晴耕雨読 in 神鍋高原

~ものづくり・工場改善の本の紹介を中心に~

ものづくり・工場改善 会社編⑨ エンド―鞄 嘉吉郎の部屋

2018年06月17日 | ものづくり・工場改善 会社編

サッカーのワールドカップが始まりました。
ユーロッパでの開催なので、眠れない日を過ごされる方が多いいのではないでしょうか。
ゴールの瞬間の中には、芸術的な美しさがあるものがありますね。

今回は、芸術的な美しさのある伝統工芸品等のご紹介になります。

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 ブログ 「晴耕雨読 in 神鍋高原」
 第369回記事(2018年6月18日(月)配信)・・・・・毎月第1第3月曜日配信予定
 ものづくり・工場改善 会社編⑨ エンド―鞄 嘉吉郎の部屋
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兵庫県豊岡市の伝統工芸品の3つの内、麦わら細工と出石焼は既にご紹介しました。
今回は、残った杞柳製品(きりゅうせいひん)についてご紹介したいと思います。
杞柳は聞き馴れない言葉ですが、柳と思っていただいたら結構です。
この杞柳製品の歴史は約1200年あり、国の伝統的工芸品に指定されています。
この長い歴史があったからこそ、今、豊岡は日本一のかばんの街と言えるのです。

1.家の蔵の中を探してみました。そしたら、使い古した柳行李鞄(やなぎごおりかばん)が見つかりました。
柳行李鞄は、柳を材料に使った鞄です。構造は、現在の鞄の形状ではなく、行李(こおり)に取っ手とバンドをつけたものでした。


2.上の柳行李鞄を探しに、豊岡市のエンドー鞄さんの嘉玄というショップの2階にある
「嘉吉郎の部屋」を訪れました。
エンドー鞄さんは創業が文政7年(1824年)。
約200年の歴史があり、鞄屋さんでは一番歴史がある老舗さんになるそうです。
嘉吉郎という名前を継がれた、先々々代、先々代、先代が集められた杞柳製品が
「嘉吉郎の部屋」に展示されています。

看板の中に、創業文政7年とあります。

3.ショップ嘉玄の玄関には、お目当ての柳行李鞄がしっかりと書いてあります。


4.嘉玄の明るい店内、その少し奥の小さく見える階段が


5.嘉吉郎の部屋への階段です。


6.階段を登りきると、そこは全く異次元の世界です。
色々な杞柳製品が所狭しと並んでいます。
しかも、そのどれもが傷みがほとんどないものです。


7.さて、柳行李鞄はどこ??




8.右側の奥にありました。全く同じですね。3本のバンドで束ねられています。


9.外にも、柳バスケットや飯行李が並べられています。
柳バスケットは、現在の皇太子が子供のころ愛用されたようです。
飯行李はこれにご飯を入れていました。




この落ち着いた部屋中に座って杞柳製品をながめていると、
杞柳製品の良さ、職人さんの手仕事の良さが伝わってきて、
なぜかたいへん落ち着いた気持ちになります。

皆さんも一度訪問されたらいかがですか。おすすめです。

井上直久

PS
杞柳製品の購入はネットでも可能なようですが、
①但馬地域地場産業振興センタ内の売店や、
②玄武洞近くの売店
でも可能なようです。
(確認はしていませんが、嘉玄さんでは販売されていないと思います。)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

さて、ここからは、杞柳製品の作り方の紹介です。
「ものづくり」をタイトルに掲げているので、ぜひ書いておきたいことです。

1.夏に長く長く伸びた柳(こりやなぎ)を、


2.秋に刈り取り、春に皮をむいて、乾かして、下のようにします。
白柳(しろ)というようです。


3.そして、以下の写真のような道具を用いて


4.以下の順番で、柳を編んでいきます。





行李が出来上がりました。

5.その時には、こんなしんどい姿勢で作業をされていることもあります。


ご参考になったでしょうか。
(資料は、但馬地域地場産業振興センタにある杞柳歴史資料室のものを一部使用しました。)

最後に、ブログへの掲載に関し、わざわざお電話をいただき、心よくご了解いただいたエンドー鞄の遠藤社長様に感謝します。


追記(2019年6月30日)

JR西日本の月間の旅情報雑誌「西NAVI」7月号に 嘉玄 の記事がありましたのでご紹介します。
トワイライトエクスプレス 瑞風 の山陰線下りコースでの城崎温泉立ち寄り観光の際に、
革細工の製作体験が 嘉玄 で出来るそうです。
(左下の記事になります。)

