満月に聴く音楽

宮本隆の音楽活動(エレクトリックベース、時弦プロダクションなど)及び、新譜批評のサイト

マツシタカズオ氏主宰abstract music meeting終了。

2019-12-02 | 新規投稿
マツシタカズオ氏主宰abstract music meeting終了。
俄かに付き合いが深まった元OADリーダー松下氏のニューグループ瑕疵(マツシタカズオsax鳴瀧朋宏contrabass衣笠智英Ds)に注目。観るのは3回目だが、ラップトップに仕込まれたピアノ、環境音を背景に疾走するジャズ的フォーマットは相変わらずのスタイルだが、ベーシスト鳴瀧氏がいつもの自作ゴムベース(自身でAshborybassと命名)ではなく今回はコントラバスを演奏したせいもあり、アコースティック要素が増し、松下氏のエレクトロとの対比が鮮明になる。即興のような曲を絶妙な技術で表現する無比のサウンドはもはやレコーディングが望まれる完成度に感じた。それはおそらく生演奏のポストプロダクションによる再構築的作品となる事も強くイメージさせる。ここまで想起させるまでにその音楽性は超個性的と言えよう。このあたり、ジャンルは違うがやはり、90年代のOADに類似する感性を垣間見る。それはやってる当人(マツシタ氏)が同じなので当然と言えるが、その感性を一言で言うと脱構築のセンスだろう。マツシタ氏の底辺にあるポストモダンを背景に培ったあの時代の先鋭さが今も継続し、スタイルは変われど、不変的なジャンルの解体志向が濃厚だ。そこは自身が影響を受け、共演もしてきた佐藤薫EP-4によるムーブメントの落とし子であろう立ち位置が再確認できる。そのような先端を意識するマツシタ氏のユニットはある意味、当クラブ、zero-gaugeにはこの上なくフィットし、ここで普段、ライブをやる例えば石上加寿也、juri aka MIDNIGHT JJやhayashi kentaro、S-NOI等の電子音楽との対バンが違和感がなく、従来のフリージャズをベースにした即興音楽とは一線を画していると思われる。
2番目に登場は毛利桂。観るのは二回目だが、ターンテーブルによる複合的ノイズという印象は変わらず。その太いアナログ音の反復がサウンドコラージュで聴覚に直撃する従来のターンテーブル奏者と全く違う様相を見せ、低音を重視するグルーブミュージックを聴かせる。点滅するフラッシュライトのテンポとビートがリンクし、ある種、フロアー向けの音響であり、私には自然発生的なダンスミュージックと感じた。
そして何故かトリになった私が参加する花輪嘉泰トリオ(花輪嘉泰Sax+宮本 隆ba+近藤久峰ds)の違和感はやはり、瑕疵、毛利桂と続いたポストモダン路線の中に古めかしいプレモダンな肉体的フリーが紛れ込んでしまった感触故か。音楽的なイベント構成で言えば最初に登場が順当だった気がする。とは言え、我々は演奏を楽しんだ。花輪、近藤というとりわけ、音のでかい演奏者の持つ真正面な演奏は方法論以前の楽器との格闘路線を崩さず、全てを即興に任す吉と出るか凶と出るかの潔さを発揮。‘なるべく混沌の場面を減らそう’という事前の打ち合わせもどこへやら、始まったらいきなりカオスの疾走状態。しかし、今、録音をプレイバックする限り、しっかり場面転換や音の強弱が成されている事も発見し、やってる時と異なる印象が強まる。私は花輪、近藤、両氏が好きであり、このユニットはずっと継続していきたい。あえて言えばデッドな響きなハコの方が合う事も認識。あるいはPAで固めたロックのライブハウスで次回、やってみたいとも感じた。
コメント
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