GOVAP便り

プノンペンからモンドルキリに、その前はTAY NINH省--AN GING省--HCM市GO VAP

カントー橋

2007-09-27 01:48:36 | 交通
トンレサップ川と合流したメコン川はプノンペンで再び二つに別れてベトナム領内を流れます。サイゴンから見た呼び名なのでしょうか、手前の川がTiền Giang(前江)で後ろがHâu Giang(後江)という名です。したがってベトナムではこの二本の川がメコン川であり、どちらが本流か支流かという認識ではありません。中国では「江」は揚子江、「河」は黄河を意味する固有名詞だそうですが、この川を前江、後江と名付けたのはサイゴンの華僑だったのではないかと勝手に想像しています。

ティエンザンにはビンロンの手前に大きなミートゥァン橋が2000年に完成しました。映画「ラマン」に出てくるビンロンの渡しの代わりです。全長1.535,2 m。建設費の66%はオーストラリアの政府援助でした。そして、今回建設中に崩落したカントーはホウザンに架かる橋で全長はミートゥァン橋の倍近くあります。

ミートゥァン橋が完成した直後、知り合いのベトナム人が誇らしげにこの橋の完成を語っていました。長さが1.5kmもありベトナムで最長。日本で一番長い橋は何mあるのか?と訊かれましたが「多分もっと長い橋があると思うけど・・・」と多少戸惑いました。東京タワーの333mしか建造物の高さや長さの記憶がありません。高層ビルの高さや、新幹線やジェット機の速度が日本でも盛んに取上げられた時代もあったわけですが。

そういった意味では、このカントー橋の完成はメコンデルタ新時代の象徴になるはずでした。しかしこのような事故が起きてしまった以上、何処かに無理があったことは確かです。本当に必要な橋だったのでしょうか。完成すればカントー市とその先のメコンデルタ各省に行くのに30分以上時間が短縮されることになります。その30分が決定的な意味を持つとは思えません。

フェリーがなくなってしまえば、ラマンの主人公が華僑青年と出会うこともできません。ドンタップ省のサデックを訪れる観光客は多くはありませんが、以前日本語ガイドをしていたロアンさんが困っていました。「ラマンの映画を観てサデックに行きたいという日本人がいるけど、あそこに行っても何も見るものないし」。経済的な効率性は知りませんが、一度車を降りフェリーの上で過ごす時間は無意味なものは思えません。車の中からとはまったく違う風景を眺めることができます。フランス人少女や華僑のお金持ちだけでなく、鬱陶しい物売りや物乞いとの出会いもあります。橋を渡るようになればどんな物語が生まれるというのでしょう。