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ものづくり・工場改善 会社編⑧ 出石焼窯元 上田製陶所

2015年10月25日 | ものづくり・工場改善 会社編

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 ブログ 「晴耕雨読 in 神鍋高原」
 第262回記事(2015年10月26日(月)配信)・・・・・毎週月曜日配信予定
 ものづくり・工場改善 会社編⑧
 
 出石焼窯元 上田製陶所 
 ~「一品入魂」で、純白の出石焼の伝統を今に伝える~
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◆はじめに◆
 豊岡市の旧出石町の観光客で賑わう市街から出石川を渡り、西に少し離れた福住地区を車で走っていると、山側に「これは何?」と思ってしまう奇妙なオブジェが見えてきます。それはレンガで組まれた徳利の形状をしたもので、なぜか屋根までついています。さてこれは何でしょうか?  
 
 それは出石焼を焼く窯でした。形状から徳利窯と言われます。かつて使用していたころは、徳利の先端には煙突用の土管が付いていました。焼き物を焼く窯と言えば、登り窯が有名ですが、全く形状が異なります。窯の中央部での外形は3.2m、残存する高さは4.75mと登り窯と比較すると小さめのように思われます。しかし、少ない燃料で高温に出来たようです。つまり、独特の形状は効率を考えたものなのです。
 この窯は昭和14年に築かれ、昭和45年まで使われていました。新聞記事にあるように、まさに「近代産業遺産」です。
 左側は、保存整備される前の窯
 この徳利窯で出石焼を焼いておられたのが「上田製陶所」さんです。そして今もこの場所で出石焼を焼いておられます。

◆出石焼の特徴と歴史◆
 出石焼の特徴は磁器の肌の「純白」さにあります。あるホームページには「その神秘的なまでの白さは他に例を見ないほどです。」とまで書かれています。また、「白磁の中の白磁」ともいわれることがあるそうです。白さの理由は、磁器原石である柿谷陶石が「白過ぎる白色」であるためです。我が家にも出石焼の焼きものがありますがその白さが際立っています。
 出石焼のもう一つの特徴が表面に施された精巧な彫りです。下記の写真では絹のような風合いの表面に実に精巧な花の模様が施されています。
 
現在、出石焼は出石そばの小皿・そば猪口などとして多くの出石そば屋さんで使用されています。
 
 出石焼と上田製陶所さんの歴史をまとめると以下のようになります。
 ①1789年 肥前の国の石焼職人の兵左衛門により磁器石焼が創始される
          (それまでの出石焼は土焼陶器でした)
 ②1876年 盈進社を中心に出石焼の改良が始まる
          (盈進社は明治維新の失職士族対策で設立された会社)
 ③1890年 上田製陶所創業(初代上田直蔵氏)
          (ちょうどその時に国会が開設されたので国会窯という)
 
 (参考資料②より。大正末から昭和初期の上田製陶所。中央に国会窯との記載がある。)
 ④1918年 出石焼隆盛を誇る(輸出が前年度の2倍に増加)
 ⑤1939年 徳利窯構築
 ⑥1980年 出石焼が国の伝統工芸品に認定される
 ⑦1994年 第4代上田実生氏が国の伝統工芸士に認定される

◆出石焼のつくり方◆
 出石焼は一般的には、
 土つくり→形つくり→加飾→素焼き→加飾蝋さし→施釉→本焼き→完成
の順番に行われます。(以下は参考資料③より)
 (1)土つくり・・・採石、砕石、脱鉄、脱水の工程があります。
  掘り出した柿谷陶石の中から良品を選別し、クラッシャー等で砕いて泥状にし、鉄分を除いて乾燥させます。
 とてもとても白いですね!
 (2)形づくり(鋳込み成形)
 鋳型に泥を流し込んで成型します。量産に向いています。
 他に、ろくろ成形の方法もあります。
 中央が成型品。両端が鋳形。
 (3)加飾(彫り)・・・・模様を彫り込む
 出石焼き特有の工程です。
 乾いた生素地を水で湿らせ専用の彫刻刀で模様を彫り込みます。
 右下に彫刻刀が見えています
 (4)素焼き
 約850度でゆっくりと時間をかけて焼成します。
 少し茶色っぽくなった?
 (5)加飾蝋さし
 削られた図柄に溶かした蝋を塗り、その部分だけに釉(うわぐすり)が付かないようにします。
 黄色い所が蝋です
 (6)施釉
 壷のなかにある釉を柄杓でかけます。
 
