トンレサップ川と合流したメコン川はプノンペンで再び二つに別れてベトナム領内を流れます。サイゴンから見た呼び名なのでしょうか、手前の川がTiền Giang(前江)で後ろがHâu Giang(後江)という名です。したがってベトナムではこの二本の川がメコン川であり、どちらが本流か支流かという認識ではありません。中国では「江」は揚子江、「河」は黄河を意味する固有名詞だそうですが、この川を前江、後江と名付けたのはサイゴンの華僑だったのではないかと勝手に想像しています。
ティエンザンにはビンロンの手前に大きなミートゥァン橋が2000年に完成しました。映画「ラマン」に出てくるビンロンの渡しの代わりです。全長1.535,2 m。建設費の66%はオーストラリアの政府援助でした。そして、今回建設中に崩落したカントーはホウザンに架かる橋で全長はミートゥァン橋の倍近くあります。
ミートゥァン橋が完成した直後、知り合いのベトナム人が誇らしげにこの橋の完成を語っていました。長さが1.5kmもありベトナムで最長。日本で一番長い橋は何mあるのか?と訊かれましたが「多分もっと長い橋があると思うけど・・・」と多少戸惑いました。東京タワーの333mしか建造物の高さや長さの記憶がありません。高層ビルの高さや、新幹線やジェット機の速度が日本でも盛んに取上げられた時代もあったわけですが。
そういった意味では、このカントー橋の完成はメコンデルタ新時代の象徴になるはずでした。しかしこのような事故が起きてしまった以上、何処かに無理があったことは確かです。本当に必要な橋だったのでしょうか。完成すればカントー市とその先のメコンデルタ各省に行くのに30分以上時間が短縮されることになります。その30分が決定的な意味を持つとは思えません。
フェリーがなくなってしまえば、ラマンの主人公が華僑青年と出会うこともできません。ドンタップ省のサデックを訪れる観光客は多くはありませんが、以前日本語ガイドをしていたロアンさんが困っていました。「ラマンの映画を観てサデックに行きたいという日本人がいるけど、あそこに行っても何も見るものないし」。経済的な効率性は知りませんが、一度車を降りフェリーの上で過ごす時間は無意味なものは思えません。車の中からとはまったく違う風景を眺めることができます。フランス人少女や華僑のお金持ちだけでなく、鬱陶しい物売りや物乞いとの出会いもあります。橋を渡るようになればどんな物語が生まれるというのでしょう。
ティエンザンにはビンロンの手前に大きなミートゥァン橋が2000年に完成しました。映画「ラマン」に出てくるビンロンの渡しの代わりです。全長1.535,2 m。建設費の66%はオーストラリアの政府援助でした。そして、今回建設中に崩落したカントーはホウザンに架かる橋で全長はミートゥァン橋の倍近くあります。
ミートゥァン橋が完成した直後、知り合いのベトナム人が誇らしげにこの橋の完成を語っていました。長さが1.5kmもありベトナムで最長。日本で一番長い橋は何mあるのか?と訊かれましたが「多分もっと長い橋があると思うけど・・・」と多少戸惑いました。東京タワーの333mしか建造物の高さや長さの記憶がありません。高層ビルの高さや、新幹線やジェット機の速度が日本でも盛んに取上げられた時代もあったわけですが。
そういった意味では、このカントー橋の完成はメコンデルタ新時代の象徴になるはずでした。しかしこのような事故が起きてしまった以上、何処かに無理があったことは確かです。本当に必要な橋だったのでしょうか。完成すればカントー市とその先のメコンデルタ各省に行くのに30分以上時間が短縮されることになります。その30分が決定的な意味を持つとは思えません。
フェリーがなくなってしまえば、ラマンの主人公が華僑青年と出会うこともできません。ドンタップ省のサデックを訪れる観光客は多くはありませんが、以前日本語ガイドをしていたロアンさんが困っていました。「ラマンの映画を観てサデックに行きたいという日本人がいるけど、あそこに行っても何も見るものないし」。経済的な効率性は知りませんが、一度車を降りフェリーの上で過ごす時間は無意味なものは思えません。車の中からとはまったく違う風景を眺めることができます。フランス人少女や華僑のお金持ちだけでなく、鬱陶しい物売りや物乞いとの出会いもあります。橋を渡るようになればどんな物語が生まれるというのでしょう。
原因の調査中はそれとして、支保工の崩落は明らかであり、直接原因の推定を参考までに記述すれば、背景は次の通り。(1)発展途上国の鉄鋼加工業の品質の程度は日本の40、50年前と同様である。きわめて粗悪であり、JIS工場、国際基準のような認定制度がない。(2)仮設構造物の場合は繰り返し使用され、使い古されている(3)再組み立てと、上部からの荷重の架かり方が安定していない。さらに支点部の不整もある。(4)鉄鋼物は溶接欠陥、組み立て不整などに敏感である。(5)従い見掛けの安全率は少なくとも、単純計算で、3以上は必要である。(6)ここで日本の品質と自然条件を前提にして定められた、日本の基準をベースにして云々しても的が外れる。再発防止のために、多角的な原因の究明を望みたい。ご参考までに。
昔、上司から言はれた言葉を思い出します。”橋の仕事はフィードバックは遅すぎる”。事故の事前想定は難しい。しかし、事故の後では遅すぎる。橋梁技術者は、常に事故を背負うて仕事する、つらい仕事です(これは何でもそ同じ感覚かも知れませんが)。初経験の橋の場合は、あらゆる事故が夢に出てきて、不安箇所は翌日手を打つ。現場に行けば毎日巡回する。隅々まで観察すれば危険箇所は事前に気がつく。不安箇所を見つけても頑固に主張して、引かないこと。これらのことは、古い感覚で、現代的ではありませんが、事故の事後処理を考えると、ずっと楽です。年とともに何か言いたくなりますので一言まで。
(1)仮設機材を含めた施工計画書は工事開始前に施工会社からコンサルタントに提出し、承認の後に開始されること。
(2)工事開始後、コンサルタントが図書内容との異常に気がつけば、施主代行者であるコンサルタントの所長名で建設所長に指摘レターを発行し、必ず正式返事を受け取ること。
今までの現地情報では、以上の2点について、明確な内容が報道されていない。何か仕事の流れに不自然さを感じるのは筆者だけだろうか。