昆虫ゼリーを開け…ようとした時。

振り返って驚愕!

出てるよ! 出てきてるよ!

おそるべしカブトムシ。さすがは昆虫髄一の力持ち。
ガムテープ留めした上に、その半分に重い通販カタログを載せた鉢底ネットの逆端を持ち上げ、その隙間から出てきてしまったのです。

と、飛ぶ! 困る!

慌てて近寄り、つかまえようとしましたが、何しろ生まれたて(?)
元気良すぎて、なかなか捕まえられなーい(汗)
もう、焦って焦って。 飛んだらどうしよう、とか。
ゴチャゴチャやってる間に、足とか取れたらどうしよう、とか。
最後は、半ば両手で覆うようにして、プラケースに落とし込みました。

予想に反して、成虫はメスだったのですが…いやー、もう元気元気!
ホームセンターで売ってる、半死半生のカブトとはイキが全く違いますね。
今も、プラケース内で飛び回って、ビビビビィィン……ゴン!とか、怪しい音をたてています。
さっき見たら、ひっくり返ってジタバタしていて、冷や汗をかきました。
(ひっくり返ると、自分では起き上がれないのです。悪くすれば、そのまま死んじゃうことも)
明日は、ひっくり返り防止のために、落ち葉やら木やら買ってこないと…ブツブツ。

まぁともかく。無事に羽化した、我が家で最初(で最後にしたい。できれば)のカブトムシ。
命名、カブ子(笑)
苦労した甲斐もあって、なかなか可愛く見えてきました(笑)

これからひと月、よろしくね。



SAW

2005-06-24 00:23:02 | 映画(ホラー)

「SAW」 2004年
監督:ジェームズ・ワン
出演:ケアリー・エルウェズ ダニー・グローヴァー 

***

ひとまず、最後まで見た感想。
「えええーーー?! マジかい?!」


最後が意外。これ、皆さんがことごとくレビューで言う言葉なのですが、
…確かに意表をつかれました!

…というか、あまりにも皆が意外意外言うものだから(笑)この結末も、一応は予測範囲内ではあったのです。こういう展開もあるかも、と。
でも…話が進むにつれて、そりゃあまりにも不可能だろ?という設定だったので、アタマの中で一番に消去してしまっていたのですよぅ。
だってさ、8時間っすよ8時間! 無理でしょうよ?


ストーリーは、いきなり闇の中、古びて寂れきったバスルームから始まります。
何がなんだかわからぬまま拉致され連れて来られ、対面の壁面に鎖で繋がれた二人の男、アダムとローレンス。
その二人の間に転がるのは、見知らぬ男の自殺死体。
二人のポケットに入っていたカセットテープに残されていたメッセージは…「時間内に、ローレンスがアダムを殺さなければ、ローレンスの家族は死ぬ」

二人は互いを完全には信じられぬ緊張に包まれながらも、部屋に散りばめられた無数のメッセージやアイテムを駆使し、脱出を試みる。
果たして、この残酷なゲームを仕掛けた殺人鬼「ジグソゥ」は一体誰なのか。
そして、二人にこの先待ち受ける運命は?


見始めて、最初の印象は、よくアドベンチャーゲームでありがちな「部屋から脱出する」ヤツ。
たとえばここのような。

工夫を凝らし、取れるアイテムを探し、少しづつ謎を解くところがちょっと似てる。
なんと言っても、いろいろと「ギリギリ一杯」な道具立てが緊張感を煽ります。
もう少しのところで手の届かないところにある道具や、事前に二人に互いへの不信感を煽っておいて、片一方にだけ二人分手に入るアイテム。
計算されつくした「制限」と「誘導」が凄い。
なんでも出来るように見せかけて、二人が取れる行動は一本道になるように仕向けられているのですよね。
そして、これと同じように張り巡らされた「罠」は幾重にも重なり、本当の真犯人を覆い隠してしまう…
見ていて、少し、京極夏彦の「絡新婦の理」を連想しました。
もちろん、SAWはアメリカの映画ですから、だいぶ印象は違うのですが。