 (7)本焼き
 器を磁化させるて純白の器肌を得るため還元焼成をします。約1300度の温度で焼成します。
 
 (8)完成
  やっと完成です。ここまで1~2ケ月かかります。

◆出石焼の伝統の継続と革新◆
 一般的に伝統工芸品の伝統の継続は厳しいものがあります。出石焼でも平成20年に8軒あった窯元も現在(平成27年)4軒に減ってしまっています。理由は、需要自体の低下と、土器よりも高価格になる点と、後継者がいないといった事です。
 出石焼も江戸時代に興隆期がありましたが、明治初期には衰退していました。それを再度の隆盛に導いたのは桜井勉氏(日本の各地に気象測候所を設置するよう働きかけ、気象観測網の基礎を築いた人)を中心に盈進社という会社を興し、各地の陶工を招いて技術の向上を図ったからです。その結果、1904年開催のセントルイス万博博覧会では金賞を獲得するまでになりました。
 現在は、景気が厳しい中で、事業をされている窯では上田製陶所さんが一番長く(明治23年から)事業をされています。現在の第4代目の上田実生さんは、現在61才で、1994年には国の伝統工芸士の認定を経済産業省から受けられました。つまり、40才の若さで伝統工芸士に認定されたことになります。
 上田さんに作陶に当たっての信条をお聞きしてみると、
「出石焼の一番の良さはその白さです。この白さにこだわっていきたいと思っています。」
との答えが返ってきました。
 また、
「私自身、鋳込み成形よりも、ろくろ成形が好きで、鋳込みで同じ形のものを作るのではなく、ろくろで一つ一つの器の形にこだわって成形していきたいです。」
とのことでした。
 この2つのこだわりから、私は一つの言葉が浮かんできました。

 「一品入魂」

 これからも出石焼の火を絶やさず、出石焼の伝統を継続して、出石焼の技術を後世に伝えていっていただきたいと思いました。
 作業場での上田さんの作業風景

 作陶をされている作業場とは別に、出石町の市街地の店舗(下記地図参照。大変有名な辰鼓楼の近くです。)で色々な出石焼を販売されています。店舗に伺ってみると、出石焼の白さを生かしながら、現代の二―ズにマッチするように、新たな出石焼にも果敢にトライされているようように感じました。
 店舗内の商品陳列(1)
 店舗内の商品陳列(2) 

よろしかったら、一度立ち寄ってあげてください。

                                              井上三右衛門(記) 

参考文献
①出石焼:豊岡市商工観光部商工課、H20年3月発行
②出石焼の徳利窯:豊岡市立出土文化財管理センター、H25.3
③出石焼陶芸館(ドライブイン出石敷地内)展示 
④「ザ・たじま」但馬辞典:但馬ふるさとづくり協会、2013年版
⑤出石焼:フリー百科辞典『ウィキペディア(Wikipedia)』

PS
 「上田製陶所」さんは、現在は「上田陶磁器店」さんの名前で事業活動をされていますが、歴史的な点や伝統を守るといった点を考慮して「上田製陶所」さんの名前を今回は使用させていただきました。

上田陶磁器店さん住所・連絡先など
 住所:兵庫県豊岡市出石町田結庄21
 TEL:0796-52-2002(FAXも同じ)
 代表:上田実生
 地図
 
                                             

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ものづくり・工場改善 会社編 ⑦ かみや民芸店

2015年05月10日 | ものづくり・工場改善 会社編

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 ブログ 「晴耕雨読 in 神鍋高原」
 第240回記事(2015年5月11日(月)配信)・・・・・毎週月曜日配信予定

 タイトル  ものづくり・工場改善 会社編  ⑦ かみや民芸店
       ~約300年の伝統を持つ麦わら細工を今に伝える~
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 今回の記事は半年に1回の豊岡市のものづくり関係の会社さんの紹介です。

<はじめに>
 旧城崎町は志賀直哉の「城崎にて」で有名なように、温泉の町です。もっと言えば、温泉のみの町です。その旧城崎町で「ものづくり」をしている会社さんを探すのは一苦労でした。そんな苦労の中でやっと見つけたのは、約300年の伝統を今に伝える職人さんです。
 今回は伝統工芸品の「麦わら細工」を製作されている「かみや民芸店」さんをご紹介したいと思います。

<始まりは約300年前>
 我が家には写真のような麦わら細工のきれいな箱があります。

 
 (幾何学模様がきれいな麦わら細工作品)

