鼠喰いのひとりごと

DL系フリーゲームや本や映画などの感想を徒然に

「"It"(それ)と呼ばれた子」

2006-09-27 14:31:16 | 本(小説)

「"It"(それ)と呼ばれた子」
デイヴ・ベルザー著 田栗美奈子訳

***

完結編を読もうと図書館に行ったら、貸出記録無いのに、本が行方不明でした(汗)
誰だ。こっそり我が物にしたヤツは。
というわけで、いまだに完結編を読んでいません。
幼年期と、それに続くロスト・ボーイだけ。
それだけでレビューを書くのはいささか乱暴かもしれませんが…
この先読む機会があるかわからないしね。
一応、今のところの感想を。

んー、とりあえず『幼年期』は、延々と続く虐待の描写が飽きる。
そして助けられたと思えば、今度は別の罠があったりして、
殆ど『実録、世にも不幸せな物語』って感じ。
実家から救い出されて、里親制度の中を偏見と戦いながら生きていく、
青年期編のほうが、そっちよりも多少はマシかな。
こういう実話な本で、こんなこと書くと鬼でしょうかね?(笑)

だってねぇ。この本は、虐待された本人が書いていることもあって、
とにかく、終始視点が虐待される側。
だから、いかに不条理な酷い虐待を受けたかはよくわかるけれど、
何故、母親がそんな行動に走ったかがわからない。
兄弟が他に3人…兄、弟、虐待が始まってから生まれた赤ん坊といる中で、
何故、彼でなければならなかったのか。
そこが知りたいなぁ、と読みつつ、ふつふつと思うわけです。

そこらへんが全く見えないから、結局、周囲の人間は全て鬼で、
世間は自分を陥れようとする罠に満ちていて、法は救いにならず、
真の正義は、決して表に表れない…神も悪魔もありゃしない。
それが、当時の彼から見た『世界』であったことは疑わないけれど…
これだと、彼の意識でフィルタリングされた状況しかわからんわな。

ついでに言えば、シリーズ通して、いろんな出来事が時系列に書かれている
わけじゃないので、数冊読むとどれがいつの時期の出来事か混乱する。
あと、同じような時期のものでも、考え方や性格において、
全く違う書き方をなされている部分があって、一貫性が無いような…
あ、いや、嘘ついてるって言ってるんじゃないヨ。
ただ、印象として、文章書きなれてない人間が一生懸命、
その時に思いつくまま感じるまま、たくさん書いた、ってイメージ。


作中で書かれる、母親の有様ははっきり言って異常でしたね。
彼の中で、優しかったころの母親は、そらもー素晴らしいまでの完璧ぶりで…
綺麗好きで、いつもきちんとした格好をしていて、料理も素晴らしく、
子供の教育も忘れない。常にパーフェクトを目指している母親…っていうのは、
私には、それだけで相当無理がかかっているようにも思うのですが(汗)
これじゃあ、神経症にもなろうってもんだと思いましたよ(汗)

それが、ある時から徐々に変貌し、その執拗な攻撃は三人兄弟の真ん中に
集中していく。
この豹変振りは、同じ紙の裏表みたいで、あんまり意外には感じなかったな…
…っていうかね、思い込みの強い人が、今までと真逆な方向に
突っ走っただけなんじゃないかと!

本の記述を信用するなら、母親の目指す「完璧」は、
全て『他人の目から見た』ものに感じます。
掃除を完璧にこなすのも、外に出る時、綺麗な服と化粧で武装することも、
各種イベントを、工夫を凝らして楽しく計画することも…
他人のためではなく、自分のために、良き母を演じていたんじゃないのかなぁ。
最後まで彼女が見つめていたのは、夫でも子供でもなく、
自分ひとり、だったように思う。


海外では、この本は嘘に固められたものである、という話もあるようですよ。
ていうかデジャブ。ビリー・ミリガンのときもそうだった(笑)
後からあれは嘘だヤラセだここは間違いだって裁判になってさ。

実在の人物の虐待を描けば、そこには実在の加害者がいるわけで、
周囲にはそれを知ってて知らんふりしたり、
関わるのが嫌で見ないふりした人間もいるわけで、
それぞれに、自分なりの言い分も視点もあるのだろうから、
まぁ、いろいろ文句も言いたくなるだろうな、と。
しかも、この本は…自分で自分のことを書いている分、
嘘のつもりはなくても、多分いろいろあるでしょうしね。
人は無意識に、自分に良いように物事を見るものだから。

