太田進研究室

太田進研究室の日々の出来事やその時に感じたことを記録していきます。また家庭での生活もつれづれに書いていきます.

7月中旬 in 2021

2021-07-22 | 研究室
本日は,2か月に1回の大学院のproress meetingを行った.4名の院生と半日,ディスカッションをした.1名学部から進級した院生ために臨床の治療手技などの意見交換を行った.学部から直接,大学院に進学すると同級生より臨床の時間が少なくなってしまう.少しでも臨床のスキルを身に着けてもらいたいと思っている.残りの3名の院生は,臨床スキルも高く,深い臨床手技のディスカッションもできる.私を入れて教える人4名,教えられる人1名の構図となった.

本年度卒業のM3のS君は,時間のかかる計測を臨床の中で丁寧に実施し,かなりの症例数の計測を完了した.変形性股関節症症例の膝関節痛の有症率は高いが,股関節OAと同側に膝痛がある場合と反対側に膝痛がある場合の詳細な研究が今までになされていない.歩行解析や関節機能(筋力,可動域)からその特徴を検討するものであるが,彼の仮説通りの結果になってきた.この内容は,臨床歩行分析研究会と股関節学会で発表予定である.M2のMさんは,人が集まって運動を行いにくいコロナ禍において,自分の歩行方法を再学習(gait retraining)することで膝痛や姿勢改善を目指す研究を行っている.非常事態宣言などのため,対象者の身体活動はの制約され,やはり活動量が増えることはなかった.しかし歩行という移動手段は制限された生活の中でも,一定以上の歩行数はあり,現在の活動制限のある中で,本法は有効な介入方法と考えられた.ドローインという腹部筋を収縮する方法の応用であるが,現在のところ一定の姿勢への効果がありそうである.研究継続中であるが,途中経過を日本運動器理学療法学会にて,発表予定である.
M1の2名も本日のprogressで再確認して,研究の方向性がおおよそ決まった.M1のS君は,ACL再建術後の術中評価による軟骨の状態と動作のsymmetryの関係を調査する.先行研究からsymmetryでないことが,ACL再建術後の長期経過としての膝OAと関連すると考えられ,symmetryを加速度計のデータからAIを用いた解析を加えて算出する.もう1名のM1のT君は,膝OAの初期変化である膝関節の内側半月板の内側への逸脱量をエコーを用いて計測し,姿勢や動作前後の変化量より膝OAのリスク因子等を検討する.

さて,学部学生は現在,実習中である.新型コロナウイルス感染症禍の状態で実習をお引き受け頂いている施設に心より感謝申し上げます.
4年生の卒研は,彼らが実習終了後から開始するが,7名を2グループに分けて行う.グループAは,3次元動作解析を用いて,先ほどの歩行のSymmetry性を改善させる方法の検証をする.グループBは,臨床のアイデアからであるが肩の外旋など,姿勢(胸椎後弯)を改善させるいくつかの方法と脊椎のアライメント,肩甲骨の内転運動,可能なら僧帽筋のEMGなどを組み合わせて頸部から肩にかけての痛みの治療に用いる方法の検証を考えている.ただ,実習前にもコロナの関係で学生と直接,打ち合わせができず研究デザインの構築,倫理申請と早急に進める必要がある.

私の方の進捗としては,共同研究者(修士修了者,太田ゼミ卒業研究を含む)のおかげていくつかの論文が採択された.

1) Ota S, Fujita R, Ohko H, Imai A. Effects of gait and activities of daily living modifications for improving knee joint function in community-dwelling middle-aged and older people -a randomized control study-. J Musculoskelet Res. 2021; 24(2): 2150007. doi.org/10.1142/S021895772150007X
2) Fujita R, Ota S, Ogawa Y, Ota H. Effects of walking with a “draw-in maneuver” on the knee adduction moment and hip muscle activity. J Phys Ther Sci. 2021; 33(4).
3) 太田進,藤田玲美,大古拓史,村上慈葉.早期変形性膝関節症の運動療法.-歩行再トレーニング(gait retraining)を含めて-.整形・災害外科.2021; 64(3):293-299
4) Gong T, Hase K, Ota S, Ohtsu H. Vibroarthrographic signals for the low-cost and computationally efficient classification of aging and healthy knees. Biomed Signal Process Control. 2021; (in press)
5) 北岡敬悟,太田 進,野中利通,加田賢治.心臓リハビリテーション対象者における膝関節痛が運動機能およびQOLに与える影響.理学療法科学.2021;(in press)7/21に連絡があったところ.