結婚時に家内が旧城崎町出身の上司の人からいただいた結婚のお祝いの品で、兵庫県の伝統工芸品の「麦わら細工」の箱です。約25年前に製作されたものなので、少し色あせてはいますが、当時は麦わら細工とは思えない鮮やかな色で、とても美しい幾何学模様の細工が施されています。
 この「麦わら細工」は、今から約300年前の江戸時代の享保のころ(将軍徳川吉宗の時代です)、因幡の国(今の鳥取県東部)から湯治にやって来た半七という人が、湯治の手なぐさみに、竹笛やコマに麦わらを貼り付けて売り、旅館代の足しにしたのが始まりといわれています。
 製造技術はその後長足の進歩を遂げ、箱や絵馬にもこの技術が使われました。そして、明治以降、城崎温泉に来遊する文化人の支援で、芸術性が格段の進歩をしました。明治35年(1902年)には万国博覧会で最高名誉賞牌を得ています。しかし、現在では日本の中で麦わら細工技術が残っているのは城崎温泉のみといわれており、兵庫県の伝統工芸に指定されています。

 
 (温泉寺内にある半七の顕彰碑。墓とも言われている。)

<技術が見られる麦わら細工伝承館>
 この「麦わら細工」の作品は、麦わら細工伝承館(TEL0796-32-0515)で見ることができます。

 
 (川ぶちに建つ白い土蔵の麦わら細工伝承館)

 1Fでは現代の職人さんが作り上げた作品が、2Fでは過去の職人さんがつくられた作品が展示されています。それはそれは、繊細な加工が施された芸術作品そのものです。また、ボール状の球面に模様の描かれた作品もあります。(どうして作製するんでしょうね。)さらに、シーボルトにより江戸時代にヨーロッパに渡った麦わら細工の復刻版も展示されています。
 
 私が特に注目したのは、麦わら細工の製作工程のビデオです。面白くて、ついつい約30分も見入ってしまいました。麦わら細工の技術ことが実によくわかります。

 
 (麦わら細工伝承館のパンフレット)

<技術の種類と製作工程>
 麦わら細工の技術の種類は3種類があります。
 ①編組物・・・ストロー状の麦わらを立体的に編み込んだもの
 ②模様物・・・麦わらのさやを開き、花鳥などの模様を桐箱などに張ったもの

 
 (左:麦わらと編組物の作品  右:模様物の作品)

 ③小筋物・・・麦わらのさやをきり開き、平行に並べ、幾何学模様を作り、張ったもの
         模様としては、市松模様やざらし模様があります
 具体的な作品は、冒頭の写真の箱の作品です。
 具体的に小筋物のつくり方を紹介しますと、
  ・麦わらに色々な色を付ける
  ・麦わらを貼り付けるのりをつくる
  ・麦わらを開き平面にする
  ・麦わらを筋状にカットする
  ・筋状にカットした麦わらを横に並べて平面状にする・・・・①
  ・直角な方向からカットする・・・・②
  ・模様をずらし、幾何学模様をつくる・・・・③
  ・桐箱などに張り付ける
 
 

<技能の継承の危機>

 城崎温泉のお土産として好評を得ている「麦わら細工」ですが、技術の継承の危機に瀕しています。危機に瀕している理由は、どの伝統工芸でも同じなのですが、技術者が高齢化し、後を継ぐものがいないからです。明治末期には約30人もいた職人さんは、2015年1月に職人の方が一人亡くなり、残る職人は3人まで減少しています。(その後新たに認定があり、職人さんは5名まで復活したようです。)また、時代の変遷の中で、ニーズとのミスマッチが生じており、売り上げが上がらないという問題もあります。そんな中で、かみや民芸店(TEL0796-32-3259)の神谷勝さんは「麦わら細工技術者の会 会長」として、伝統工芸の継承に取り組まれています。

 
 (かみや民芸店さんの玄関)

 お父さんの元治郎さんも麦わら細工職人で、麦わら細工をつくられていました。そして息子の俊彰さんも麦わら細工職人をされています。つまり、親子三代で麦わら細工を支え続けておられます。

 初代:神谷元治郎
 二代:神谷勝(画号「麦椿」)
 三代:神谷俊彰

 写真の土鈴は神谷さんの作品で、「椿」が描かれています。右下に落款が押されています。私はこの落款に職人の心意気を感じてしまいました。


                 ↑「勝」が落款

 また、普通ならば「貼る」という言葉を用いるところを、麦わら細工では「張る」という言葉が用いられています。これは、「一面を覆う」「緩みなく引き締める」といった意味を含めています。(かみや民芸店ホームページ(HP)より)この言葉の中にも、職人の方の気持ちがにじみ出ているように思います。