それにしても、ジグソゥの起こす犯罪は、どれも本当に怖いです。
一応、それに対する理由(のようなもの)も作中説明されていますが…それだけじゃここまでしないでしょ。絶対殺人快楽症だって~(汗)
生きるか死ぬかの究極の選択を迫っているように見えて、その選択肢は「生と死」ではなく「死と死」だったりするところが嫌だぁぁぁ(汗)
こんな殺人鬼、世に出て欲しくない…いや、ホントに。本気で。

話変わって、非人間的な犯罪方法とは裏腹に、画面でのホラー効果はおとなしめ。
血が苦手な私には「うえぇ」というシーンも一部ありましたが、全体にそれほどスプラッタじゃないし、クリーチャーも出てきません。
なんていうのか、場面や登場人物が狭く限定されるぶん、物語や伏線はとても考え抜かれている、と感じました。
見た後、このタイトルがすごーく納得がいく、というのも洒落てていい感じ。
アメリカ映画で、こういうダブルミーニング的な題名つけるの珍しいような気がする。

最後の最後で、「ゲームオーバー!」と台詞が入るシーンでは本気でぞくぞくしました。
全ては俺のために!と主張しているようなあのシーン。
まさしく、最初から最後まで、本当の主役は彼だったのですから。

うー、ネタバレにならないように書いてたつもりだけど…
聡い人なら、色々もうわかってしまうかもしれませんね。

でも、仕掛けが最初からわかっていたとしても、これは楽しめる映画です。
ことに、謎解き系が好きな人なら、おすすめです。

SAW 公式ページ


ここ数日

2005-06-16 11:55:49 | 雑事

ダンナが出張だったので、本読むぞー、ビデオ見ちゃうぞー♪とわくわくしていたのですが…
一昨日もその前も、子鬼とともに夜9時から爆睡。
夜中ごそごそして起こしてくれるダンナがいないと、朝まで寝てしまうらしいです…
うーむ、世の中うまくいかんもんだの。

というわけで、たいして見てないし読んでない…

昨日かろうじて読んだのはカジシン2冊です。
私の行きつけのレンタル屋は古本屋と抱き合わせなので。
あと、100円だった(笑)「窓際のトットちゃん」
あまりの懐かしさと安さに買っちゃったよん。でもいい話だー。

カジシンの本「黄泉びと知らず」を買って来て、
読もうと開いたとき、一枚の写真が入っていました。

中学か高校の卒業式。ステージ壇上を斜め横から写したもので、
卒業証書を貰った男子生徒が、ステージの真正面にある階段を下りていくところ。
その向こうには、証書順番待ちらしい数人の子が、(おそらく)神妙な顔で並んでいる。

全体にピンボケで、誰の顔もよくわかりません。
多分、階段を下りる子を撮りたかったのかな?
とりあえず、不要な写真だから栞にでも使ったのでしょう。

たまに古本を買うと、レシートやらメモが挟まってたり、裏表紙に判子が押してあったり、
○月×日購入、なんて覚書めいたメモがあったりします。
売るときは、一応店側もぺらぺら捲って挟みモノの確認をするわけですが、
この本は真新しかった上に、写真も本の途中ではなく目次の前くらいに挟まっていたため、
見落としたのでしょうかね。私も買うときぺらぺらしたけど、気付かなかったし。

他の人はどうか判りませんが、私にとっては、こういうのって面白い。
見ながら、いろいろ考えてしまいます。



前の持ち主は学生かー。
本は初版だな…カジシンは、決して今学生の人にとって、知ってる範囲のメジャーな作家
ではないだろうから、きっと、黄泉がえりの映画を見て買ったんだろうな。
何故売ったんだろう? 初版で買って、しかもこの本の綺麗さ…。
一度読んで気に入らなかったか…映画とカラーが違いすぎたからかな?

