鼠喰いのひとりごと

DL系フリーゲームや本や映画などの感想を徒然に

ジョゼと虎と魚たち

2005-05-16 23:19:48 | 映画(邦画)

「ジョゼと虎と魚たち」 2004年
監督:犬童一心
出演:妻夫木聡、池脇千鶴、上野樹里、新井浩文

***

えーと、やんちゃな男の子とオンナの映画。
大学生とか専門学校生とか、進学しなかった私には実感としてわからないのだけど、
すっかり身体はオトナなのに、どこか幼くて中途半端な年齢…なんていうのか、言葉は悪いけど、社会に出るまでの執行猶予?(笑)みたいな感じが興味深かった。
大学生活って本当にあんな感じなの?


恒夫は雀荘でバイトする大学生。
そこで噂される「乳母車を押した老婆」は、その荷物の中に「お宝」を隠し持っているらしい、と評判だった。
そして、ある日の早朝、店長の愛犬の散歩に出た恒夫は、坂道を転がってくる乳母車と、それを追いかけてくる噂の老婆を目撃する。
「中を見て」力尽きて坂の途中で座り込んだ老婆に、そう頼まれて覗いた恒夫の前に現れたのは、お宝でも麻薬でも子供のミイラでもなく、一人の少女だった。
足の不自由なその少女は、その存在を恥として隠そうとする老婆のもと、家からほとんど出されず隠されて育っていた。
拾ってきたたくさんの本を読み、上手に料理をし、不思議な言葉を口走り、愛読書のヒロインの名から、自分を「ジョゼ」だと名乗る、変わった少女。
恒夫は徐々に、彼女に惹かれてゆく。


まず、妻夫木聡演じる「恒夫」が、とても等身大な男の子のように思いました。
刹那的で、アタマで考えるよりも、こっちが楽しい気持ちいい、っていう感性のままに流されていく感じ。それは食欲だったり、性欲だったり、プライドだった…っていうか何も考えて無いね?!アンタ?っていう(笑)
ここまで軽いと、正直あまり好きなタイプではありませんが、多かれ少なかれ、男性なら彼の心理は随分わかる、ん、じゃ…ないのかなぁ。
たとえば、女の子のほうが好き好きって縋ってくるときに、フッ…て勝利の笑みというか、余裕の笑みを浮かべるんですよ! つか、なんか見ててムカツク(笑)

そして池脇千鶴演じるジョゼ。
ずっとお婆さんと暮らしていただけあって、喋り方がやけにババくさい。
閉じこもっているせいなのか天然なのか、話すことも一風変わっていて、
何故恒夫が彼女にここまで惹かれていったのか、物凄く不思議。

最初、ジョゼは恒夫のことを、とても用心していたように思います。
自分のことを、好きになるやつなどいるわけがない。
だから期待してはダメだ、好きになってはダメだ、自分は「壊れ物」なのだから、と。
彼女が名乗る「ジョゼ」の出てくる、サガンの「一年ののち」の一説を、作品中で彼女が朗読する場面があるのですが、その内容こそが、彼女の思いと、その後の二人を暗示していたりして…

最初から、希望を持つことを諦めてしまった人間は悲しい。
そして、そういう臆病な人間に希望を持たせることは、最後まで責任を持てないのならとても残酷なことでもあるかもしれない。
もっと人生経験があって、物事を考える人間ならそれに気付きもするでしょうが、「考えない男」恒夫は最後の最後までそれに気付かず、自分の気持ちを相手に向けるので夢中というか精一杯。
それを、どこか希望と諦めの混ざった表情で見つめるジョゼが印象的でした。

恒夫をジョゼに取られる形になった香苗ちゃんの言葉は、ちょっとショックだったな。
福祉関係の仕事目指そうと思ってるの、なんて言ってた彼女が
「障害者のくせに、私の彼氏取るなんて生意気」って言っちゃうんだよね(汗)
いや、障害があるからって、特別に考えすぎたり、庇いすぎるのは違うとは思う。
でも、その言葉は「香苗」にとっての本当の、真実の気持ちだっていうのが感じられて、
だから余計にイタかった。
見た人はみんなここで、多かれ少なかれ衝撃を受けた筈(笑)

とにかく、登場人物がみんな、それぞれ弱さや愚かさを持っていて、悩みつつも進んでいく物語。
最初見たとき、なんかそれほど好きな話じゃないなぁと思ったのですが、
DVD特典のコメンタリーを見ているうちに、ああ、このシーンはこうなのかーと
しみじみするところもあって、今はそれなりに気に入っています。

最後のジョゼの、凛々しく強い後姿や表情があるから、ちょっと救われる。
つか恒夫、あんまり子供すぎて腹立つけどね(笑)

ジョゼと虎と魚たち

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