参考
 麦わら細工関係のマップ(本文記載分以外)
  ・城崎文芸館(TEL0796-32-2575)・・・麦わら細工の製作体験ができます(4月から、 
  城崎麦わら細工伝承館に移管されているそうです)  
  ・まるさん物産店(TEL0796-32-2352)・・・写真の編組物を販売されています
  ・麦わら細工 神(TEL0796-20-1460)・・・神谷俊彰さんの作品が販売されています
   (木屋町小路内)
  ・みなとや(TEL0796-32-2014)・・・・家内の麦わら細工の箱が販売されていたお店?
                           大きな箱物の作品が多数ありました



                                             井上三郎右衛門(記)


PS
2019年9月8日のNHKのイッピンの放送で、記事を書いた城崎温泉の麦わら細工の放送がされていました。
取材した神谷民芸店の神谷勝さんも出ておられ、お元気に活躍されているいることが分かりました。
また、自分が書いた記事以外の視点で麦わら細工の編集がされており、分かりやすく伝えるという点で参考になりました。

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ものづくり・工場改善 会社編 ⑥ しょうゆの花房

2014年10月10日 | ものづくり・工場改善 会社編

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 ブログ 「晴耕雨読 in 神鍋高原」
 第213回記事(2014年10月13日(月)配信)・・・・・毎週月曜日配信予定
 タイトル ものづくり・工場改善 会社編 ⑥ しょうゆの花房
  ~モーツアルトを聞きながら熟成されるさしみしょうゆ~
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お宅ではどこのメーカのしょうゆを使われていますか?
 突然ですが、お宅ではどこのメーカのしょうゆを使われていますか?しょうゆの味なんてほぼ同じと思うので、メーカにはこだわらない?私の実家では1年前までは自家製のしょうゆを使っていました。保存性を上げるためでしょうか、とにかく塩分が多かった。
 しかし、さしみしょうゆだけは竹野の浜の花房商店さんでした。まったりとしてさしみによくからみ、うまみ豊かな、そのさしみしょうゆは一度知ってしまったら手離せません。
 花房商店さんは、
   しょうゆの 花房
として但馬地方では有名ですが、我が家ではもっぱら
   さしみしょうゆの 花房
さんのイメージです。今回はその花房商店さん(住所:豊岡市竹野町竹野375。)のさしみしょうゆのおいしさの秘密をうかがいに訪問してきました。
  Photo_2
(工場玄関のしょうゆの花房のロゴマーク(左上)と、社長の花房さん(右)と奥様(中央)。)

(尚、取材の当日デジタルカメラが故障し、この記事に使用している写真は全て花房商店様からご提供いただきました。有難うございました。)

<しょうゆのおいしさの秘密は、①材料、②製法、③愛情>
 社長の花房さんに開口一番、
  「御社のしょうゆのおいしさの秘密は何ですか?」
とお聞きすると、
  「それは、”材料”と”製法”と”愛情”ですね。」
との即答。それぞれの項目について詳しく説明する前に、まずしょうゆがどんなにシンプルな方法でつくられているか説明する必要があります。
 下記の資料にあるように、
   ①蒸した大豆と
   ②炒った小麦を  
 
    ③混ぜ合わせ、
       ④これに麹菌を混ぜて温度管理された室で麹菌を増やし、
     ⑤さらに塩水を加えて(この状態をもろみという)、  
       
⑥蔵の中で長期間寝かせます(仕込)
   ⑦発酵がすすみ熟成したもろみを1年後に絞り、 
     
⑧加熱(これを火入れという)をして、
     ⑨ボトルにつめてしょうゆが出来上がります。
 つまり、材料は大豆と小麦と塩と水だけでとにかくシンプル、後は醸造する時間などが違う程度です。このシンプルな製造方法の中でどう他社と違うと言われるおいしいしょうゆを作るのか?工夫がいるところです。

  Koutei2
  (しょうゆの作り方)