いや、この卒業式の写真…例えばこれが高校だとすると、進学とか就職とかで、
自分の家を離れるとか…それで、荷物の整理に古本を…?
それはないか。実家があるなら、気に入った本は置き去りにしとくのが普通だし。

ん、待てよ? 同時に買ったカジシンのこっちの本…
初版、1992年…14年前。しかもすごく綺麗…。
カバーをかけてあった綺麗さもあるだろうけど、本自体も、それほど読み返された気配なし。
同時に店頭に並ぶあたりも、なんとなく、同じ持ち主だった気配が…

(頻繁に見ていたわけではないが、ここ数ヶ月で並んだのは確か。
カジシンの本は去年同じ店でチェックした覚えがあるから)

……もしかして、これは親のほうか?


…などと、一人いろいろ楽しんでいます。写真いちまいで(笑)

ああ、なんかまるで、少女グラビアで一人妄想するヲタクみたいかも…(汗)
で、でもでも、同じ本を好んで読んでる人って、なんか気になりません?(汗)

その後の幼虫。

2005-06-14 00:23:11 | 雑事

その後のカブト幼虫ですが、一度、餌の腐葉土が足りないか何かで脱走し、
再び新しく土をセッティングしなおしてから、全然姿を見ません。

既にサナギになったのでしょうか。
…それとも、死んでいるのでしょうか。

気分はシュレディンガーの猫。

おえかきツール

2005-06-11 21:12:16 | 雑事

というのが出来たので、ちょっと試してみました。

どのみち、ペンタブなど無い身でありますが、
あったところで上手になど書けないので気にしない。

かきかき。かきかき。
おお、なかなか良く書けたでないの。

画面いっぱいに使ってないから、妙な間があるけど、ま、シロウトだし!



書いたのは自画像です。
こんなヨレヨレの状態でも、実物より150%くらい(当社比)美化してありますが、
それでも自分だと言い張ります。ええ。いいのさ二次元なんだから!

その後、余白カットしようと思って画像処理したら、何故かサイズがアイコン並に小さく変わってしまった…ど、どうしてもできない! 何故~?!

ダメです。私にとって、画像は神の領域のようです(汗)
私のようなラクガキ素人のために、おえかきツールでも余白カットや画像サイズ変更できるといいのにな。

自殺サークル

2005-06-10 14:20:42 | 映画(ホラー)

「自殺サークル」 2001年
監督:園子温
出演:石橋凌、永瀬正敏、さとう珠緒、宝生舞、ROLLY

***

意味があるよに見せかけて、実はなんにも無いんじゃないか? と思わせる映画。
冒頭のシーン…54人の女子高生集団飛び込みのシーンは確かにおおっ!?と思いましたが、
その後の展開が妙にぎくしゃくしている感じがあります。
最後の理屈はいりません。死ぬことに意味が無いなら、それで通せば良かったのに…。
前半にはさっきまで普通に笑っていた人間が、ふいに自殺してしまう「理解できない恐怖」が、あっただけに、後半は残念でした。
最初のインパクト充分だったのになぁ。



ある日、新宿のプラットホーム。
あちこちで談笑する女子高生の群れで賑わうそこは、いつもと全く変わりない日常の風景だった。
だが、電車到着のアナウンスと同時に、彼女らはプラットホームのすぐ横に整列し、無邪気に手を繋ぎあう。彼女達の表情に走るのは、ほんの少しの緊張。
いっせーの! という掛け声の後…
彼女達は一斉に線路に向かって飛び降りた。
ひき潰される体、ガラスを染める血飛沫。ホームは鮮血に染まり、人々の悲鳴がこだまする。

