鼠喰いのひとりごと

DL系フリーゲームや本や映画などの感想を徒然に

GOTH

2006-03-13 22:33:57 | 本(小説)

「GOTH」 乙一
角川文庫 2005年

***

漫画化もされたので、そのスジ(?)では有名といえば有名ですよね。
にもかかわらず今まで未読でしたので、古本屋で並んでいるのを見てれっつ・ちゃれんじ♪

読みやすく、魅力的な文体は相変わらず。
しかし、今回は…読んだあとには、妙な既視感がありました。
いや、なにか他に似てる作品を知ってるってわけじゃなくて。
主人公の少年の乾いた目線、そしてヒロイン「森野夜」の人物像が、
最近のホラー系作品に出てくるキャラクターたちと被る印象だったので。

特に森野夜に関しては「無表情」「黒づくめの服装」「死への独自のコダワリ」と、
どうもどっかで見たようなーーーという感じが拭えませんが(冷汗)
いや、小説はおろか漫画版でも、今までコレ読んだことは無いっすよ~(汗)
乙一さん自身を読み始めたのも最近だしさ。
そういえば、乙一さんの本には、喋るカラスが出てくる「暗黒童話」っていうのもあった。
ああ…そっち読んでうちに来たひとは「コイツ影響受けてやがるよ」と思うんだろうなぁ…
こういうところでやたらカブるってことは、やっぱりオリジナリティが無いちゅーことなんやろね(汗)

===

心に潜む闇を隠して普通の学生を装う「僕」と、同じような嗜好を持つ無表情なクラスメートの少女「森野夜」。
彼女が拾った一冊の手帳は、女性が浚われ、切り刻まれて殺される様子の書かれた、殺人鬼のものだった。
まだ発見されていない最新の犠牲者の死体を捜して、彼らは森に入り込む。
警察に届ける気も無く、被害者の女性と同じ服を着て、被害者の鞄を持って町を歩く森野夜。
犯人が、彼女に狙いをつけるのは時間の問題だった。
(夜の章 暗黒系)

===

少年は狩人。少女は獲物。
純粋に「殺す側」の少年と、優しさ弱さゆえに死に傾倒していく少女。
一見、同じような種類の人間に見えながら、その実は正反対なふたり。
今思えば、少年が自分と同じ匂いのする人間に敏感なことにくらべ、少女…森野夜は恐ろしく鈍感だったりする
あたりから、ふたりの種族の違いは暗示されていたのですよね。
少女は死を眺め、死を求めていますが、それはむしろ殺したいというよりも
「殺されたい・死にたい」という自己消滅欲求に近い。
そしてそれこそが、少年が少女に拘る理由であり、様々な殺人者が彼女に惹かれる理由でもあるような気がします。
うーん、こう言っちゃナンですが、ある意味SMの関係にも近いよーな気がしますねぇ。
作中の彼らにとっては、殺すこと殺されることは「愛」の行為に近いのでしょう。

読んだあと、この二人は、これから一体どこまで行くのかなー、と、
ちょっとおばさん心配になっちゃったよ(笑)

たとえば、思春期に誰かに殺意を抱いたとしても、そこに何のチャンスも切欠もなければ、
彼らの多くはそのまま年を重ね、感性を鈍らせて普通のオジサンオバサンになっていく。
ただ、何か一歩間違って、越えられない一線を越えてしまったら…きっともう戻れない。
その人間は普通のオジサンオバサンにはなれない。そんな気がしています。
そして…彼らの時間は、未来へは続かない、とも。

たいした理由も無く、袋小路に向かって生きる「彼ら」は、
私の中で陸に向かって泳ぐイルカの群れを連想させます。
もしくは、集団自殺するレミングとか。