そうそう、彼の弟も、兄が家を出た後自分が虐待されたことを、
本にして出してるみたいですよ。
…どうも、この兄弟の出版形態は気に入らないな。
いかにも売りたい目的がほの見えて。


ただ、彼が虐待を生き抜いて、新たな犯罪者になることもなく、
今現在幸せな家庭を築いて、自分の子を愛し暮らしている、その事実には、
素直に拍手。
彼の存在は、同じような境遇の子供たちに、生きる希望を与えてくれる。
この本に価値があるとしたら、多分、そこだろうかな~


「隣人13号」

2006-09-27 14:09:27 | 映画(邦画)

「隣人13号」 2004年
原作:井上三太
監督:井上靖雄
出演:中村獅童、小栗旬、吉村由美、新井浩文、三池崇史

***

さて、最近人道的な本ばかり読んでいたので、残虐なのを一本!
原作はね、読んでないんですよね。
こと、コアでディープなファンがついている、こういう作品の映画化というのは、
なかなか難しいと思いますが…これ、あんまり酷評されてません。
ファンも納得の出来ということでしょうか。

映画だけ見た印象も、案外良かったですよ(笑)
個人的には、最後がね。ちょっと物足りない(←?)んだけど。

中村獅童の怪演が素晴らしかったです。片白目の不気味な姿もさることながら…
…あの、声がね。かなり素敵でヤられました。ハイ。

===

小学生のころ、酷い苛めを受けていた村崎十三。
彼の中には、13号と名乗るもうひとつの残虐な人格がおり、
苛めを受けた赤井トールへの復讐を狙っていた。
赤井と同じ職場に勤め、同じアパートに住み、ひそかにチャンスを狙う13号。
そんなこととは知らず、赤井は昔のことなど忘れて幸せな家庭を築き、
新入りの十三に対して嫌がらせを繰り返す。

13号の行動は、やがてエスカレートしていき、周囲の無実の人間までも
次々と手にかけるようになっていく。
そして、ついにそれは、赤井の幼い息子に及び…
赤井と13号は、かつて二人が通った小学校の中で対決することになる。

===

最後が物足りない、と最初に書きました。
原作知ってる人は、多分、この展開を知ってるんだろうけど、私は知らなかったから…
なんか意外だったな。13号の最後も、なんとなくSFチックな終わり方も。

というのも… だって、どうしてここまでやって、一言謝られたくらいで許しちゃうわけ?
罪も無い子供を殺すことに躊躇わなかった男が、殆ど、復讐の相手を痛めつけることもなく、
謝罪の言葉で納得するのはどうかと思う。
絶対、もっと拷問風の『ただでは死なない』ような方法で殺すと思ってたよ…
生かすにしても、同じように顔焼くとかさ。

そして最後の『過去のやり直し』っぽい異次元ラスト。
見ていて「…アレ? え? オイオイ?!」って感じ…
確かに残虐なシーンは多々あるんだけど、このラストが全てを中和して覆す。
実は、この物語は本当は小学生の十三の……っていう解釈もできるアレが、
それまでのリアルな残酷さを半ば夢のように薄めてしまうのだ~(汗)

あ、いや、物語としては、かなりベストな感じですよ。悪くない。
綺麗に纏まって、見ている視聴者も、あれのお陰で悪夢から日常に帰れるような…
これが無かったら、かなり後味悪い物語だったでしょう。

…でもね、ちょっと期待して見てたもんだからさ。赤井トールの死に様を!(笑)

ええっと、残虐描写は…シチュエーション的にはかなりムゴいんですが、
画像的にはそれほどじゃありません。死体も出るには出るけど…そんな酷くない。
ていうか、あれだけメッタ刺しにされた割には、そんなもんかぁ?って感じ。
これは多分、故意に映像を抑えてるんじゃないかな。
監督がこの映画で見せたいのはそこじゃない、って意図がある…んでしょうかね。
なにしろラストがアレだし。