それが、これから日本中で巻き起こる、原因不明の集団自殺の幕開けだった。



「あなたと、あなたの関係は?」
作中で重要と思われる、この言葉から始まる問い…一見哲学的な響きを孕んでいますが、私感として言葉遊びの域を出ません。
いくら愛するものを失った絶望を感じていたとしても、この言葉に、人を死に追いやるまでの説得力は感じられない。(映画でそこまでの説得力があると危険ですけどね)

思春期なら一度は、自分は生きてて意味あるんだろうか、という虚無感を持つものかもしれませんが、そこからいきなり自殺に走るか?普通。
むしろ、映画の途中で出てきた、集団ヒステリー的な学校の屋上からの飛び降り。
みんなで冗談交じりに「死のうよみんなで!」という言葉からどんどん調子に乗り、しまいにはみんなで飛びおりてしまう。あの辺りの方がまだ理解できるかな。

「あなたと奥さんの関係はわかっています。あなたが死んでしまっても、あなたと奥さんの関係は変わりません」
「あなたとあなたの子供の関係はわかっています。あなたが死んでしまっても、あなたとあなたの子供の関係は変わりません」
「では、あなたとあなたの関係は?」

「あなたが死んでしまっても、あなたと世界の関係は変わりません」

このセリフはまるで、新興宗教の洗脳のようですね。
「あなたはどうやってスキップするの?」と聞く。
途端に、今までどうやってスキップしていたのかわからなくなる。
「あなたはどうやって呼吸してるの?」と聞く。
途端に、意識してしまって、うまく息ができなくなる。
それと同じ匂いがします。

この意味はなんだ?と聞かれれば、人は必死にそれを探します。
たとえそこに、最初から意味などないかもしれない等と、夢にも思いません。
詐欺とかハッタリとか…下手なヒッカケに近い言葉のように思います。

何とどう関係があろうと無かろうと、ひとは生きていける。
意味などなにもなくても。

ああ、なんだかね、これはちょっと肌に合いませんでした。

前半は良かったけど、後半は、なんとなく物語の進むべき方向が違うような気がして。
なんだかね…なんだか…。
そう、不愉快、というのが一番しっくり来るかな。一体何故だろう?

…妙な演技してたROLLYのせいかしら(笑)

自殺サークル

湘南人肉医

2005-06-10 00:54:16 | 本(小説)

「湘南人肉医」 大石圭
角川ホラー文庫 2003年

***

先日御紹介した「殺人勤務医」と同じ、大石圭さんの本です。
ことば日和のまおさんからも、コメントありましたとおり、
「殺人勤務医」と双子のような構造を持つ話でした。

残酷描写どちらが上かと言われると迷うところですが、
「殺人勤務医」が殺人のバリエーションで勝負するなら、こちらは人体解体の妙技。
一時期、私、開くネット小説、読む本、みんな人肉だったことがあり、
かなり「オナカいっぱい胸焼け気味」だったのですが、
久しぶりに読むこの本はそれなりに楽しめました。

しかし、さすがに小説の構造が似ているだけあって「勤務医」と「人肉医」、
どちらか一冊を読んだ後に、もう一方を読むと、さすがに似てる分だけ
感銘が薄れてしまいます。
好みとしては、最初に読んだ「勤務医」のほうが好きかな。



主人公は「神の手」を持つ整形外科医、小鳥田優児。
彼は体重130キロを越える巨漢ながら、周囲の人間には不思議に嫌悪感を抱かせない、
不思議な魅力を持っていた。
多くの収入をボランティアにつぎ込み、海外の子供たちを支援する彼。
柔和な笑顔で、女性たちに親しみを感じさせる彼。
しかし、彼の家にある大型冷凍庫の中には、彼に食われ、首だけになった女たちが
二度と閉じない目を見開いたまま凍りついていた。
女を殺して食うことで性的な快感を得る彼の行為は留まることを知らず、
次第にエスカレートしていく。


