まろの陽だまりブログ

顔が強面だから
せめて心だけでもやさしい
陽だまりのような人間でありたいと思います。

ちひろ美術館・秋

2018年10月29日 | 日記

何年かぶりに「ちひろ美術館」を訪ねた。
サイクリングの途中に
ふと思い立って石神井の住宅街へ。
懐かしい美術館の建物は今もちゃんと健在だった。

自転車を表にとめると館内からは
もう賑やかな子供たちの歓声が聴こえて来る。
我が家も東京に来て間もない頃は
まだ子供が小さいこともあってよくこの美術館を訪ねた。
信州・安曇野にも「ちひろ美術館」の別館があるが
旅行がてら家族で出かけたこともあった。

いわさきちひろは絵本作家である。
聞けば今年は生誕100年にあたるそうで
全国各地で展覧会やイベントが催されているらしい。
そう言えばこの間まで東京駅のステーションギャラリーで
いわさきちひろ展が開かれていた。
誰もが一度は目にしたことがある淡い水彩画で
この日も子供に絵本の読み聞かせをしているお母さんが驚くほど多く
ちひろ人気も健在だなあ・・・とあらためて思った。

 

妙に懐かしさをかきたてる画風である。
色彩の淡い水彩画はいかにも「少女趣味」を思わせるが
デッサンがしっかりしていて
上手な絵だなあとあらためて感心する。
この絵のタッチがよくも悪くも画家の魅力である。

この季節らしい「お月見」の風景だろうか。
もう中高年の年代の私ではあるが
この絵にも少年の頃の言いようのない郷愁を覚える。
いわさきちひろは生涯を通じて
「子供の幸せと平和」をテーマに描き続けた画家である。

生前のアトリエも公開されている。
館内で唯一、心落ち着く大人の空間である。
一見、誰でも描けそうな単純で淡い画風でありながら
いや、だからこそ
ちひろは一枚一枚の絵に心をこめ
まさしく血みどろの格闘を重ねて来たのだろうと思う。
こんな心地よい仕事場あれば
私ももっともっと傑作が書けていただろうとも思う。〈笑〉

画材を見ると身が引き締まる思いがする。
いわさきちひろは徒手空拳、まさに絵筆一本で世界と対峙し
その絵本を通して子供たちの幸せを
子供たちの生きる時代の平和を祈念し続けて来た。
とにかく戦争が大嫌いだった。
ちひろがもし生きていたら何を描くだろうか
どんな絵を描くのだろうか
などと思ったりした秋の日である。