現在,修士修了者も私のプレッシャーをやんわりと受けながら執筆中である.

そろそろ太田研関係者の研修会,太田キャンプの予定を立てて行きたい.まだ,Zoomでないと難しそう.


3月中旬 in 2021

2021-03-14 | 研究室
本当に久しぶりの投稿です.

研究室関連では,昨年度末に年1回のゼミ同窓生や共同研究者,学生と講演,症例報告会等を共同で行う情報交換会,通称太田キャンプを実施した.
今年はオンラインで行った.ニューヨーク留学中の石田章真先生に講演をして頂いた.奥様のUさんには,コロナ禍におけるNYでの生活なども話をして頂いた.
遠隔講義や会議が浸透してきているため,皆さんスムースに参加や情報提供をして頂いた.今回,子育て中の方も短時間参加するなども可能であり,オンラインの利点も十分に感じた.
途中,子供の声が聞こえるのはご愛嬌.

今年度を通して,大学の講義で特にオンラインによる実技の指導の難しさを感じた.もともと実技講義の資料をまとめており
オンラインで行わないといけない状況となり,動画を作り学生指導に使用した.ご縁があり,今回,その内容で本の出版に至った.
タイトルは,「動画でわかる運動器理学療法臨床実習スキル」である.学生が実習から戻り困ったと聞く症例を想定した
手技をまとめた.一般的,基本的な方法では計測が困難な場合の工夫などを掲載している.動画はQRコードで呼び出せる.治療方法,バイオメカニクス,歩行のといった内容も
コンパクトに加えたため,学生のみでなく新人PTにもお役に立てれば幸いです.

その本の最後にも研究の勧めを記載した.臨床に出てからも研究マインドを持ってもらいたい.
現在,在籍する院生1名は所属する病院のデータをまとめており,症例数も集まり先日の中間発表時の解析でも仮説に準じた結果がでてきている.もう1名は
症例リクルートが,コロナ禍のためスムースに進まずにいる.活動量も計測しているが非常事態宣言下でのデータとなるため,少なくなっているようである.
ただ,3D解析は,今後も進められるので,そちらの研究を今後,進めていく.1名は,修士のすべての課程を修了し,来る学位授与式で修了する.
現在は,国内学術専門誌の投稿準備をしている.

すでに修士を修了生した2名は国際誌,1名は国内誌の準備を進めている.1名は,他大学の博士課程に進学予定.

なんとか,皆さんの協力を得てこのような状況下であるが少しでも研究を進めていきたい.


11月上旬 in 2020

2020-11-03 | 研究室
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,本研究室も思うように研究を進められずにいる.そのような中で,研究内容を一部変更をして対応をしている.

 1名の院生の研究では,感染症対策の観点からリハビリテーションをリハビリ室で行わず,病棟で行うようになり,そのため,リハビリ室で研究機材を使用した研究が実施できなくなった.本年3月までにある程度の計測ができていたため,統計解析もするが1例ずつの結果を丁寧に観察していくこととした.

 変形性膝関節症の患者さんを対象に本学で3次元動作解析を行い,介入により新たな歩行方法習得により膝へのストレス軽減を確認する予定であった.しかし,感染症リスクを考えて,症例をリクルートするクリニックで計測をすべて完了させる方向で研究デザインを修正した.直接,膝関節のストレス計測が不可能になってしまったが,代替の計測を模索する中,加速度計による身体重心の軌跡計測から現在研究で行っている介入により歩行がシンメトリーになることが分かった.昨年,ACL損傷後症例で術後の一定以上の時期が過ぎていても,シンメトリーでないことの問題点を留学中の同僚であるSusanが報告していた.この辺りは,今後の研究として繋がりそうである.

 私が直接執筆する論文作成はかなりペースが落ちてしまった.1報はunder reviewであるが,返事が来ないのでそろそろ催促が必要.修士修了者2名が現在,英語論文を執筆中で,まずはImpact factorの高いところから挑戦.修士修了者2名が日本語論文の執筆中である.共同研究者では3報の国際雑誌の準備と1報がmajor revision. 星城大学卒業生の石本さんが卒論を愛知県理学療法学に投稿して採択されている.