さて、人肉嗜食についてですが。
…やたら詳しいんですよね。この本(汗)
いや、実際食べたことが無いので、それが真実なのかどうかはわかりませんが…
各章につけられたタイトルもいちいち凝ってる。
第一章が「人間の頭が茹で上がるには1時間かかる」ですもんね。
それに…ねーねー、文中での「食べられない内臓の部位を捨て…」って一体どこ?(汗)

過去にこういった趣向の小説が無いわけではないのでしょうが、
大概は解体法や料理法に終始して、食べた味とか感触とかあんまり触れないような気がして…。
このリアルさが怖い。このリアルさが。
作中で随所に挟まれる、人肉嗜食に関する今までの事件のデータも、
事実とわかるだけに、その陰惨さに驚きます。
フィクションより、現実の事件の方が余程酷いんだもんな…。

作中の殺人鬼は、どうやら一般的な性愛の感情ををそのまま「相手の肉を食べる行為」に置き換えてしまっているようなのですが、このあたりも、読んでいて不思議な納得感がありました。
普段、何かストレスが溜まったとき「食べる」ことでそれを解消しようとする置き換えが起こる人は多いですもんね。ましてや、食欲や性欲のような根源的な欲求は、互いの距離が近そうです。

「勤務医」との大きな違いは、主人公の性格と、ラスト…でしょうかね。
近作では、確かに主人公は色々抑圧されていたのですが、基本的に彼自身の性向として
人肉方面(笑)への志向が最初からあったように思うのですよ。
つまり、その…「勤務医」と違って、同情の余地があんまり、無い。

そして、ラスト。「勤務医」ではほのめかされるだけで終わる部分が、
「人肉医」はもう少し先まで書かれています。
これは、ラストが一緒にならないように、っていう苦肉の策なのかしら…
それとも「人肉嗜食」というタブー制の高いテーマを使ったがゆえの、
読者への精神バランス回復の手段なのかしら…って考えすぎか。それはさすがに。

しかし、これだけ似た趣向のものを二冊出しても、どちらも「読ませる」ことに、
感服してしまいます。
普通、なんだー、また似たようなーって感じると思うのね。
確かに、似てる。そもそも基本の組み立てはおんなじだ。
でも、だからといって、途中で読むのをやめようとは思わない。
これって凄いことですね。

人肉に拒否反応の出ないかた(?)にお勧めです。
…ま…広い意味で、愛の話と言えなくもナイ…?

***
追記。ちょっと検索してみたら、映画化されてたんですね…
大石さん自身のコメントが見られます。

「最後の晩餐」 (湘南人肉医、映画化)公開記念座談会

最後の晩餐 公式サイト

ホテル カクタス

2005-06-07 23:56:44 | 本(小説)

「ホテル カクタス」 
著/江國香織 画/佐々木敦子
集英社文庫 2004年

***

読んでホっとする本。
相性がいいのか、単純に肌に合うのか、
私にとって江國さんの文章は、水のようにさらさらとしていて、
読んだ後、すうっと自然に身体に馴染むような気がします。


さて、「ホテル カクタス」。
小説というよりも、大人のための童話です。
「ホテル カクタス」に住む、性格も生き方もまるで違う3人(?)の
さりげない日々の暮らしと友情の物語。
コラボレーションした画家さん、佐々木敦子さんの
穏やかな色彩の絵も綺麗に嵌っていて素敵でした。

3人(?)
今、このクエスチョンマークは何? と思ったかたは鋭い。
童話だと言ったのにも理由がありまして、実は、登場人物は
「帽子」と「きゅうり」と「数字の2」なのです。
比喩でも、あだ名でもありません。
そのまんま、「帽子」は頭に被るやつ、「きゅうり」は野菜、「数字の2」は数字。
…ビジュアル想像しずらぁぁぁ(笑)

しかも、彼らのその姿は、そのまま彼らの性格を暗示しており、
「帽子」はくたびれた世捨て人、「きゅうり」は性根の真っ直ぐなスポーツマン、「数字の2」は几帳面で神経質といった、思わず「そうそう、そうじゃなくちゃね!」と頷いてしまうような、百万馬力の説得力でこちらに迫ってくるのです。