<おいしさの秘密 その①材料・・・安全・安心な国産丸大豆を使用>
 花房商店さんは「安心・安全・おいしさ」をモットーにされており、その中の「安心・安全」の実現のために国産丸大豆を使用されています。
 「安全・安心」の為に国産丸大豆にこだわられる理由は、その対極にある遺伝子組み換え大豆と脱脂加工大豆について説明する必要があります。遺伝子組み換え大豆は遺伝子が操作変更されている為、それを食べたひとに将来何らかの問題が出てくる可能性が完全に否定されているわけではありません。また、脱脂加工大豆は丸い形状の大豆をつぶしたものですが、人体に有害な物質があるとの報告もあります。これらはあくまでも可能性についてのことですが、人が口にするものを製造するメーカだからこそ、安全について不安が無い材料を使うことで、消費者や子供に安心して口にしてもらえるしょうゆをという強い思いがあります。
 しかし、国産丸大豆を使用することはそんなに簡単なことではありません。一つ目に入手の問題があります。しょうゆ用の大豆の内、国産は約2.3%しかないため、入手には大変困難が伴います。二つ目に、国産大豆は輸入大豆に対してコストが高くなります。これらの困難があるにも関わらず、「安心・安全」のモットーを実行するため18年前の平成8年に仕込み材料を全て国産丸大豆に変更され、それ以来コストダウンの企業努力を継続されながらしょうゆづくりを継続されています。
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  (各材料 左:天日塩 中央上:国産丸大豆 右:国産小麦)

おいしさの秘密 その②製法・・・・再仕込み天然2年醸造>
 しょうゆの熟成・醸造には長い歳月をかける必要があります。もろみを発酵が進行しやすい適温状態に置く適温醸造では、通常半年程度が醸造期間ですが、但馬の気候に熟成・醸造を委ねた約1年間の天然醸造が花房商店さんではされています。だから、出来上がったしょうゆは自然・気候が作り上げたしょうゆになります。また、しょうゆつくりには但馬の自然・気候を把握した職人の勘と経験が欠かせません。
 そして、さしみしょうゆにはこのしょうゆにさらにひと手間加えます。1年間天然醸造した加熱前のしょうゆ(これを生しょうゆという)を国産丸大豆と国産小麦と混ぜてさらに1年間熟成させ、合計2年間もの熟成をします。つまり、作業的には再度仕込みをすることから、再仕込みしょうゆとも言われます。2年間の熟成の結果、その再仕込みしょうゆは実に濃厚な味で豊かな香りを持ち、塩分は控えめとなります。(この再仕込みしょうゆの割合は全国的には約1%であり、たいへん貴重なものです。)
 最終的なおいしさは、材料を国産に変更された翌年に開催された第24回全国醤油品評会で2つもの賞を受賞されており、折り紙つきです。そしてその時の製法を今まで伝え守られています。
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  (国産小麦・麹菌と混ぜ合わせた、丸丸とした大豆)

<おいしさの秘密 その③愛情・・・・醸造中にモーツアルトを聞かせる>
 醸造は人がするわけでなく、しょうゆ麹菌という微生物による発酵の働きでできるものです。人間にできることはただ麹菌が活動しやすいようお膳立てをするだけです。しかし、同じように微生物で発酵させてつくるお酒でも、銘柄によって味が大きく変わります。なぜ?いろいろ調べてみると、水の違いが大きいようですが、杜氏の腕・人柄も影響するようです。お酒の味に杜氏の人柄が出てくるというのは科学的には信用しにくいのですが、微生物やお酒への愛情が大切なことは間違いありません。お酒と同様にしょうゆに対しても、いっぱいの愛情が大切です。
 花房商店さんでは、麹菌への毎日の愛情いっぱいの声掛けが行われています。醸造期間中は朝の7時から1時間ほど、モーツアルトの曲が醸造蔵に流れます。「波動理論」なるものがあって、この理論を応用して音楽を聞かせるとおいしいしょうゆができると言われている方もあるようです。しかし、花房社長さんは「科学的な根拠が不明確なので、この波動理論を私は信じていません。しかし、親が子供にすくすくと育ってもらいたいとの気持ちで胎教に良いと言われているクラシック特にモーツアルトを聞かせている方がいます。私も同様の気持ちでモーツアルトを毎朝流してしょうゆつくりをしています。」との事でした。
 曲の最初の部分を実際に聞かせていただきました。曲を聴いていると、麹菌に「おはよう。今日も一日しっかり頑張って発酵してね。」という愛情のこもった声掛けをされているように感じました。
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(蔵の中の両脇の6つの丸いタンクの中で、毎朝モーツアルトを聞きながら発酵が進みます)