 学会の参加は,オンラインが中心でそろそろ会場に足を運びたくなっては来ている.学会参加のためのホテルを見ていたが,感染症が増えて来たためいったん保留.その時の感染症の状況によって判断するしかない.来年度の国際学会の発表の案内も来ているが,そのような気持ちになれない.そういった意味では,論文作成にこの時間をあてた方が良いだろう.

 学生への実技講義も前期はオンラインで行わなければならなかった.結局,実技を動画に取り学生に配布した.ただ,学生も検査測定の相手がいないと練習ができない.それでも動画で,何度でも学生が復習できるのは良かった.約100本の実技動画を取り学生に送った.

 さて,今年の太田キャンプ(研究室関係者,OB,OGとの研修会)は,11月15日にオンラインで行う.今年は,ニューヨークからの講演を含め,AI,ロボット,膝OA,糖尿病,肺炎,生活習慣病,高血圧をキーワードにしたトピックスの情報共有を予定している.オンラインですので子育て中のメンバーも参加できるのでそのメリットは大きい.

 最近は,ソロデイキャンプと称してキャンプ場で焚火をしてコンビニのステーキチキンや既に完成している食材を焼くという超ずぼらキャンプをして3時間ほどの滞在で,誰ともしゃべらずに戻ってくる.


 



 


6月中旬 in 2020

2020-06-14 | 研究室
3月から3か月ぶりのブログ更新です.

新型コロナの影響で,予定していたすべての学会は中止となりました.学内で予定していた人を対象とした研究も中止となっています.
そのため,現在はオンラインで打ち合わせをしながら,機器やソフトの開発に関する部分の研究を進めています.

我々にとっては大きな規模の介入研究も,仕切り直しとなり,できる範囲内のデザインに変えるなどして準備を進めています.
歩行方法を変えることで,日常的に膝にかかる負担を減らし,体幹,殿筋活動を増やすことを目的にしており,道具が不要で
トレーニングの場所が不要なため,今後の生活様式に合うと予想しています.まずデータを出すことです.

さて,現在の状況下でオンラインによる国際シンポジウムなどが自宅で聴講できます.先週金曜日は,APKASS(アジア太平洋膝・関節鏡・
スポーツ医学会議:Asia-Pacific Knee, Arthroscopy and Sports Medicine Society)を聴講し,膝蓋骨不安定症の手術に関する
知見を聴講しました.無料で内容の濃い物でした.今後も,開催されるようで前回は香港18時から,日本の時間で夜7時から1時間半でちょうど
良い時間帯でした.

OARSIもこのような企画がされており,まだ,参加はしていませんが,日本時間が何時かが気になる所です.

きっと,各分野で学会をはじめ,このような取り組みが増え,自宅から世界の研究に触れることができると思います.


3月 in 2020

2020-03-21 | 研究室
 昨今の状況で5月にウィーンで開催予定であったOARSIが中止となった.本年も発表予定であった.例年参加していると例年会う研究者とも話をするようになり,そのような研究者が世界中に増えて来ていたが参加できず残念である.その時間を現在計画している介入研究に使いしっかりと準備をしたい.

 研究では,歩行時の膝にかかるO脚ストレスを減らすように歩行方法を修正するに辺り,リアルタイムでその力を算出できるシステムの開発や情報収集をしている.

 私自身は,1報を投稿中,修士修了者,共同研究者の指導をしながら数本の論文投稿を予定している.日本語論文も卒業生と投稿しているが,査読結果が戻りしっかりと批判的吟味をして頂くと本人はがっかりとする.ただ,論文を完成させた時には達成感があるはず.何とか最後までしっかりと修正を重ねてもらいたい.
 
 卒業するゼミ4年生とは,追いコンもできずゆっくりと話をする時間がこの時期にとれなかった.大変残念であるが,4月から無事に臨床をスタートしてもらいたい.

 遠方の研究者との打ち合わせもweb会議が増え,慣れてくると確かにそこそこの情報交換ができる.ただ,新たな気づきが浮かびにくいという感じもする.今しばらくは仕方がない.