晴耕雨読 in 神鍋高原

~ものづくり・工場改善の本の紹介を中心に~

経営の本棚 / 社長が戦わなければ会社は変わらない 金川千尋 

2023年01月22日 | 経営の本棚(2)



 1月5日の新聞に、信越化学工業の社長・会長を33年間されていた 金川千尋 様が亡くなられたとの記事がありました。
ご冥福をお祈りします。合掌。

 かつて信越化学工業の業績が良いということで理由を調べている中で、今回ご紹介する本に巡り合いました。過去にご紹介をしていなかったので、この機会に是非ご紹介したいなと思い本を何度も読み返しました。

 正直、この本を手にしたときタイトル中の「戦わなければ」という言葉にびっくりした記憶があります。今もウクライナで戦争をしていますが、「戦わなければ」という言葉が戦争を思い出しますので。
本自体は、2002年12月の出版で既に20年を経過していますが、内容的には決して古いわけでありません。それは、会社経営の原理原則に基づいているからだと思います。

 また、この本を取り上げさせていただいた理由は、私も観察が大切だと考えていますが、金川様も大切だと強調されている点、歴史研究会に入っておられて歴史の話が出てきて歴史好きな私も興味をそそられ、近親感を持ったからです。

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   第469回(2023年1月23日(月)配信)・・・・・毎月第1第3月曜日配信予定
 経営の本棚 / 社長が戦わなければ会社は変わらない 金川千尋 
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はじめに
 まず「戦わなければ」についてですが、何と戦うかということがポイントになります。戦うのは、①社内の陋習や官僚主義、②競合、③お客様の需要の波、特に谷にあたる不況です。(この点は筆者の内容を整理したうえでの独自解釈です。)これらとどう戦うかについては以下の内容の項目で説明したいと思います。

目次
 いつものように、目次を記載します。
序章  成功体験には引きずられない
第1章 ”自分流の経営”で戦う
第2章 会社を変革するために戦う
第3章 少数精鋭でムダと戦う
第4章 世界を舞台に戦う
第5章 戦うトップの条件
第6章 日本企業よ共に戦おう
金川様は独自の経営を追求されていました、それが”自分流の経営”の言葉に表れているように思います。

内容
 まず、信越化学工業についてご説明しておきたいと思います。会社の設立は1926年で大変歴史のある会社です。事業は多岐にわたりますが塩化ビニル、シリコーン樹脂、半導体シリコン、合成石英などです。それぞれの分野で高いシェアを持たれています。事業内容からわかりますように材料メーカさんで、オールドエコノミーな事業とニューエコノミーな事業が混ざっています。
 何と戦うかについては、既に①社内の陋習(※)や官僚主義、②競合、③お客様の需要の波と書きました。これらとどう戦うかについて、これから書いていきます。①社内の陋習や官僚主義に対しては、陋習については「体を張って陋習と戦う」(65p)、官僚主義については「あえて蛮勇を振るう」(73p)ということになるでしょうか。陋習と官僚主義で組織運営が硬直化し非効率な仕事のやり方が無批判にまかり通っている中で、社員に常識を疑うようよう促されています。悪い常識を覆すのが社長の仕事で、合理的な仕事のやり方を全社に広められました。結果、とっても合理的な経営となり、コストも下がりました。
 ※陋習:いやしい習慣、悪い習慣
 また、②競合に対しては、「スピードが市場を制する」(41p)ので、スピードで勝つようにする、スピードを武器に戦うと考えていただけたら良いと思います。(170p「スピード経営」も参照。)具体的には、300mm口径シリコンウエハは信越化学が世界で最初に市場投入して成功し、シェア60%を獲得できたそうですが、シリコンウエハの市況を見て判断され、工場の建設などは3カ月以内の完成を命じられたそうです。また、市場投入の速度を上げる方法をいろいろと工夫されています。結果、他社に先駆けること約10カ月早かったそうです。
 ③お客様の需要の波に対しては、「市況商品の場合、データのチェックポイントは、相場の変わり目を確実にとらえること」です。具体的には、需要家が製品のオーダーをキャンセルしてきたり、「すぐ出してくれ」と言っていたものを「1カ月延ばしてくれ」と言い始めたりしたとき(169p)注意しなければいけません。市況は減速を始めていると考えられ、不況への対策を実行開始することになります。競合が手を打ってくるのは、信越化学工業で手が打たれてから2~3カ月後のことがよくあったそうです。とにかく市況をよく観察することが大切になります。

最後に
 最後に、私が気に入った部分を4カ所抜き出してみました。
①「不況を言い訳にしない」(本のカバーのサブタイトル)
②「一生懸命やる必要はない。・・・ただし、勝たなければ困る。要するに勝てばいいんだ。」(63p)
③「元気のない日本経済でも、いろんなところにチャンスがあります。ただし、それはだれにも見える形で転がってはいません。それを見えるようにするには、普段から目の前の課題を寝ても覚めても考え抜いて、現状を深く遠くまで見通せる目を鍛えておかなければならない」(197p)
④「そして、楽しく仕事をすることを忘れないでください。」(209p)

大変参考になる部分がありました、一読をお勧めします。

データ
著者  :金川千尋(かながわ・ちひろ)
出版社 :東洋経済新報社
出版年 :2002年
ページ数:214p
外観  :


                              井上直久


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