花房商店さんの本当の強み
 花房社長さんからお話をうかがって、花房商店さんのさしみしょうゆのおいしさの秘密は分かりました。①厳選した国産材料(丸大豆・小麦)。②再仕込み製法。③しょうゆへの愛情・モーツアルトの音楽。その他にも、有機材料の使用、地元材料の使用(特に兵庫県豊岡市産のこうのとり大豆の使用)、原材料からの一貫生産などなど。
 しかし、これらは商品のおいしさの理由であり、花房商店さんの企業としての強みはなんだろうか?という疑問が出てきます。価格が高い材料を使用し、長期間醸造すると資金の回転率が悪くなり、製品自体は高価格になります。国産大豆は海外産大豆の約3倍という話をどこかで聞いた記憶があります。コスト低減も企業の努力範囲を超えるのではないか?これでは、どうしても競合他社商品と比較して高価格となり、いくら「安全・安心・おいしさ」を訴えても、いくら希少なしょうゆであっても、スーパーなどの店頭では消費者は選ばないのではないのか?そんなことを考えながら花房商店さんを後にしました。

 そしていろいろ考えて、結局行き着いた花房商店さんの強みの結論は、
  但馬地方で一番早くさしみしょうゆを手がけた
ことと
  さしみしょうゆのおいしさを支持し選び愛してくれる消費者がいる
ことではないかと思い当たりました。

 詳しく説明します。但馬地方には海岸に近いしょうゆメーカもあれば、山間地にあるしょうゆメーカもあります。竹野の浜という魚介類が豊富に水揚げされる浜にある花房商店さんは、その魚介類にあったしょうゆを浜の住民・消費者から求められ、「再仕込み天然2年醸造」のしょうゆを但馬地方で最初に醸造した。そのしょうゆが住民・消費者に支持され、城崎温泉・湯村温泉などの旅館や香住・竹野などの民宿の宿泊客に支持された。つまり、おいしいさしみしょうゆを提供したいという花房商店さんのモットーからつくられた「再仕込み天然2年醸造さしみしょうゆ」が、提供した浜の住民・消費者・宿泊客によって支持され、選ばれ続け愛され続け、その結果、現在があるのである。

  消費者から選ばれ続け愛され続けるさしみしょうゆ 花房

だから、花房商店さんのさしみしょうゆは当然おいしいのである。

                                            井上三郎右衛門(記)

☆ ご参考 ☆
花房商店さんの「(天然2年熟成再仕込み)さしみしょうゆ」おいしいですよ。
一度お試しください。
また、お友達にもお勧めください。
HPアドレス:http//:www.syouyuhanafusa.co.jp/
もしくは「しょうゆの花房」で検索。
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ものづくり・工場改善 会社編 ⑤ 「はばたけ」 玄さんがんこサブレ 

2014年03月30日 | ものづくり・工場改善 会社編

第188回記事(2014年3月31日(月)発行)(毎週月曜日発行予定)

(独り言:今、もの造り企業の環境はたいへん厳しいですね。3K職場ですし、海外から安価なものが入ってくるし。
また、但馬は”谷間”から来ているのではと言われるくらい平地が少ないところです。
そんな但馬地方のもの造り企業の応援の気持ちでこの記事を書いています。
                                       井上三郎右衛門@晴耕雨読)

今回は、企業とは違い、福祉作業所さんの紹介です。福祉作業所をご存知ない方も多いかもしれませんが、障害を持った方が働いておられる処です。色々な問題を克服されて、玄さんそっくりの形をしたサブレ(クッキーとほぼ同じです)を作り上げ、スイーツの大会で準グランプリをとられました。そのサブレに関するこだわりをご紹介します。

<玄さんが準グランプリ>
●ある日「玄さんが準グランプリ」という記事タイトルを見て、私はたいへんがっかりしました。理由は、玄さんには他のゆるキャラにはない独特の特徴があり、多くの人でなくても一部の人に深く愛されてほしい、くまモンやふなっしーのように人気ものになる必要は全く無い、玄さんは玄さん独自のキャラクターがあり(渋キャラというようですが)、その点を伸ばしていってほしい、そんな風に強く思っているからです。

●記事をよく読むと、ゆるキャラのコンテストと思ったのは私の先走りでした。しかし、準グランプリをとったのは「スイーツ甲子園」というコンテストで、玄さんとスイーツは全く似合わないとまた思いました。が、記事の内容を読み、詳細を調べていくうちに、そのスイーツは本物の玄さん以上に玄武岩に似せたスイーツをつくることにこだわりを持たれ、約1年間もの開発期間を経てできあがったものだということが分かりました。

●準グランプリを受賞されたのは、豊岡市手をつなぐ育成会の障害者多機能施設「はばたけ」さんの「玄さんがんこサブレ」で、第5回スイーツ甲子園(NPO法人兵庫セルプセンター主催。2013年11月10日開催)での受賞です。コンテストには兵庫県・関西地区以外からも複数のエントリーがなされ、さながら全国大会の様相のコンテストです。
では、「玄さんがんこサブレ」の形、色・食感、味に関する「がんこ」なこだわりについて以下に紹介します。