ところで、この映画、三池監督が特別出演しています。
記者会見の記事を見ると井上監督がこんなことを言っておりました。
「素晴らしい監督さんですので役者としても成立するようなシーンを心がけました。
 やさしい方とお聞きしているのでプレッシャーはありません」
…そして、その役柄は作中思いっきりメッタ刺しなわけです。
こういう吹っ切れ方がとても好き(笑)

「四季 春・夏・秋・冬」 森博嗣

2006-09-15 17:35:11 | 本(小説)

「四季 春・夏・秋・冬」 森博嗣
講談社 新書 4冊組 
2004年
 

***

ううむ。これは…。コメントしずらいです。
一番強く感じたのは…
『森さん、すごく四季女史が好きなんですね?』
…ってことかな…

もともと理系がジンマシン出るほど苦手な私では、
物語を全篇通して埋め尽くす論理・論理・論理が半分も理解できません。
そのため、ツッコミ入れようったって入れられない(笑)
あー…そう、そういうもんなのね? この世界では。と、
丸呑みして納得するしかないカンジ。

んー…さほどねぇ。
マジックの種明かしを見たくないのと同じ理由で、
四季女史の今までや、内面とかは見たくなかった気がするな。

===

物心つくころから天才と謳われ、14歳には天才科学者の名を欲しいままにした真賀田四季。
14歳で実の両親を殺害して研究所に監禁され、
29歳の夏に、自らの血を分けた娘を殺害してそこから逃走した彼女に纏わる
出来事や事件を、春夏秋冬に分けられた、四編の物語が明らかにする。
真に望むものは何か。その頭脳の行き着く先はどこなのか。

===

『秋』には犀川と萌絵が出てくると聞いてちょっと期待したんですが、
それもあくまでゲスト的な扱いで『虚空の逆マトリクス』のオマケという感じ。
とりあえず、森さんの持っているいくつかのシリーズの中でも有名な、
S&MシリーズとVシリーズ、それからSF作品の「女王の百年密室」とも繋がる、
いわば森ワールドのクロスポイント的な物語。
一見別世界だったそれらを繋ぐのが、最高位に君臨する女神・四季という位置関係。

シリーズ同士を繋ぐことに腐心するあまり、物語としてはチョト物足りないかも。
どちらかというと、森ワールド愛好家に対するファンサービスというか…、
んー……おまけ…? 的な感じを受ける。
だから、ちゃんと全シリーズ知らない人には、よく判らない部分があると思うよ。
森作品を知らない人が始めて読むには不適格。
そういう意味では、読者に不親切なつくりとも言えるかな。

森博嗣が好きなひとには、別シリーズのキャラが繋がる感じが面白いかも。


「花まんま」 朱川湊人

2006-09-15 16:48:19 | 本(小説)

「花まんま」 朱川湊人
 2005年 文藝春秋

***

やっと読んだよ直木賞!
で、中身はですね…「死をテーマにしたちょっといい話・第三弾」て感じ。

というか、これは…物語がどうこうというより、舞台設定勝ちじゃないのかなぁ。
1960年代大阪・下町を舞台にした6話の物語は、全て子供の目線で語られ、
程よくリアルな現実に入り混じった幻想世界を作り出しています。
パワフルでごちゃごちゃした感じの郷土色に、登場人物たちの関西弁が
なんともいえな~い独特の世界。

これと同じ話を、どっかの田舎町を舞台にして、標準語で書いていたら、
これほどに騒がれなかったかもしれない。

===

主人公、俊樹の妹フミ子は、4歳のある日高熱を出して寝込んでから、
がらりと雰囲気を変えてしまった。
妙に大人びて、自分を譲らなくなったフミ子に、家族…特に、兄の俊樹は振り回される。

やがて小学校にあがったフミ子は、一人で家を出て行方をくらまし、
遠く離れた京都駅で保護されるという事件を起こした。
理由を尋ねる俊樹に、フミ子は思いがけないことを打ち明けはじめる。
実は、自分は以前死んだ繁田喜代美という女性の生まれ変わりだというのだ。
そして今回、電車に乗って、その女性の住んでいた家を訪ねてみるつもりだったのだという。

そんなことはとても信じられない、と半信半疑の俊樹だったが、
数ヵ月後、フミ子に『一生のお願い』として、
繁田喜代美の家へ連れて行って欲しいと言われ、
しぶしぶそれを引き受けることになる。

繁田喜代美の生きた彦根の町で、7歳のフミ子は懐かしげに、
中学の時の思い出や、昔の同級生について語る。
そして、偶然行き合わせた店で、不自然に骨と皮になった老人と出合った時、
フミ子は言った。『あれは、お父ちゃんや』

(花まんま)

===

雰囲気は、坂東真砂子とか、岩井志麻子とか、高橋克彦の記憶シリーズとか、
そのへんの、時代が少し古くてちょっと不思議な話…と同じ系列。
ちょっと感動とお笑いの要素も入って、ホラー風味『一杯のかけそば』って感じも。
怖いの嫌いでも大丈夫(笑) グロくないから!