3人はふとしたことで知り合い、互いの部屋へ遊びにいくようになり、たくさんの楽しい時間を過ごした後また別れていくのですが、それらがまた江國さんの魅力的な文体で淡々と語られていて、とても優しい。

さらさらと、水が流れるように、作中の時間は静かに流れていきます。
ごく自然に出会いと別れを受け止めて、三人もまた自分の人生に戻っていきます。
全く性格も嗜好も違う三人、本来なら友人にはならなかっただろう三人は、
「ホテル カクタス」という名の場所を接点にして、しばし、人生の道連れとなるのです。

この本を読んで、一番に思ったのは、なんだか下宿とか、部活とか、学校生活みたいだな、
ということでした。
普段…特に大人になると、自分と全く嗜好の違う人間と付き合うことは稀です。
嗜好の同じ人間のほうがそもそも一緒にいて楽ですからね。
違う趣味の人間とは、自然と疎遠になっていく。

ただ、毎日のように有無をいわさず顔を会わせる関係から、
思いがけない絆が生まれるということもあるわけで。

学校や会社で、全然付き合いの無い人間と、ある日たまたま何かで一緒になったら、
案外いい感じのひとだった、とか。
自分と全然違う見解がまた新鮮に感じてしまうとか(笑)
これは、そんな感じのお話です。

とはいえ、感性が違うもの同士が付き合っていくには、コツがありますね。
この本でとても感心したのは、3人の距離の取り方のうまさ。
互いの言うことや主張をまず認め、それでいて、自分の感性も大切にするという、
自立したオトナ同士のスタンスが印象的でした。

中の一節に、妙な固定観念に囚われて抜け出せない「数字の2」を他の二人が
変わっていると思う場面があるのですが、結局二人はそれには何も言わず、
ただ帽子が「人にはそれぞれ事情があるな」と呟くシーンがあります。

「数字の2」の妙な拘りを、意見したり正したりすることなくありのまま受け止めて、
「それぞれ事情があるな」と纏めるあたりがとっても上手い。
そのほかのシーンにも、随所にこの、出すぎたところの無い思いやりや、
言葉にならない優しさが溢れていて、物凄く癒されますー。

他人の価値観や生き方を、ただ認め、受け止める、ということ。
簡単そうで難しい。
だって、自分と正反対の生き方の人間が傍目に幸せそうだったら、
それだけで自分の生きかたを否定されたような気持ちになることもあるでしょう。
訳もなく相手の粗探しをしてみたり、あれじゃダメよ、と無理矢理否定してみたり。
自分を顧みても、こういうのは、案外無意識でやってるだけに始末が悪いのですよね。

いつか、作中の3人(?)のような、包容力のある人間になれるといいのだけど。

殺人勤務医

2005-06-06 10:27:33 | 本(小説)

「殺人勤務医」 大石圭
角川ホラー文庫 2002年

***

これは、何の分析も、解釈も無意味だ。
そう感じさせる作品でした。
凄いです。
ここまでリアルな「殺人鬼」を書ききった本も珍しいのでは。


あらすじー。

中絶専門医である古河は、その仕事とは裏腹に、人格者として周囲から慕われていた。
しかし、訪れた女性に親身に話し掛け、もう一度周囲に相談し考えてごらん、と優しく諭す、
その顔の裏側には、恐ろしい殺人鬼が潜んでおり、彼に「死に値する」と判断された人間は自宅の地下室に閉じ込められ、ことごとく残酷な死を遂げていた。
そんな日々の果て、彼はついに、自分がずっと求め続けていた「獲物」を見つけ、彼女を地下室に招くために、様々な準備を始める。