<まず、形にこだわる>
●玄武岩の特徴は独特の6角形ですが、これが形へのこだわりに繋がります。まず下記の写真の玄さんがんこサブレの形状をよく見てください。ほぼ6角形をしていますが、本物の玄さんに似せるため鉢巻や口のところが飛び出しています。この部分はサブレの生地を金型(金属で出来た原型)で抜く場合にちぎれ易く、特に鉢巻の先端は形が崩れやすい部分です。
Photo

●また、表面の凸凹は玄さんの顔をリアルに表現するには大きくするのが良いのですが、大きくしすぎるとサブレが割れやすくなってしまいます。ある程度の凸凹で玄さんの顔をリアルに表現する必要があります。鉢巻のねじり具合がとってもリアルですね。実際の金型作りでは、今までお菓子の金型を作製したことも無く、インターネットで金型メーカをやっと探しだされたそうです。また、金型メーカとの打ち合わせや、試作によりわかった問題点の改善に苦労されたそうです。
Photo_8(金型はしわまで再現されています)

●サブレの生地を実際に抜く製造現場を見せていただきました。作業者の方が丁寧に金型でサブレの生地を6角形に抜かれていました。しかし、一番驚いたのはその後、余分な生地を外すために竹串を使って、丁寧にそして起用にサブレの生地をまるで玄さんの顔を掘り出すように作業をされていました。機械化された製造工程とは異なり、一つ一つが手仕事で行われています。
Photo

<そして、色と固さにこだわる>
●形へのこだわりの次に、色と固さにもこだわられました。サブレの商品開発にあたり、玄武岩は当然石ですからそれらしい色のものにしたいし、また石であるだけに少し固めの食感も実現したい。そう思われたそうです。とくに、キャラクターの玄さんが白っぽい色になっているだけに、本物の玄武岩の色により似せたいと思われたそうです。

●そのため、まず材料として黒ゴマと黒糖を使うことを先に決めて、その後配合を工夫されました。その時、黒ゴマはペーストを使用すると色は近いものになるのですが、固さ・食感に問題が出て、わざわざ黒ゴマをミキサーでスライスして練りこむことで固さ・食感を出しているそうです。さらに、ゴマに脂分があり、バターとの量の調整を何回か試作することで食感がよくなるよう決められたそうです。
Photo_4(左:いり黒ゴマ 右:ねり黒ゴマ)

●商品の集合包装には、「黒糖&黒ゴマ」が特徴と記載されています。
Photo_2

<もちろん、味にもこだわる>
●もちろん味にも大変こだわられています。そのこだわりは、材料にこだわることとも繋がってきます。個装袋の裏の原材料表示を見てください。
Photo_6

●小麦粉は安全・安心を追求するため国産を使用されています。
バターには「四つ葉バター」を使用されています。マーガリンや普通のバターよりかなり高価です。私のいわゆる作業所のスイーツに関する経験では、技術力が高くノウハウの蓄積がありおいしいスイーツを作られる作業所さんほど、ただの「バター」ではなく「発酵バター」や「四つ葉バター」を原材料欄に記載されています。
鶏卵は地元で有名な「おかちゃんたまご」を使用されています。但馬地方限定の出荷で、卵黄の色が鮮やかで盛り上がりがあり、味が濃厚で、評判が大変良いそうです。
塩は普通の塩ではなく、岩塩を使用されています。

黒砂糖で最後にほんのり独特の味が出てきます。
黒ゴマは香ばしさとしっかりした歯ごたえを狙っています。

●原材料表示の上のシールにあるように「壊れやすさは美味しさの証」だと思います。

最後に玄さんから一言

「がっせぇうめーしけー 食うてくれーやー」
 
(とってもおいしいから 食べてねー)
 

<販売について>
この「玄さんがんこサブレ」は、
 〇「はばたく」さん(豊岡市九日市中町75。Tel0796-23-3350)
以外では、以下のところで売っているそうです。
 〇道の駅 神鍋高原(豊岡市日高町栗栖野。国道482号沿線)
 〇玄武洞ミュージアム(豊岡市赤石。玄武洞の道を隔てた向かい)
 〇コウノトリの里公園の売店(豊岡市祥雲寺。コウノトリ公園内)
 〇北前館(豊岡市竹野町竹野。竹野浜海水浴場近く)
 〇いたや商店(豊岡市城崎町湯島。城崎温泉一の湯前)
 Photo_7(道の駅 神鍋高原にて)

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