俺は婆ちゃん子だった。
小中学の夏休みはずっと爺ちゃん婆ちゃんの家にいた。
奴は何が面白くて年寄り2人のところにいるんだと
親父が一向に帰らない俺に対し母にボヤいてたらしい。
通勤する時に婆ちゃんが住んでた家の前を通るんだ。
毎日ね。
だから毎朝、俺は婆ちゃんを想うんだ。
今は無くなっちゃったけど近所の魚屋へよく2人で
夕方になると手を繋いで買い物へ行ったよ。
俺は毎回決まって鰺の干物を買って貰ってね。
婆ちゃんは俺が遠慮してると思ったのか
お刺身はいらないの?とよく訊いてたっけ。
気にしたんだろうな。
人生の後半は金に苦労させられた人だったから。
肉を食えなかった俺には好都合だったのだけど(笑)。
夏の夕暮れに婆ちゃんと歩いたあの日をいつも想う。
帰りはアイスくわえながらやっぱり手を繋いで帰るんだ。
幸せだった。
家に帰ると魚が焼ける香ばしい匂いの隣で
柱を背に絵を書いたり本を読んだりして待つんだよ。
それだけで良かった。
他に何もいらなかったな。
新しい玩具もゲームも必要ないんだ。
婆ちゃんと一緒に昼寝したりテレビ観たりね。
余分なモノが何1つない質素な暮らし。
忘れられない大切な俺のルーツだ。
婆ちゃんに会いてぇな。