あらすじ…自分で書いてみても、なんだか違うな…という感じが拭えません。
どう書いたらいいのかわからない。
実際の作品は、こんなわかりやすいモノじゃない気がする。

物語は、主人公古河の日常を淡々と書く形で進んでいきます。
閉じ込められて残酷に殺されていく犠牲者たちも、古河が可愛がっている鴉も、毎日気にかけている近所の虐待されている子供や、繋ぎっぱなしの犬への憐れみも、みんな同じ目線、同じテンションで書かれていて、そこに不思議と葛藤は感じられない。
極めて残酷に人を殺すのも、中絶手術に来た母親に「もう一度、考えてみませんか?」と諭すのも、同じ「古河という人間」なのです。

そりゃあ、その気になれば、いくらでも解釈はできる。
幼児期の悲惨な虐待がもとで、とか、母親への憎しみや思慕が彼を犯罪に駆り立てる、とか。
彼がいつも一番気にかけるのは子供や動物などへの「弱者への暴力」なのですが、それだって、
いたぶられる弱者は、彼の中では「彼自身」と見立てられているのでは?とか…
考えるだけは考えてみたのですが、言葉にすると、どうにもどれも違うような気がしています。

その、微妙な感じ。もう一歩掴みきれない感じが、ものすごくリアルに感じるのです。

実際、一人の人間がいつも「いい人」であることは稀です。
いろんな面…ずるさや暴力性や、コンプレックス、はたまた、情けや思いやり、赦し…それらが全て交じり合って作られている以上、日常の行動全てが、機械みたいに常に一貫していることなど無いでしょう。
人間の行動や感情は常に矛盾に満ちていて、その複雑さと混沌こそがもともとの本性であるような気がします。

ホラーって、けっこう「幽霊出ました」「呪われました」「死にました」みたいな
単純なストーリーのものが多いように思うのですが(いや私もそうだし)
これはねー! ものすごく読みごたえがありました。

猟奇な描写が大丈夫なかたには、お勧めです。

よつばと!

2005-06-03 15:32:01 | 本(漫画)

「よつばと!」 あずまきよひこ
メディアワークス 電撃コミックス
月刊電撃大王で連載中

***

電撃の話が出たついでに、癒し系の漫画をご紹介。
主人公、6歳の女の子「よつば」とその周囲の人間がおりなす、
面白カワイイ日常生活が素敵な漫画です。
絵も、電撃にしてはシンプルな可愛さ♪
(好きな人はごめんなさい、電撃は私も嫌いじゃないんですが、
あの何もかもロリロリした感じがちょっとどうも…/汗)
読んでいて、子供の目線ってそういえばこんな感じだよなー、とほのぼのできますー。

また、やたら元気で順応力が高く、突拍子も無い行動を引き起こす「よつば」に対する、
周囲の大人たちのまったりのほほんとした対応も魅力のひとつ。
わたあめを売ってるテキ屋のオヤジが、「おっちゃん、これ、くも?」と聞かれて、
「おう、そうだよー、これがいっぱい集まると雨が降るのさー」とか、とにかく対応がうまい!
出てくるキャラクター全員が、肩のちからを抜いて、笑顔で生きてるって感じなのです。

現在子育て中の私としては、子鬼の言動にイラつくときなど、これを読むと、
あー、子供のすることに、そんなにマジで怒るこっちゃないよなぁー、などと反省してみたり。

登場人物が、お父さんとその友人ジャンボ以外、殆ど女(しかも小学生、高校生、大学生と揃い踏み)
だというのは、いかにも電撃っぽいヲタク加減なのですが(?!)、読んだ感じは全体に爽やか癒し系。
また、読めばわかりますが、ストーリーの中での微妙な間のとりかたが最高!
読みつつ、どうしても顔がニヤケてしまう場面満載で、ほのぼの系がお好きなかたには
無条件でお勧めできる漫画です。

ちなみに、出てくる人物の中では、ジャンボが好きです。
可愛いなぁ。純情で。


よつばスタジオ
今リニューアル中で、あずまきよひこ氏のブログしか見られませんが一応…