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65 コメント

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経済効果 (土井佑介)
2008-01-27 21:43:39
橋はロマンが先行するのですね。本四連絡橋がいい例です。しばし経済評価が偽造される。今回もその一例に過ぎない。建設後、維持管理に相当な費用を要する。建設時にはそれを忘れる。建設費は日本の借款ですが、維持費はその国の負担です。30年後にどうなっているのか、誰も我かんせつでしょう。さて今回の事故ですが、日本国内では大企業はそろばん、下請けが工事を行っている。今回は現地業者の丸受けの下請け業者の事故でしょう。200人の労務者が働いている中に日本人は無傷であることは、それを物語っています。しかも、監理している日本コンサルタントは、月例報告書の作成に汲々としており、技術管理する能力を持っていない。し支保工の事故は海外では日常茶飯事であり、珍しいことではない。要するに起こるべくして起こったといえる。
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事故の直接原因は? (土井佑介)
2008-03-01 20:31:26
過去の経験よりの推定;
原因の調査中はそれとして、支保工の崩落は明らかであり、直接原因の推定を参考までに記述すれば、背景は次の通り。(1)発展途上国の鉄鋼加工業の品質の程度は日本の40、50年前と同様である。きわめて粗悪であり、JIS工場、国際基準のような認定制度がない。(2)仮設構造物の場合は繰り返し使用され、使い古されている(3)再組み立てと、上部からの荷重の架かり方が安定していない。さらに支点部の不整もある。(4)鉄鋼物は溶接欠陥、組み立て不整などに敏感である。(5)従い見掛けの安全率は少なくとも、単純計算で、3以上は必要である。(6)ここで日本の品質と自然条件を前提にして定められた、日本の基準をベースにして云々しても的が外れる。再発防止のために、多角的な原因の究明を望みたい。ご参考までに。
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海外援助は技術移転が大切 (土井佑介)
2008-03-02 22:37:23
橋梁の仕事は、建設時点から完成後の維持管理による製品生命の延長まで、地球引力にどう耐えていくかが使命であり、それに負ければ落橋と言うことになるきわめて単純な物理現象である。事故に至るまでに、支保工の強度不足と基礎架載試験の実施の警告文を出していた、聞いていないなどのみっともない内容の報告がなされている。推測するところ、下請け先の現地業者が従わなかったとのことであろう。その理由は考えられるところ、(1)経済性に相容れない。(2)到来の図面どおりであり、理由不明である。(3)指摘内容の技術内容が理解できない。----など相互理解が不足がある場合には、実行に移されない場合もる。ここで大切なことは、海外援助の業務は、コンサルタント、建設業者ともに、現地業者を含めた現地の工事関係者への技術移転の使命があるため(これは契約条項に含まれているかどうかは不明であるが)、指摘内容の解説書の発行、講習会の開催、日本の技術紹介など、目先の業務遂行のみならず、相互理解と信頼の努力が必要と考える。指摘のレターだけでは”自分の息子に勉強しなさいといったでしょ、不合格はお前のせい”だと言う親父に似ている。異文化圏での仕事であり、余裕がほしい。今後の業務継続にあったってはエイズ教育のみならず、幅広い教育、講習会の実施により、相互信頼の機会を持たれんことを。今後、安全管理の行過ぎれば、各自の発想を制限すること、経済性を大きく損なう割りに効果が少ないこともあると思はれる。
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事故防止はフィードフォーシステムで! (土井佑介)
2008-03-04 20:39:02
”年とともに”
昔、上司から言はれた言葉を思い出します。”橋の仕事はフィードバックは遅すぎる”。事故の事前想定は難しい。しかし、事故の後では遅すぎる。橋梁技術者は、常に事故を背負うて仕事する、つらい仕事です(これは何でもそ同じ感覚かも知れませんが)。初経験の橋の場合は、あらゆる事故が夢に出てきて、不安箇所は翌日手を打つ。現場に行けば毎日巡回する。隅々まで観察すれば危険箇所は事前に気がつく。不安箇所を見つけても頑固に主張して、引かないこと。これらのことは、古い感覚で、現代的ではありませんが、事故の事後処理を考えると、ずっと楽です。年とともに何か言いたくなりますので一言まで。
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異常なプロセス (土井佑介)
2008-03-11 15:39:57
プロ集団の仕事が、あまりに初歩的な事故であるが、普通の工事ステップでない異常点は次の通り。
(1)仮設機材を含めた施工計画書は工事開始前に施工会社からコンサルタントに提出し、承認の後に開始されること。
(2)工事開始後、コンサルタントが図書内容との異常に気がつけば、施主代行者であるコンサルタントの所長名で建設所長に指摘レターを発行し、必ず正式返事を受け取ること。