しかし、最初と最後に差別ものの『トカビの夜』と『凍蝶』を持ってきていて、
どう考えたってこの構成は、そこらへんのテーマがメインだろうと思わせるのに…
力の入り方も、どう見ても他の作品と違うように感じるのに、
タイトルも受賞作も『花まんま』なんだよね。
こういうテーマって選考に影響するのかな?


最近読んだのは…

2006-09-13 04:11:31 | 雑事

いつの間にやら一週間。
最近、きちんと夜中は寝ていたのですよ。偉いでしょ。
(子供かお前は)

最近読んだのは、
「イン・ザ・プール」 奥田英朗
「平面いぬ」乙一
「”It”と呼ばれた子」の幼年期と少年期。デイヴ・ペルザー
「シーラという子」トリイ・ヘイデン
「今昔続百鬼ー雲」京極夏彦
あとは覚えて無いな…

「イン・ザ・プール」面白かったっす。
伊良部はどうも読んでいてキャラが多々良大先生とカブるんですが、
濃いー感じはこちらが上(笑)
これは文庫で買ったんだけど、続編の「町長選挙」と「空中ブランコ」
はまだハードカバー…早く文庫化してくれんかな。
検索したら、漫画化もしてるんですね。もしかして有名な本だった?

「平面いぬ」…5冊くらい読んで、そろそろパターンが掴めてきました。
作品をたくさん読むと、その向こうに、書いた人間がどういう感じの人なのか、
幽霊のように浮かび上がってしまう作家さんっているもんですが、
この方はまさにそれですね…うん、でも、嫌いじゃないよ。こういうの。

「It~」実在の被虐待児の書いた、自伝…かな。
うーん、とりあえず、幼年期はあんまり内容が無いよう。
最初から最後まで幼児期の虐待の様子を延々と語られて、
唐突に時間が流れて、大人になった本人が息子とともに現れて終わり。
そして、その後のことは別冊の少年期で語られる感じ。

…なんだってわざわざ、何冊も別な本で出してるのだろう。
一作に纏めれば、内容もわかりやすいし、見やすいものを。
あと、青春編と完結編があるらしいけど、わざわざ買う気がしないなぁ。
図書館で探してみっか。

「シーラという子」Itを読んで、そーいやこんなの昔あったわ、と
図書館で借りてきた本。被虐待児繋がり。
文章としても、構成にしても、こちらのほうが数段完成度高く読みやすい。
Itはどうしても個人の視点だから、本人がどう感じたかはわかっても、
何故それが起こったかとか、そういうところはサッパリでした。
やっぱり、ある程度の客観性があったほうが、物事がわかりやすいっす。

そういや、ビリー・ミリガンに始まり、一時期凄かった多重人格モノは、
すっかり最近ナリをひそめてしまいましたね。


「今昔続百鬼ー雲」
Dr.イラブを読んだあと、同系列キャラ繋がりで読み返しました。
…個人的に、多々良先生は好きじゃない。
読みながら『だぁーーッ!また貴様は!貴様は!』って気分になるのよ(笑)
癖が強いながらも、魅力的な登場人物を書く京極で、
まさかこんな鬱陶しいキャラが現れようとは…
キレる沼上に毎回、同調&同情してしまう本です。

さて、明日は子鬼が遠足ゆえ、今日はもう寝ます。
…って朝4時だけど(笑)


カブトムシブリード、三期目!

2006-09-06 18:16:01 | 雑事

今年はもう繁殖はしないつもりで、わざわざ土を浅めにしてあった
我が家のカブトムシ達ですが、今日、死にかけのオスの世話のために
ケースを開けたところ、コロリンと幼虫の姿が…

ああ、やっぱり少しは産んじゃったのか…なんて考えながら、
じゃあケースを別にしてやるか、とひっくり返してみた結果。

一匹、二匹、三匹、四匹…中略、二十匹、二十一匹…中略、
三十匹、三十一匹…四十………

……ごじゅうよん…ひき?

