鼠喰いのひとりごと

DL系フリーゲームや本や映画などの感想を徒然に

ハサミ男

2006-11-24 23:24:50 | 映画(邦画)

「ハサミ男」 2005年
監督:池田敏春
出演:豊川悦司、麻生久美子、阿部寛、斎藤歩、阪田瑞穂、樋口浩二

公式ページ
***

ホラーじゃないです。猟奇殺人系のミステリー作品。
上映当時はテレビCMも少しやっていたような気がするけど、
あんまり大々的には話題にならなかった…よね?
期待しないで見たせいかもしれないけど、見た感じ、もうちょっと評価高くても良さげ。
話題のアイドルとかではないけれど、実力派で演技のいい俳優もでてるし。

豊川悦司の、聞いてるだけで催眠暗示にかかりそーなあの口調と声がなんかイイ味出してる。
でも残念ながら、彼には、爽やかな笑顔が全然似合わない…かも(汗)

んで、原作も読んでみました!!
これ、作品の中に文章だからこそできるヒッカケがあって、映像化は不可能と言われてたらしいです。
うん、そこを踏まえてみても、映画版はまずまず頑張ったほうじゃないかな。
ただ、原作に比べ、映画はどちらかというと雰囲気が『女性向け』な仕上がり…。
ラストも綺麗に纏まりますし、救いもあるし、ヒロインにちゃんと彼氏(?)もできる。
(これだから、映画版は二時間サスペンスドラマって言われるんだろうなぁ…)
残酷な中にもちょっと癒されたい感じの人は映画のほうがお勧め。

そうそう、これにも阿部寛さんが出てました。…この人、本当に仕事を選びませんよね。
映画にドラマにCMに、かなり売れてて演技派なのに、ホラーや殺人鬼役や、Drイラブのような、突拍子も無い役をやってたりするのがなんかイイ感じ(笑)
というか、もしかして、本人、癖のある役が好きなんでしょうか(汗)
思えばトリックの上田、うぶめの榎木津、奇談の稗田礼二郎…ドラマでも、この間『結婚できない男』で、かなりリアルな独身男の役を演じておりましたっけね。

親切なクムジャさん

2006-11-24 23:22:33 | 本(小説)


「親切なクムジャさん」 大石圭
角川ホラー文庫 2005年

映画版:公式 
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ちょっと判断に迷って、映画を見るまでレビューを保留してました。
もともと韓流は苦手なので、韓国映画はホラーしか見ないもんだからー。

文庫のノベライズは呪怨・オールドボーイ・四人の食卓でもお馴染み大石圭さん。
当初私は、映画のノベライズていうモノを一段低く見ていたんですよね。
だってねぇ。今まで見たものって、ただ映画をなぞっただけの、そこそこ文章を書ければ誰でもできるっしょ、ってモノが多かったんだもの。
本そのものも大体薄っぺらくて、口絵ページに映画の一シーンの画像が使われてて。
ビデオやDVDが普及した今となっては、わざわざこんなのを買ってまで、お気に入りの映画の物語を手元におきたいとは思わないよね。

そういう意味で、大石さんのノベライズはちょっと面白い。
語りの視点が違ったり、映画では描かれていない部分について詳しかったり、何より『映画とラストが違う』なんてノベライズ、いまだかつて聞いたことないっすよ(笑)

*****

幼い男の子を誘拐し、殺した罪で女子刑務所に服役していた、イ・クムジャ。
刑務所内で、彼女は『親切なクムジャさん』と呼ばれ、慕われていた。
しかし、彼女はその天使のような顔の向こうで、自分の子供を奪い、無実の罪で陥れた男への復讐計画を練っていたのだ。
刑務所内で知り合い、彼女を恩人と慕う人間たちを操り、男へ近づいていくクムジャ。
そして、ついに復讐を果たそうというとき、クムジャは、男の持つ携帯電話に目をとめる。
そこには、かつて殺した男の子の宝物だったビー玉と…その後に殺した4人の子供たちの『記念品』が飾りつけられていた。
クムジャは、子供たちの遺族を集め、その男の処遇を決めてもらうことにする。

*****

読んだ感じは…サツバツとしてますね。色々と。そういうの、別に嫌いじゃないけど。
オールドボーイと同じ「弱肉強食」で「容赦ない」匂いがする物語。
そして後味は最高に悪い。
とりあえずクムジャさんは絶対敵にまわしたくない女No1だ!(笑)

小説を読んで思ったのは、この登場人物たちの思い込みの強さは、ノベライズの大石さんのカラーなのか? それとも原作の雰囲気なのか?ってこと。
そこが知りたいがために、映画を借りてきたわけです。

そして…見た結果…んー。
前半の、復讐のためにクムジャが他の囚人と関わっていく部分は、ノベライズのほうが良かった。
後半の、遺族による惨殺復讐シーンは、映画のほうがいろいろ考えさせられた。
…ラスト部分は、個人的にはノベライズが好み。
そうそう、映画では途中で、銃の練習のために犬を射殺する場面があるんですが、ノベライズ版では、クムジャは犬を殺せなかった。そのへんは、すごく「弱者の味方」の大石さんらしいと思った。

13号の時もおもったけれど…『復讐』って位置づけが難しいね。
どうしても被害者の目線で見れば『こんなやつ死んで当然だやっちまえ!』って気分になるわけだけど。
結局、それだって、ヤクザ屋さんのオトシマエと変わらない…
つまりはハムラビ法典の『目には目を』をいいように解釈したのとも変わらないわけでしょう。
(ハムラビ法典での目には目を…は本来、復讐的な意味ではなく、むしろ、それ以上の罰を要求しない抑制の意味があるのだ…と何かで見た覚えが。キリスト教の右の頬を打たれたら…に相当するような、人に誤解を招きやすい文脈だわ(汗))
子供の喧嘩で『だって○○ちゃんがやったから!』というのともどこが違うかと言われれば…どうなんだろうな。

あれこれ考えると、法としてはやはり復讐を認めるわけにはいかないんだろうけど、当事者の気持ちを考えると理解できてしまうから…
私だって、自分の子供がこんな風に殺されたら、同じように…いやそれ以上の復讐の鬼になるかもしれない。
『ただ殺すなんてナマヌルイ。子供以上の恐怖と苦しみを与えてやるッ!』て気持ちになるだろな…

映画で見たとき、遺族それぞれが犯人に拷問を加えた後の表情がね、なんかリアルだった。
放心したような、怒っているような、悲しんでるような。
復讐してもどうにもならないなんてことは、百も承知でそれでも収まらない人たちに、「彼を殺しても子供は戻ってこない」なんてセリフはとても無力で、無意味なんだよね。

しかし、罪と罰についてのこの認識が民族性によるものだとすると…いろいろ納得のいく部分はありました。ええ。
罪と等価の罰を与えるために、私刑をも辞さない姿勢は、潔いとも言える、かも、しれない。
でもなぁ、映画版は、クムジャ生き残るんだよね。あれだけ罪と等価の罰について滔々と語ったくせに。
自分が子供を護るためにとった行動が、その後4人の子供の命を奪ったと知ったうえで。
罪を認めて生きていくのと、アッサリ死ぬのと、どっちが楽かと言われれば迷うけど…。

なかなか心荒む話ですので、暴力に免疫の無いひとはやめたほうがいいかなぁ。
多分、私のブログを読んでるタイプの人は大丈夫だと思うけど…