今までの現地情報では、以上の2点について、明確な内容が報道されていない。何か仕事の流れに不自然さを感じるのは筆者だけだろうか。
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被災国の立場 (土井佑介)
2008-03-18 03:51:22
被災国のベトナムの立場からすれば、借款契約は条件付の国との契約であり、一方、コンサルタントと建設会社はひも付きで押し付けられているが、一般条件は国際約款で契約されなければならず、難しい立場である。すなわち、親から押し付けられた、結婚と同じである。有難た迷惑である。日本側からすれば、感謝されない援助と言うことになる。逆に憎まれる結果となる。事故の処理は契約に沿った形で、その国の法律に従うことになるのであろうが、国際間の問題も残り、複雑である。日本側からすれば、何も事故を起こすような会社を指定していないつもりであり、被借款国のフリーハンドと言うであろうが、ベトナム国が業者選定眼を持っているわけではないので、日本の(事前調整型?)伝統方式で決められた業者を押し付けられた形にならざるを得ない。これはひとえに、国際方式にのっとっていない援助である。日本の援助方式は何か起これば相手国の要請に応じたものであるとの”責任逃避型の要請主義”で、援助しているが、この形はもう古いのでないだろうか。事故の遠因は、国際に国内の伝統方式を持ち込んでいるところにあるのでないだろうか。
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事故原因の究明には政治的カモフラージュがなされないことが大切 (土井佑介)
2008-06-21 21:00:32
7月に原因の報告がなされるとの事。本件はODA事業である。ややもすれば、政治的配慮で、うやむやになされることを恐れる。事故は物理的現象の結果であり、その背景は、管理する技術者集団の何らかの欠陥の現象結果である。またそこに至らしめた業者問題、さらに、国家間の援助システムの不完全性に起因する問題である。本事故を反省点として、日本の技術が十分に発揮できる健全なODAシステムになるべく、正確な事故報告書を期待したい。
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事故は単純な原因に起因する (土井佑介)
2008-10-22 18:50:35
過去の事故原因を見ると、原因は単純なことが多い。担当施工会社基礎の専門である。よもや基礎部の破壊的沈下はありえない。数ミリ程度の沈下がありそうだと報告である。仮設柱は工場の認定制度のない国の工場での製作であり、しかも仮設物は数回繰り返し使用されるのが普通であり、安全度の評価があいまいになる。また支持部の不正に対し、鉄鋼物は敏感である。正確な事後評価は難しいが、おおよその推定は残存する部材の組み立てで正確な推定は出来ると考えられるのだが。
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不可思議な事故報告書である (土井佑介)
2008-12-27 15:45:06
”沈下は予測できます”わずかな予測不可能な支保工の沈下で、事故は起きたとのことである。沈下は予測出来ますよ、簡単。またわずかな沈下で倒壊するような支保工ではだめですよ。工事のイロハですね。このような発展途上国の不十分な報告書をより所にして、工事を再開すれば、再度事故は起きますよ。本事故を反省の原点にしてODAのあり方、業者の評価と選定システム、技術者の能力評価のあり方、事前準備、安全管理のチェックシステムなど総合的な立案の原点に返ることを望みあい。
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海外工事との相違点に留意を (土井佑介)
2009-01-03 15:58:34
本事故の規模は、思い出すところ約70年前のアメリカのゴールデンゲート橋のケーソン工事中の壊滅事故以降の歴史的な痛ましい事故である。その事故においは、海水中における工事においてケーソン外壁が崩落し、浸水により、数十人の死者が出たとの記事を読んだ記憶がある。発展途上国における橋梁工事においては、コンクリート打設中における仮設ベントの転倒事故が時々起こっている。国内工事とは建設事情が大きく異なるので、計画時点で現地事情との相違点に特に留意が必要となる。自然条件、現地下請けの能力、資機材の容量と品質ーーーー。これらは一応調査し、準備されるが、建設事情が異なり、熟知している日本の諸基準の適用が無理なことが多いこと、また少人数で対応しなければならないため、オールマイテイーな能力が要求される。すなわち、設計、製作、工事の全工事プロセスにまたがる技術、土質、コンクリート、鉄鋼の基本技術、さらに、契約、監理、----。コスト制約の中での戦いであり、大変である。工事再開後は安全管理は徹底されることと思れるが、次は品質管理である。本橋梁は中央部500m以外はコンクリート造りとして設計されている。設計段階は、電算の力により、机上での仕事でるが、現地工事は容易ではない。コンクリート構造は、その安定した形状になるには長期間要するため、品質の確保が微妙で難しい。完成数年後に路面の凹凸起こり、所定のキャンバーが確保されていない事例も多いので、慎重な対応を期待したい。
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