どうやら、我が家のカブ子は有能な母だったらしい。
メスは普通、土の中に潜りまくる性質があるので、
たくさんタマゴを産んでも、タマゴや幼虫を足で引っ掛けて
その数を減らしてしまう…はず、なの、です、が。
わざわざ、タマゴを産みすぎないように、土も普通の半分ほどに
してあったはず、なの、です、が……



……どーすんの、これ……



そして、実は、我が家にはまだ、もう一組のカブト夫婦が住んでいた
ケースがひとつあるのだった。
…開けたくない。すんごく開けたくない。

「小泉八雲集」小泉八雲

2006-09-03 02:26:24 | 本(その他)

「小泉八雲集」小泉八雲
訳:上田和夫 新潮文庫

***

小泉八雲…ラフカディオ・ハーンの物語といえば、
怪談でお馴染み、雪女やむじなが有名どころ。
私も今まで「怪談(くゎいだん)」しか読んだことがなく、
今回この本で初めて『こんな色々書いてたんだ…」と知りました。

所謂ガイジンから見る日本人観を書いたヤツは特に興味深いっす。
中でも、日本人の微笑みに関して書いた部分は、
外国人から見ると、こんなことが不思議なのか、って気分になるな。

日本人が悲しいときにも笑ってみせることは、
当時の外国人にとって理解できないことだったらしいですよ。
『夫が死んでるのに、笑ってそれを話すなんて信じられない!』とか。
『こちらが叱責しているのに、ヘラヘラ笑うとは何事だ!』とか。
身内の死について、悲しみを極力抑えて笑ってみせるのはともかく、
叱責されて笑ってるのは、今も昔も日本も英語圏も礼儀知らずに変わり無いと
思いますが…(汗)
小泉八雲は、悲しみや怒りを見せないことが日本人のひとつの礼儀である、
と解釈したようです。

もともとそういう文化に育ってない人が、きちんと他の国のことを
理解できるってのは凄いよね。
今のように、海外の生活や文化を簡単に知ることができない
100年も前の時代にあっては尚更。

そういえばずっと以前、近所にホームステイに来ていた外国人に
『どうして日本人は自分を必要以上に卑下するのか』
というような意味のことを聞かれたことあったな~。
『それは、自分を相手よりも格下に見せることで、
相手を尊敬しているという気持ちを表しているのです』
というようなことを一生懸命伝えましたが。伝わったかどうかはイマイチ。

せんだっても、ボトルメールを紹介したばかりですが、
ちょっと前にも、外国の方とメールをやりとりする機会に恵まれてました。
どういうわけか、最近の私は英語ヅイている(汗)
もともと英語の成績悪くて苦手なのに。

私は今まで、殆ど海外の方と関わる経験が無かったので、
『同じ人間、喜怒哀楽まで変わるもんでもないだろう』と
軽く考えていたのですが、これがまー、思うようには何ひとつ伝わらないんだ。
ハッキリ伝わるのは「はい、いいえ、好き、嫌い」くらいだね(笑)
やっぱり、人としっかりコミュニケーションしようと思ったら、
相手の人となり以外に、育った国や地方の考え方や風習も知らないとダメだと思った。

どうしても、自分の育った環境の考え方感じ方が常識としてあるから、
相手も同じだろうと思い込み、それが誤解を産むんだわ。
そもそも言葉もろくに通じないから、お互いチグハグなまま、
それなりに会話は続くんだけれどさ…(笑)
ま、同じ日本人だって、一体この人どこに神経通ってんだろう?てくらい
考え方の違う人もいることですし。外人ならなおさらかね。

