GOVAP便り

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ドンタップムイ

2009-12-15 21:27:05 | 地理・歴史
ロンアン省、ティエンザン省、ドンタップ省の三省にまたがる広大な湿地帯がドンタップムイ(Đồng Tháp Mười)と呼ばれています。メコンデルタの地図を見てもその広大さには気付かされますが、面積は69.7万ヘクタールだとか。いくら何でもそこまでは広くないだろう、ベトナム人は何事もオーバーだから、などと思わざるを得ないのですが、調べてみるとこの三省の面積合計が10,535平方キロ=105.35万ヘクタールなわけで三省以外の土地を含まねばありえない数字です。

かつてメコンデルタが形成された後、1万~5千年前の「縄文海進」の海水面上昇期に海に浸かり、その後の海退期に取り残された低地の大湿地帯ということのようです。確かタイソンの乱の時代にシャムに逃げた阮福映が援軍を頼み、シャム軍がこの湿地帯を下って来たのをタイソン軍が迎え撃って破った、というようなことを読んだ気もしますが、些か記憶は曖昧です。抗仏・抗米戦争時に戦場となったことは確かです。

当然ながら乾期が始まったばかりのこの時期に湿原の只中に道路があるわけはなく、地図なしでバイクを走らせても何処がドンタップムイの湿原なのかははっきりとは判りませんでした。
たぶん75年の統一後に本格的なドンタプムイの開発-水田化が始まったのでしょうけど、水田面積の大きさだけが印象的でした。2008年統計ではドンタップムイの面積の過半を占めるロンアン省ですら農地面積の比率は67%に達しています。

しかし、本来稲作に適さない土壌を田圃にしたためか化学肥料を大量に投入し、それ故にまた農薬散布も必要とされる-ということかどうかは知りませんが、30cmほどに稲の伸びた田圃には消毒散布の姿が目立ちました。

この日はどうやら道を間違えたらしく、何時まで走ってもロンアン省からドンタップ省に抜けられません。舗装路から砂利道に変わり、辺りを見回しても行き先の道路標識がなく、その代わり国境地区(Khu Vuc biên giới)との看板が目に入り、少々心細くなりました。田圃ばかりですから間違ってカンボジアに入ってしまうことはなさそうですが、日が暮れる前に幹線道路に出ないことには心配の種は尽きません。

すると砂利道はいつしか姿を消し、水路沿いの土手の土の道に変わってしまいました。ここでパンクしたら野宿だぜ・・・と半ば諦め半ば腹を括っていると一台のボロバイクがエンジンが掛からず止まっていて助けを求められました。回りに民家も人の姿もなく、農作業姿の娘さんでした。バイクを見るとガソリン・メータの計器類も壊れた状態で「これガス欠じゃないの」?と1リットルぐらいなら分けても上げられるか・・・などと考えて聞いたところ「ちゃんと入ってる」ということなのでホットして力一杯始動のキックをしたところ意外と簡単にエンジンが掛かりました。自分が心細いから優しくなれたのか、相手が若い女性だからだったからかは知りませんが。

暫く進むと土手沿いに小屋が幾つか並んでいました。農作業のための仮設小屋という感じですが住居なのかも-などと考えてると日本のホームレスのテント小屋を思い出しました。たぶんメコンデルタには何処からともなくやって来て小屋を立て住み着いて日雇い農作業で喰いしのぐ世界が今もまだ残っているのかも知れません。


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