鈴木すみよしブログ

身近な県政にするために。

箕面市の人事・給与構造改革

2018年02月16日 | 議会活動

 

平成30年2月16日(金)

 

 大阪府箕面市で取り組む、人事・給与構造改革について視察をしました。

(提供いただいた資料)

 

 箕面市の倉田市長は就任10年目で、本県静岡市清水区の出身です。かねてよりこのテーマでの取り組みが全国から注目されており、実態はどうなのか、本県でも導入すべきかどうかを検証するために視察の対象とさせていただきました。なお、説明は市長自ら行い、大変分かりやすく解説していただきました。

(倉田市長から直接説明を聞く)


(人事・給与構造改革以外でも、積極的な市政運営を行っていることも紹介された)

 

 取り組んだ背景には、多くの地方自治体において、「公務員制度の象徴たる“年功序列”の打破」、「能力に応じた職員登用」と称し、同期でも昇格に差をつけることや、若手職員の抜擢などが進められています。

 しかし、給与「制度」における根本的な“年功序列構造”については、踏み込んで対応されたことはなく、現在も「年齢と処遇の一致という古い公務員制度」が温存されています。その結果、地方自治体において、「同期の役職差異」「若い上司の存在」により、一見年功序列が打破されているように見えても、実態は、早期に昇格した人材に責任と仕事だけが押しつけられて体裁が保たれているという状況が続いています。頑張って昇格した職員には責任だけが重くなり、続けて仕事が集中している一方で、漫然と過ごす職員も給与だけは平等に上がっていくという不均衡な状況は、多くの有望な職員達のモチベーションを下げ、昇格したら損という空気まで生み出しかねない構造的要因となっているといいます。

 

 箕面市の人事・給与構造改革は、給与制度において「年齢と処遇の一致」から「責任と処遇の一致」へ大きく転換しました。真に頑張る職員が報われる公務員制度の構築を目指しているといえます。

 

 公務員制度では、「身分は失わない」ことと「年とともに給与が上がる」ことが保障されていますが、市長によれば、この基本的な考え方がいかがなものかという疑念を抱き、見直すべきだという思いがありました。またそのきっかけを作ったのは、部下である若手の職員達のぼやきだったといいます。これらをもとに今回の改革に取り組んできました。

 

 最大の特徴の一つに、多面評価の導入があります。これまでは、所属長だけが人事考課を行っていましたが、新制度では、同僚や部下、連携して仕事をしている高野職員など、様々な角度から多面評価を行うことにより、被考課者にも納得性の高い評価をしています。評価が公平に行われその判断の下に、昇級、場合によっては降格などもあり得ることで、いわゆる「アメとムチ」を使い分けています。

 多面評価を導入したのは、所属長だけの評価では、ややもすると好き嫌いなどで正確な評価ができないことがあり得ます。多くの視点から極力公平な評価を得ようとしていますが、それでも現実は理想通りにはいきません。また、導入した当初は、この評価のために多くの労力を費やしたそうですが、今ではPCソフトなどの支援を受けて、必要な書式をダウンロードし、必要な項目を入力してそれをアップロードすれば、基本的な評価結果が得られるような仕組みを導入しているということでした。

 また、地味な業務である税や国保などの業務では、出来て当たり前で、間違えば評価が下がるのではないかという懸念や、肝いりの特別プログラムなどに就く場合は、それだけでプラスの評価が高まることもあり得ます。評価については、今後もひとつひとつ丁寧に検証し、誰もが納得できる評価基準づくりのための課題解決に向けて取り組まねばならないということでした。

 

 この制度を導入するにあたり、一番のネックは組合の説得だったといいます。確かに、組合員である職員が不利にならないようにすることが彼らの役割でもあり、分からなくはありません。しかし、財政が厳しい時期に取り組んだこともあり、議会側の支援もあって、時間を掛け組合を説得し現在に至りました。

 

 また、諸手当の見直しや廃止も行いました。管理職手当の見直し、特勤手当の廃止と成績加算の運用開始、住居手当の見直し、退職手当の見直しにもメスを入れています。

 

 既成概念の改革には大きなエネルギーを必要としますが、当初の目的を達成するための取り組みと成果が出始めたことで、他の自治体でも避けて通れない事態の先駆者として、これからも注視していきたいと思います。

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