やっぱりね、みんな、自分が今置かれた場所の常識に準じてるわけですよ。
私は日本に生まれたから、日本の常識からモノを見て
善悪と好悪を判断してるわけですが、
たとえば、もし中東に生まれていたら、当然のように
「アラーは全能。アメリカは悪魔の国だ」と考えているでしょうし、
アメリカに生まれてたら「私の国は世界の中心、誇りである」
と自尊心丸出しだったかもしれない。
その場所にはその場所の常識やら判断基準があって、
正しいかどうかを決めるのは、結局多数決によらざるを得ない。
日本人100人の中にアメリカ人が一人なら、
そこでは日本の常識が罷り通るのでしょうし、
イラン人100人の中で日本人が無抵抗平和主義を唱えたって
相手にされないでしょう。
自分がどこに産まれたかが考え方の基本を作っているというのは、
単純でなかなか根深い問題です。

結局、ひとは自分自身の檻から抜け出せず、そこから周囲を眺めるだけでしか
ないんだなー、と。
どう角度を変えてみようと、檻の置かれた場所からの景色しか、
私たちには見ることができない。

どの見方も正しく、また、どの見方もそれが全てではない。
そこで「お前の見ているものはニセモノだ!」と否定してしまうのは簡単ですが…
それでは何も知ることはできない。
小泉八雲の目から見た日本の話を読みながら、そんなことを考えていました。

やっぱり、人間、一度は海外旅行とか留学とかしといたほうがいいよね。
できれば若くてアタマが柔らかいうちにさ(笑)

っていうか、海外行きてい。


「0:34」(レイジ34フン)

2006-09-03 01:53:50 | 映画(ホラー)

「0:34」(レイジ34フン)原題はCREEP
 2005年 イギリス
 監督:クリストファー・スミス
 出演:フランカ・ポテンテ、ショーン・ハリス、ヴァス・ブラックウッドほか

公式ページ

***

正統派? 殺人鬼ホラー。
こういう血塗れのは、なんか久しぶりに見たな~(笑)
去年、取り憑かれたようにガーっと見た後、さすがに血に飽いていたもので。
作品自体は、11月のまおサンのブログで見て、気になってはいたのですけどね。
記事はここ(ことば日和11/5/2005)

===
地下鉄の最終電車を待っていたケイトは、椅子でうたた寝してしまい、
駅にひとり取り残され、閉じ込められる。
やがて、ホームで途方にくれる彼女の前に、来るはずの無い電車が現れた。

ケイトを乗せて動き出した電車は、唐突に止まり、そこへ同僚の男が現れる。
男はケイトをレイプしようとするのだが、抵抗された拍子に、
正体不明の存在に電車の下に引きずり込まれ、襲われてしまう。
「逃げろ」
その言葉に、ケイトは車両から抜け出し、暗い地下線路を駆け出した。

朝になるまで助けは来ない。
追いすがる殺人鬼の前に、果たしてケイトは始発まで生き延びられるのか。
===

見所は『女の逞しさ』でしょうかね(笑)
ケイト強すぎ。最初から、彼女が殺人鬼と対決してれば、
あんなに犠牲が出なくても済んだんじゃないの(笑)
彼女の性格については、事前に読んでたので、もう可笑しくってさ~(笑)
「あなたがやってよ」「どうして私がこんな目にあうのよ」
「早くなんとかしなさいよ」系の性格は、あまりにもゴーマンで強か。
いや、ここまで、見ていて同情できないヒロインはすばらしい。
助けを求めて出会う相手が全て巻き込まれて殺されていくケイトは
まさに疫病神(汗)ある意味、ホラーの鑑ッ!

そんなわけで、彼女がどんな怖い目にあっても、
どこかこっちも冷たーい目で見てしまうわけです。
いや、性格悪いから殺されてもいいってことにはならないんだけれども。
映画であることも手伝って『…この女、一体いつまで生きてんだ?』
って気分になることも確か。

やっぱり、普段から自分の行いには気をつけないとな、と
ミョーな自己反省を強いられる作品でもありましたですよ。

殺人鬼クレイグは、その背景について匂わせる程度で終わってるのがまた、
正統派ホラー臭い感じ。
その化け物じみた外見もさることながら、人間であって人間で無い、
歪んで狂った幼児性がいかにも怖い。

そうそう、こういう映画のお約束…いつものことながら、
どこかの場面に、ダイアナ妃の顔が写りこんでるようですよ。
(ていうかさぁ…だからもういい加減…)

さて、グロ度ですが…んー、適度に血塗れ。
ちょっと可哀想な惨殺シーンもあるし、
クレイグ自身もフレディっぽい感じの爛れた外見なので、
苦手な人はやめておこう。