MAU2

　プログレッシブ・ロックを追求するバンド＜MAU2(マウマウ)＞。MAU2はそもそもはというと遡ること25年、1983年に元ジェレミーベンダーのキーボード＜井上銀河さん＞、ベースの＜星真さん＞、ドラムスの＜星野高広さん＞の3人と、メンバーの友人知人のギター＜西口圭三さん＞、ヴォーカルの＜浦野昭一さん＞の2人の計5人で結成されたそうです。サウンド的にはYESやUKやASIA等のプログレをベースとしたオリジナル曲をやっていたそうですが、残念ながらその時代はプログレの低迷期。複雑なプログレはあまり好まれなかったためにメンバーもバンドの方向性を一時見失ってしまい、星さんと浦野さんが脱退してしまったそうです。そんななかでもバンドそのものは存続し、新たな方向として、井上さんが作曲編曲に専念して、MAU2が演奏するスタイルをとって、劇の作曲やアーティストのサポートなどの仕事をしていたそうです。新メンバーにはベースの＜濱田敏さん＞、キーボードの＜高橋秀幸さん＞、ギターの＜高嶋三起さん＞のお3方が参加されたそうですが、それぞれに他バンドや他の仕事を抱えている方々なので、バンドとしての活動は2000年頃まであまりなかったようです。　そんな状況に疑問を抱いた井上さんは、やはり＜MAU2＞をバンドとして機能させようと奮起。他バンドではヴォーカルも兼任しているという高嶋さんにそれまで空席だったヴォーカリストの座についてもらうことに。そして見失っていたバンドのサウンドをどうするか井上さんは悩んだそうです。本来やりたかったプログレでいくか、大衆迎合のサウンドにすべきか。そんなときに西口さんが「どんなマニアックな音楽であろうと、それが本物で魅力あるものならば、皆一生懸命聴いてくれるはずだ。」とアドヴァイスされたそうです。この言葉はさぞ心強かったことでしょう。2001年初頭から井上さんは本格的プログレッシブ・ロックの作曲にとりかかったそうです。そして困難を極めたものの20分に及ぶ大作「Rebirth」と「瓦礫の地球」という曲を完成させて、この年の11月にMAU2のメンバーに声をかけ、集まってもらって“2003年にバンド結成20周年を記念して、アルバム発表及びライブを行う”ことを告げ、このプロジェクトをスタートさせたそうです。あらためて、メンバーはヴォーカル兼ギターの高嶋さん、ギターの西口さん、ドラムスの星野さん、ベースの濱田さん、キーボードの高橋さん、最後にバンドのリーダーであるキーボードの井上さんの6人です。まずじっくりとバンドのサウンドを詰めて、2002年11月よりレコーディングを始めて、2004年8月にミックスダウンを終了したそうです。そして遂に！2005年3月にこのアルバム「VOYAGERS」が発表されます。　まず1曲目は「Rebirth/転生」。20分の大作です。ゴーギャンの有名絵画にインスパイアされて作られたようで、“輪廻転生”や“希望の光を見出した心”を表現されているそうです。キーボードの早いパッセージからはじまり衝撃的なリフがスタート。複雑なリズムながらアップテンポの爽快なサウンドが広がります。明るいキャッチーなサウンド、いいですねぇ。6分くらいからテンポが徐々にダウンし、キーボードによるゆったりとした透明感のある美しい幻想的なサウンドに。そしてミドルテンポでヴォーカルが入り、徐々に盛り上がっていきます。9分くらいから再びキーボードの幻想的なサウンドになり、ナチュラルなトーンのギターソロ、そして再びヴォーカルが入りサビを聴かせてくれ、そのあとリズムに乗った壮大なキーボードサウンドが。オルガンソロも聴かせてくれます。13分頃から神秘的な短いピアノソロ、そしてテクニカルでヘヴィな展開に。15分くらいから元のアップテンポの爽快サウンドに戻りかっちょいいギターソロを。そしてややテンポダウンしてヘヴィなリフを聴かせてくれたあと、キーボードの静かなメロディに。17分くらいからサビメロに入り、ふたたびキーボードの幻想的なサウンドが響き、衝撃的なギターが入って壮大で劇的なエンディングを迎えます。ラストは最初の早いパッセージのリフでFin。　2曲目は「Action is The Breath of Life」。ズンズン響くベースの効いたノリのいいハードロック。キャッチーなメロディで軽快でリズミカルです。ウキウキ♪しちゃうくらいにポップですねぇ。中盤のチョッパーベースもメロディアスなキーボード＆ギターソロもいいですねぇ。　3曲目は「Open This Time」。美しいピアノソロからはじまりフルートのような素朴な音色が。メロディアスなバラードソングですね。ピアノをバックに優しく、そして力強いヴォーカルを聴かせてくれます。ちょっとＪ-POPっぽいかな。でもでもドラマティックに盛り上がりますね。当初この曲はバンドのイメージと少々異なるために反対意見もあったとか。　4曲目は「Earthbound」。元々のオリジナルはバンド初期の86年頃に作曲されたそうですが、新たなアレンジでの作品だそうです。ギターのカッティングリフからはじまるアップテンポの変拍子のテクニカルなインスト曲。スリリングな展開ですね。　5曲目は「Voyagers Over The Horizon/水平線の遥か彼方へ」。“Voyagers(航海者達)”＜内的宇宙を悩み彷徨う心の旅人の物語＞をコンセプトにした曲だそうです。アコースティックギターの叙情的なイントロからはじまり、その音色をバックにヴォーカルが。サビでは厚いコーラスを聴かせてくれ、間奏ではアコースティックギターによる哀愁を感じるギターソロを聴かせてくれます。　6曲目は「Different Colour」。異種に対する無理解や差別についての曲だそうです。ミドルテンポのちょっぴりファンキーでパワフルなポップ。でもでも変拍子でテクニカル。チョッパーベースめっちゃかっくいいっす。メロディアスなキーボードソロもいいですねぇ。　7曲目は「瓦礫の地球」。戦争の愚かさを訴え、そしてテロなどの被害者に対するレクイエムとして作ったそうです。アグレッシブなピアノソロからはじまり、素朴なフルートのような音色が。それをバックにメロディアスなヴォーカルが入り、サビでは力強く歌い上げ、訴えます。間奏では切ないメロディのキーボードソロからオーケストレーションによるダイナミックで壮大なサウンドを聴かせてくれます。ドラマティックな展開のバラードですね。　全体を通して綺麗なメロディの、見事な構成の素晴らしいプログレアルバムです。
　アルバム発表後、ライブ活動を始めるわけですが、残念ながらキーボードの高橋さんが脱退してしまいます。バンドは5人編成で続行しますが、ギターの西口さんが多忙によりライブに参加できないこともあり、4人編成で強行することもあるようです。でもでも順調にバンド活動を続けておられるようで、2007年よりセカンドアルバムに向けての作曲＆リハもライブ活動と平行しておこなわれているような？今後の展開もすっごい楽しみです。